虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

親父の書き込み 戦争体験

2010-08-02 | 読書
実家で高木俊朗の「焼身」という文庫本を見つけた。高木俊朗の本は希少本なので、これはいいのを見つけたと思ったら、2行、線引きがあり、書き込みがあった。これは親父の本だが、親父はめったに線引きや書き込みはしない人だ。なにを書いてるのだろう、と思った。

1945年6月29日、佐世保市に大きな空襲があった、という部分に線をひき、「海軍世知原分遣隊にて体験する」と書いてある。

もう一つは、8月6日広島に原爆が落とされた、という部分に「海軍加茂衛生学校生徒として体験」とあった。

親父から戦争体験を聞いたことはほとんどない。海軍が好きで、軍国少年のままの思いを持っていた。戦争体験といっても、たった半年ほど訓練うけただけだろうと思っていた。佐世保で、城山三郎と同じ練習生だった、とかもいっていたが、話にホラも多いので、まともには聞いていなかった。広島の原爆を見た。救援にいかされた、ともいっていた。

そうか、親父は、賀茂の海軍衛生学校にいたのか、と今頃、認識した。

晩年は、広島の呉、賀茂などを訪ねるのが夢だといっていた。17,8才ころの最も多感で、また、激動の時代だったので、一番、思い出深い土地だったのかもしれない。なぜ海軍衛生学校へ志願したのだろう。わからない。

戦争が終わって、故郷に帰り、「わたしの非力のため、戦争に負けてしまいました。申し訳ありませんでした」と近所に挨拶回りをしたそうだ。

戦争体験者はもう絶滅寸前。しっかり話を聞くべきだったが、体験者は戦後を生きていくのに精一杯で語る余裕がなく、子供も戦後の現代っ子ということで、親父の話には頭から古いと耳を傾けなかったものなぁ。