らんかみち

童話から老話まで

松岡農水大臣は青酎を飲め

2007年03月15日 | 酒、食
 某ツーリストから毎月のように観光案内の小冊子が届きますが、特に行きたいところもないっていうか、金さえあるなら世界一周豪華客船の旅でもしたいところであっても、石川啄木さんみたいに放蕩生活もしてないのに、赤貧洗うが如しというありさまなので、考えるまでも無く不可能というものです。
 
 それでもあえて「行きたいところは?」といわれたなら、映画で話題の硫黄島(一般人は上陸できない)いや、うっかり者のぼくなんかだと、東京都の硫黄島と間違えて、鹿児島の硫黄島に行くようなエラーをしでかしそうです。
 同じ島ならまだ青島(ぼくが子どもの頃、新婚旅行の一番人気だった)に行きたいものですが、このご時世では中国の青島(チンタオ)の方が安いのかも知れません。
 
 童話のお師匠さまが、先日中国から帰られて、「北京オリンピックの影響でフートンが消滅しつつあります」と、憂い顔でおっしゃいました。フートンは何ぞや? ってぼくも良くは知りませんが、日本で言うなら江戸下町風情にでも比較できるのでしょうか。中国当局はそれを、見てくれの悪い、発展途上の恥ずかしいものの象徴として世界に公にしたくないとあってか、強制撤去が進んでいるそうです。
 
 先進国の仲間入りを果たし、栄枯盛衰を具現した英国症候群にも罹患し、米国並みの退廃文化を花開かせた日本に住む我々からすると、フートンは日本が失ってしまった長屋の情緒になぞらえて懐かしめるものかも知れません。
 不便や不潔、鬱陶しい近所付き合いなんかをかこちつつも、そこには活力に満ちた生活があった。温かな人情があった。と、我々は時折ノスタルジーを満足させるためだけに、古都の町並みを残して置いてほしいと願うのですが、中国にとっては余計なお世話でしょう。
 
 ですがね、一度失ってしまったらもう元には戻らないんですよ。まるで明治村、昭和通り、みたいなテーマパークを造って懐古したくなる日が中国にもきっと来るはずです。その時になって「文革村」みたいなものを造りたくなったってもう遅いんです。
 そんなわけで、今ぼくが一番行きたいところは「青ヶ島」です。青島でもなく、チンタオでもなく、俳優の「あおい輝彦」さんの生まれた島で、密造酒「青酎」の生産地としても有名です。
 
 密造酒といえば、手に入るはずも無いとは思いつつ、長く「moonshine whisky=密造酒」を探し求めています。ケンタッキーあたりのトウモロコシ農家の親父さんが、月明りの下でこっそりと醸すバーボンのことですが、マニアが買い占めてしまうので、このNET時代にも手に入りそうにありません。
 
 同じことが青酎にも起きているらしく、ついこの前までは青ヶ島のお婆ちゃんたちが、ひっそりと、しかし溌剌と密造していたのに、いまや希少価値が出て島民でさえ飲めないとか。だからお婆ちゃんたちが酒造りを止めたらもう二度と飲めないんです。今のうちしかチャンスが無いんです。
 光熱水費で追求されている松岡農林水大臣も、ナントカ還元水みたいなもの飲んでるなんて言わんと、青酎を飲んでるって言えば、ぼくは納得しますのにねえ。