らんかみち

童話から老話まで

体内の異物と共に生き、死んでいく

2013年10月30日 | 暮らしの落とし穴
 診察の日で、先生はぼくの襟元をめくるなり「あぁ~血だらけですね、ごめんなさいねぇ」と声を上げた。ぼくも気が付かなかったけど、実は昨夜から着替えていないんだ。服の上から装着するバンドなので、そのまま寝て病院に直行したからね。でも先生の処置が悪かったわけじゃなく、元々寝相が悪いのに酒を飲んで寝返りをバンバン打ったぼくの責任だ。

 骨折していながら酒を飲むとは何事か、と叱られそうだけど、骨の形成に酒は関係ないそうだ。問題なのは喫煙で、骨の付きがとても悪いらしい。そういえば20年ほど前に骨折して入院したときはタバコを吸っていたせいか、3か月も入院してしまった。もっとも、股関節から足の甲までギプスを巻かれていたのので、術後に直ぐ退院しても独りでは生活できなかったろうけど。

 自分の中では恥ずかしい怪我ではあり、詳細を語ったら「バカだね」と一笑に付されるに違いないんだけど、隠してはいない。逃げ隠れしたいのはやまやまなんだけど、病棟でも知り合いにあったし、今日の診察でも知り合いに会った。今日配達に来た生協のお姉ちゃんも既に知っていたから、ぼくと親好のある人たちにはバレていると思っていた方が良いならしい。

 抜糸というか抜鉤(ばっこう)まで一週間。20年前にもステイプラーはあったかも知れないけど、旧態然とした縫い方だったので痕が今でも明瞭に残っている。ヌード写真集を出版するわけじゃないので、この歳になって傷跡が残ろうがどうしようが腹は立たないけど、20年前は蟠りがあったなぁ。

 チタンプレートやチタンネジを入れたままで一生を終える決断をした。バイクレーサーは半年ほどで再手術をして体内から余計なものを除去するようだけど、もう異物と共に生きていかねばならない歳らしいね、残念だけど。