自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

ジャコウアゲハ観察記(その309)

2014-05-27 | ジャコウアゲハ

ジャコウアゲハの産卵場所は幼虫の食草ウマノスズクサです。ところが,竹や植木鉢,レモンの葉など,そのほかのたくさんのものにも産卵している例があります。このことはすでに書いています。

食草以外に産卵するのは,じつはまったくの偶然に過ぎません。産卵姿勢に不都合が生じたか,まちがった感知によるか,です。事実,わざわざ竹林を訪れて産卵するとか,植木鉢を置いているところに産卵するとか,あるいはレモンの木に盛んに産卵するとか,そんなことはないわけです。

ウマノスズクサの株があるすぐ脇にあるものに,たまたま産み付ける偶発的な事態が生じただけの話です。

この解釈の妥当性を示す例がまたひとつ見つかりました。この例とは,カタバミの葉の裏側に産卵しているというものです。 

 
ウマノスズクサを植えた植木鉢にカタバミが生えてきているので,除草していると,偶然これが見つかったのです。ウマノスズクサの根元にあるために,産卵孔がこの葉に触れて,産卵が促されたのでしょう。

こういう例に出会うと,観察の注意深さがいよいよ必要だなと思えてきます。 

 


葉の表側に卵!

2014-05-27 | アゲハ(ナミアゲハ)

葉に卵を産み付ける昆虫の場合,大多数が裏側を選択します。というより,「すべてが裏側を」といっていいでしょう。

理由は昆虫に聞かなくてもわかります。卵が生命を維持するのに,表では危険過ぎます。生物的な要因だと,天敵の目に触れやすい,非生物的要因だと,乾燥しやすい,直射日光を浴びて高温環境におかれる,風雨で落下しやすい,などが思い浮かびます。昆虫には先天的に,安全な場所に産卵するよう遺伝子情報が組み込まれているのです。

アゲハの場合にも当てはまります。アゲハは柑橘類の葉に産卵しますから,葉の表面方向はほとんどの場合,日光を受けやすいように水平向きになっています。そこを訪れたアゲハの産卵姿勢を想像すると,葉の表側に脚をおいて,腹部を裏側に押し付けて産卵する姿が浮かびます。

それなら,葉が縦方向に立っている場合はどうでしょう。葉の表・裏を感知して,きちんと産み付けるのでしょうか。答えは簡単。そんな微妙で,器用なことはしません。事実,卵をよく探してみれば,時には葉の表側に卵が付いている例が見つかります。最近も,我が家のキンカンの木を観察していて一粒見つけました。


では,水平方向に葉が付いている場合,葉の表側に卵を産む例はないのでしょうか。ちょっと迷いますが,あるにはあります。下の写真をご覧ください。スダチの葉で見かけました。 


拡大写真を撮りました。葉の表側であることは,葉の色と形態から明らかです。 


なぜこんなところに産み付けたのか,ふと立ち止まって考えてみたくなります。

柑橘類では,葉がかなり混み合って付いています。アゲハはもともと裏側に産卵するつもりだったはず。しかし,たまたま産卵姿勢から,産卵孔が別の葉に,それも表側に触れたために,自然の流れでそこに産み付けられたと思うのです。

ここは生存上不利な場所であることはまちがいありません。そんなところに,はじめから卵を産み付けるなんて考えられません。ここでも,基本からはみ出した揺れが観察できます。おもしろい事例です。