自然体

いい音楽は、自然体。

演奏する側にいるとき、決まって思うこと。
どんなに難しい手事（てごと）も、イヤというほど弾き込むと、
あるところで、必ずそう思う。
〝ほらやっぱり、ちゃんと弾けるようにできてる〟って。

技巧を凝らすことを目的に作られた曲は、
どれだけ弾き込んでも弾きにくい。
自然じゃない。

でも、演奏する楽器を知り尽くした演奏家が、
内から湧き出ずる感性をそのままに紡いだ音楽は、
必ず弾けるようにできていて、
そのとおりに弾こうとするだけで曲の表情が分かる。

指の動きにも、体重の移動にも、音にもリズムにも、矛盾が無い。
至極ナチュラルで、そのナチュラルさゆえに美しい。

自然だと思えたとき、作曲者の想いに少しは近づけたような気がする。