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■長岐和彦展 SCENE(2012年9月5日~17日、札幌)

2012年09月16日 22時30分45秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 上川管内美深町在住の長岐なが き 和彦さんの個展。
 会場は、札幌彫刻美術館であるが、彫刻は1点もなく、すべて絵画である。
 また、美術館主催の個展ではないこともあって、回顧展ではなく、「SCENE」と題した作品のみに絞って出品されている。したがって、会場は緊張感と統一感に満ちている。
 なにせ、画面がほとんど白と、ほとんど黒の作品しかないのである。

 たとえば「SCENE #2」は、全面が白く、わずかに水色の部分がある。
 一方、「SCENE #1」は、ほぼすべてが黒く塗りつぶされており、わずかに白い部分がある。

 「SCENE #13」から「SCENE #16」までの作品は、黒というよりはやや濃紺がかった色合い。
 「SCNEN #12」などは、白い地の上に、黒の線が閃光のように置かれている。これは、見た目には、李禹煥 リ ウ ファンを思い起こさせるけれど、バックボーンをなす思想は異なるのだろうと思う。李禹煥や書道の場合は、東洋的な一回性や「気」という要因が強いのだろうが、長岐さんの絵はやはり洋画を突き詰めた作品なのだろう。

 大半の作品に言えることは、白、あるいは黒い作品だからといって、それをただ塗っているのではなく、さまざまな絵の具を塗り重ねて、最終的に白や黒の作品になっているということ。
 一番上の層の白や黒は、さまざまな色の気配を封じ込めようとしているようにも見えるが、絵の具の特性からして、下の層の絵の具はわずかに透けて見えてくる。気配は、マチエールの中から立ちのぼってくるのだ。


 これは筆者の印象だが、道展などで見る長岐さんの作品は、白を基調としつつも、長短の線や筆触を画面の随所に配した抽象画-という印象が強かった。
 だから、今回の個展は、ずいぶんと思い切って「引き算」をして、シンプルな画面にしたものだという驚きがある。
 といって、平滑に白や黒を塗るカラーフィールド・ペインティング調の画面は、すでに先例があるし、バリエーションも少なくなってしまう。
 レイヤーの重なりによる下の層からの発色や、画面の凹凸が、独特の絵画空間を生成させているのだ。


 長岐さんの年譜などは、告知のエントリをご覧いただきたい。
 ただ、この年譜、1996年に大同ギャラリーで開いた、道展協会賞を記念して道展主催で開かれた個展が掲載されていないようだ。
 それを含めても、札幌での個展は3回目。
 今回は、貴重な機会である。
 無料。


2012年9月5日(火)~17日(月)午前10時~午後5時(最終日~午後3時)、入館は30分前まで。10日休館
本郷新記念札幌彫刻美術館(中央区宮の森4の12)


告知のエントリ
ローギュラート-4つの個性(2008年)
コンポジションのメッセージ 長岐和彦油彩画展(2006年、画像なし)
ローギュラート展(2006年、画像なし)
長岐和彦個展 -Recent works-(2004年、画像なし)
ローギュラート展(03年8月)
5人展(01年8月、画像なし)




・地下鉄東西線「西28丁目」からジェイアール北海道バス「循環20 山の手環状線(神宮前先回り)」に乗りつぎ「札幌彫刻美術館入り口」で降車、約610メートル、徒歩8分
※クリックすると、時刻表が開きます

・地下鉄東西線「円山公園」3番出口、「西28丁目」3番出口からいずれも約1.78キロ、徒歩23分

・札幌宮の森美術館から約680メートル、徒歩9分



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