自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

葉の表側に卵!

2014-05-27 | アゲハ(ナミアゲハ)

葉に卵を産み付ける昆虫の場合,大多数が裏側を選択します。というより,「すべてが裏側を」といっていいでしょう。

理由は昆虫に聞かなくてもわかります。卵が生命を維持するのに,表では危険過ぎます。生物的な要因だと,天敵の目に触れやすい,非生物的要因だと,乾燥しやすい,直射日光を浴びて高温環境におかれる,風雨で落下しやすい,などが思い浮かびます。昆虫には先天的に,安全な場所に産卵するよう遺伝子情報が組み込まれているのです。

アゲハの場合にも当てはまります。アゲハは柑橘類の葉に産卵しますから,葉の表面方向はほとんどの場合,日光を受けやすいように水平向きになっています。そこを訪れたアゲハの産卵姿勢を想像すると,葉の表側に脚をおいて,腹部を裏側に押し付けて産卵する姿が浮かびます。

それなら,葉が縦方向に立っている場合はどうでしょう。葉の表・裏を感知して,きちんと産み付けるのでしょうか。答えは簡単。そんな微妙で,器用なことはしません。事実,卵をよく探してみれば,時には葉の表側に卵が付いている例が見つかります。最近も,我が家のキンカンの木を観察していて一粒見つけました。


では,水平方向に葉が付いている場合,葉の表側に卵を産む例はないのでしょうか。ちょっと迷いますが,あるにはあります。下の写真をご覧ください。スダチの葉で見かけました。 


拡大写真を撮りました。葉の表側であることは,葉の色と形態から明らかです。 


なぜこんなところに産み付けたのか,ふと立ち止まって考えてみたくなります。

柑橘類では,葉がかなり混み合って付いています。アゲハはもともと裏側に産卵するつもりだったはず。しかし,たまたま産卵姿勢から,産卵孔が別の葉に,それも表側に触れたために,自然の流れでそこに産み付けられたと思うのです。

ここは生存上不利な場所であることはまちがいありません。そんなところに,はじめから卵を産み付けるなんて考えられません。ここでも,基本からはみ出した揺れが観察できます。おもしろい事例です。 

 


一枚の葉に卵が4個!

2014-05-26 | アゲハ(ナミアゲハ)

スダチの木に,アゲハの幼虫が目立つようになりました。それで,卵はどうかなと思って探しました。意外とあちこちに産み付けていることがわかってきました。どんどん見つかるので,こころが踊ってきました。

そのうちに,びっくりする事実に出くわしました。なんと,一枚の葉に卵が4つも付いているのです(さらに葉の付け根にも1つ!)。葉の縁に,ほぼ等間隔にありました。そのうち1個はすでに孵化していて,幼虫は見当りませんでした。


残りの3個は,間もなく孵化するようで,黒っぽくなっていました。

これまでに一枚の葉にこれだけの卵が付いている例にお目にかかったことがありません。しかも,3個は時をほとんど同じくして孵化しそうなのです。

さて,これは何頭の成虫が産み付けたものなのでしょうか。

ふつうアゲハの産卵風景を見ていると,卵を一粒産むと,すぐに舞い上がります。この線に沿って解釈すると,複数の成虫が訪れて産卵した結果,偶然にこうした状態が生まれたと考えてよさそうです。

それにしても,偶然が生み出す結果というのはおもしろいものです。

 


ナナホシテントウの羽化

2014-05-26 | 昆虫

大変化が進行している最中は,こころを引き付けられるひとときです。どきどきしてしまう,といっていいほどです。

アゲハの庭園の一角でのこと。石の側面に付いていたナナホシテントウの蛹が羽化した直後を見かけました。色が橙で,後ろ翅がまだ長く伸びている状態でした。生まれ出たばかりで生々しい感じを受けました。

大急ぎでカメラを持ち出して,写したのが下の写真です。


蛹殻にしっかりしがみ付いて,落下しないようにがんばっています。

しばらくしてから,腹部を入れて写真に収めようとしてカメラを移動。からだの全体像が見える位置で撮ったのが下写真です。


上写真を撮った直後,後ろ翅がスルスルッとしまい込まれていきました。「あれ,あれ,あれ!」と思うか,思わないか,そんな間もないぐらいの速やかさ。それはそれは,じつに滑らかな動きでした。


やはり大変化はダイナミックです。小さいからだは小さいなりに,大きいからだは大きいなりに。いのちが動くっていう感じを受けます。これを“感動”という一言でくくって表現するのは,あまりにも貧弱過ぎる思いがします。

 


ジャコウアゲハ観察記(その308)

2014-05-25 | ジャコウアゲハ

産卵はウマノスズクサの葉の裏に行われます。しかし,時として,表側に産み付けられることがあります。それは偶然にすぎません。というのは,大多数が裏側であり,その方が卵の安全を確保するには当然よいはずです。

上で,「時として,表側に産み付けられる」と書きました。『ジャコウアゲハ観察記(その299)』では「めったに見られない」とも書きました。しかし,今季は,驚くほどこの例がたくさん見られました。「こんなに例外例が多いのか」と驚くほどでした。

たぶん,産卵数が多いため,結果として例外例も多くなったのでしょう。たいせつな情報なので,最近撮った画像をいくつかご紹介しておきましょう。

その1。雨上がりの午後,水滴に覆われていました。やはり表側は自然環境の影響を直接受けがちです。


その2。大きな葉の縁に一粒載っています。 

 


その3。茎の先端に近い葉にも一粒。 

 

 
その4。二虫きょうだいの例です。

 


その5。3つの卵が縦向きに並んでいました。もちろん,おなじ成虫が産んだものと思われます。 

 


その6。四虫きょうだいが見つかりました。明らかに同一の成虫が産卵したものです。


その7。多いものでは,5個の卵の例も! 二頭以上の成虫が産卵したものでしょう。 

 


こうして見てくると,産卵模様はじつにファジーなのがわかります。どんどん産卵するのですから,原則どおりに厳密なわけがないという気が強くしてきます。理由をアゲハ語でアゲハに聞けば答えてくれるのでしょうが,そんなわけにもいきません。昆虫の行動を手がかりにしながら,観察者が妥当だと思われる範囲で推測するほかありません。じつは,ここがおもしろい点なのですが。 

 


北海こがね(ホッカイコガネ)の花

2014-05-25 | ジャガイモ

わたしが行っている一連の真正種子発芽実験は,北海こがね(ホッカイコガネ)という品種にできた実から種子を取り出して行っているものです。もちろん,それは北海こがねの性質を一部引き継いでいるものの,北海こがねそのものではありません。つまり,北海こがねと別品種の雑種です。

この北海こがねを,わたしは自分の畑に栽培しています。他に三つの品種を植えていて,北海こがねを加えると四品種になります。なぜ北海こがねを植えているかというと,実が生りやすい性質があるといわれているからなのです。できれば,意図的に採種できるに越したことはありません。できれば,それを確認したいと思うのです。

さて,この北海こがねに花が咲きかけました。それを見て思わず,「うれしいねえ」と呟いてしまいました。だって,実ができる確率がたいへん高いからです。


運がよければ実のでき始めが確認できるかもしれません。まずは,花後,花が落下してしまわないか,観察を続けようと思っています。


これで,畑の世話に出かける足取りがいくぶん軽くなりそうです。

 


虫こぶ ~サクラコブアブラムシ~

2014-05-24 | 昆虫

山裾の斜面で,奇妙なすがたをした葉を見かけました。遠くから見ると真っ赤。近寄ると,茎先に花でも付けているようなすがたの木。といっても,高さが30cmほどのサクラで,赤色部分は葉が萎縮した虫こぶであることは一目瞭然。

帰ってサクラの葉にできる虫こぶを調べたら,サクラコブアブラムシと判明しました。


そのときは,とりあえず虫こぶを割って中を調べました。すると,アブラムシがたくさんいました。「こりゃ,なんじゃ」と思ったほどです。

さらによく見ると,透明感のある幼虫がいました。体長は5mm。パッと思い出したのが,ヒラタアブの幼虫です。この幼虫,アブラムシを餌にしてここで成長しているのかもしれません。いったい何という昆虫なのでしょう。


その幼虫のことが気になってきて,くわしく写真を撮っておくことにしました。

 

 
歩く速さは意外に速いので,びっくり。

 


頭は,先が細くなっている側です。


虫こぶの中にも,どうやら「食べる」「食べられる」食物連鎖が存在しているようです。 

このサクラコブアブラムシの生活史にはたいへん興味深いものがあります。越冬態は卵,6月に生まれた有翅虫が二次寄生宿主“ヨモギ”に移って,吸汁生活を送り,秋になって再びここに戻ってくるといいます。

ふしぎな生態です。黙々とヤマザクラとヨモギを往復するとは!  

 


産卵風景と卵と

2014-05-24 | アゲハ(ナミアゲハ)

アゲハの庭園にいたら,アゲハが飛来しました。その飛び方を見ていると,産卵しようとしている様子がはっきり窺えました。それでわたしは,レモンの木の脇でコンデジを構えて待つことにしました。

アゲハはキンカンで卵を産んでから,レモンの木にやって来ました。つまり,目の前に来たのです。まったくわたしを警戒する様子はありません。弱々しく飛びながら,卵を2粒産みました。「ヤッター!」と思いながら,シャッターを切りました。

 


あとには,そのとおり真珠のような卵がキラリと光沢を放っていました。薄黄色のみごとな玉です。

レモンの葉を見ていくと,他にも卵が付いていました。これまでにアゲハが訪れていたのです。


そのうちの一つにハエが付いていました。寄生バエでしょう。目敏く見つけてやって来たことに,妙に感心してしまいました。

 

卵に寄生するのか,幼虫に寄生するのか,それはわかりません。しかし,アゲハがいるところをちゃんと嗅ぎ付けて来たことはまちがいありません。自然界で生きていくのは,じつにたいへんなことです。アゲハだって楽々と生きていけるわけではありません。

 


ジャコウアゲハ観察記(その307)

2014-05-23 | ジャコウアゲハ

ジャコウアゲハの産卵場所はウマノスズクサなのですが,その基本が崩れる例がたまにあります。このことについては,何度か書いてきました。

この程,レモンの葉の裏に産み付けられた卵を2個見つけました(下写真の①)。これは明らかに勘違いの結果でしょう。というのは,レモンの木のすぐ脇にウマノスズクサを植えているからなのです。


②はウマノスズクサに産み付けられた卵です。③は若齢幼虫です。偶然撮れた写真です。こんな近くに二つの植物があるのです。

しかし,あながち間違いと言い切ることもできません。というのは,産卵姿勢を想像すると,レモンの葉に脚を固定して産み付けたと思われるからです。たぶん同一個体が産んだものでしょう。

産卵場所は食草が原則です。しかし,場合によってはとんでもない例も起こりうるわけです。今回の例などは好例といえます。なかなかおもしろい画像が記録できました。

それで,孵化した幼虫はどんな行動をとるのか,見ものです。

 


アゲハ,孵化間近

2014-05-23 | アゲハ(ナミアゲハ)

5月20日(火)。アゲハの庭園にあるレモンの木では,アゲハの卵が順調に育っています。パールを思わせる単一色から,黄色みが増し赤っぽい紋様が見えてきました。


こちらの卵にも薄っすらと紋様が浮び出ています。同じ時期に産み付けられたものでしょう。 


5月22日(木)。中が複雑になってきました。ゼリー状の塊りのようなものがブツブツッと見えて,空気層が現れています。

 

5月23日(金)。 どうやら,殻を通してからだの一部が薄っすらと見えているみたいです。あと2,3日すれば孵化するのではないでしょうか。

 

一方,別の葉でも卵をいくつか見つけました。どれも,黒っぽい感じなので,上の卵より早く孵化するようです。目が離せません。

 

 

 

 


真っ赤な昆虫

2014-05-23 | 昆虫

レモンの葉に,鮮やかな朱色をした昆虫がいました。いたといっても,小さ過ぎて確認できない程の大きさです。2mm! 

急いで写真に収めました。小さくても,昆虫の特徴をりっぱに備えています。名はベニキジラミ。キジラミ科に属する昆虫で,アケビを食草にしているといいます。

 
やや上気味から撮った写真を,部分拡大してみましょう。


こうして見ると,形態はウンカやセミに似通っています。

ところで,朱色の理由でもあるのでしょうか。キジラミ同士が仲間を識別するのに役立つ情報であることは確かでしょう。お互いにどう見えるのか,考えてみるとふしぎな世界です。