いつまでも研究室に積み上げておくわけにもいかないので、
配布用に気前よく印刷・製本した博士論文は、
まとめて自宅に送ることに。
ピックアップに来てくれた宅急便のおにいさんが、
「ちわーっ!」とドアを開けたその時まさに、ヒイラギ電話中
。
受話器片手にしゃべり続けながら、
入ってきたおにいさんの足元の包みを指差して、
目だけで(荷物それなんですけど、お願いします~)と訴える。
このおにいさんも心得たもので、(了解!)と頷いて見せてから、
そぉ~っとドアを閉めて、しゃがんで静かに何やら伝票に書き込んで、
送料の計算などしてくれている。
その間に、相変わらず受話器の向こうに相槌打ち続けながら、
片手でおサイフ取り出して、おにいさんの前にしゃがみこむ。
おにいさん、会釈しながらそぉっと伝票を差し出して、
料金が書いてあるところを無言で指差してくれる。
(分かりました)と頷いておサイフをさぐってみると、1万円札しかない!
おにいさんのほうへお札をずずぃとすべらせて、
受話器を持ってないほうの手で、
(大きいのしかなくってすぃません~)の手刀。
枚数が分かるように扇形にきれいに広げた千円札と、
(それから、残りの小銭です)
と順番におつりを渡してくれるおにいさん。
おにいさんが配達日の欄を指差して、(明日、でいいですか?)
ヒイラギ、首をタテに振りつつ、空いた手で(OKです)
続いて、配達時間の欄を指差して、(20時-21時、で間違いないですね?)
もいちど、首をタテに振りつつ、空いた手で(OKです)
じゃあ、と立ち上がったおにいさん、
博士論文の包みを担いでドアを開け、声には出さずに、
(お預かりしまーす!)
受話器の向こうからの質問に答えながら立ち上がって、
また静かにドアを閉めようとしてくれているおにいさんに、
ドアが閉まってしまうまで、深々と頭を下げるヒイラギ。
最初から最後までふたりとも無言の宅急便の発送。
無声映画のような一部始終、見てたチーフも声に出さずに大笑い。
それにしても、この宅急便のおにいさん、
デキた人でした。プロ
ですね。