玄関先の敷石の上で,アシナガバチが一匹弱ったような感じでじっとしていました。「寒いからなあ」と思って,傍によると,意外にも威嚇する格好で,目の前でわたしの動かす指に反応しました。からだをそらすしぐさです。さっと反応する様は誠に敏感なのです。そうしながら,歩いて逃げようとします。鋭い感覚器官を発達させていることがうかがえます。
この際どうせなら至近距離で撮影しておこうと思って,紙に乗せて撮ることにしました。
真上からの接写です。黄色の紋が発達しているのがよくわかります。黒と黄の織り成す縞模様は相手を威嚇するすぐれた武器です。翅は折りたたまれていますが,横に広げると二対あることがわかります。
前から見てみましょう。頭にある眼,口器,触覚が外界を感知します。節・棘・爪のある脚は獲物をつかむ,ものにつかまる,巣で生活する,そういうときに欠かせません。
横から見ると……。 折れ曲がる脚はバネ。胸と腹のくびれは,両者の機能の違いを如実に語っているようです。このくびれには秘密が隠されています。腹部の第一節が細長くなって胸部に密着し,そこを強化しています。胸は基本的には運動器官。腹部第一節が運動機能を一層高める役割を担っています。ここには脚と翅を機敏に操作するための強力な筋肉が詰め込まれているのです。
腹には消化器官,呼吸器官が 整っています。先端が尖っているのはメスの証拠。
後部から見ると,三対の脚の強さが伝わってきそうです。
前から見ると,……。口器には大あごが見えます。獲物をかんだり,木をかじったりする口です。このとき,前脚を掃除にかかりました。
頭部を拡大して見ました。一対の複眼と3個の単眼が確認できます。触覚が節でつながっているいることがよく理解できます。数えると12あります。この数は押すの13より一つ少ない数なので,メスと判断できます。
さらに爪が印象に残ります。ガラスのつるつるした面でも,ぴったりくっ付いて落ちません。これには脚先の特別なしくみがはたらいているのです。
腹の紋様に横筋になった黒色が見えるわけがわかります。各節を形成する板が重なった部分が黒色なのです。この板の並びによって腹を滑らかに曲げられ,内部を保護できるわけです。機能的と言えば,まったくそのとおりです。
ふつうは怖くて近寄れないハチですが,こうした機会に接眼の目で見れば,視野が開かれる思いがします。おかげさまで,感謝。