本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

日本語あれこれ13

2011-10-31 14:00:43 | Weblog
* 代用漢字

 常用漢字について、内閣告示に「法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安を示すものである」とあります。もちろん、目安ですからそれ以外の漢字を使ってもよいわけです。

 新聞の用字用語には常用漢字以外の漢字もわずかながら使用しておりますが、新聞用語懇談会編による新聞用語集を見ると、常用漢字にもかかわらず7字(虞、且、遵、但、朕、附、又)を削除しています。あえて使わないのはいささか釈然としません。確かに「朕」などいくつかは使わないほうがよいものもあります。しかし、「虞」と「附」については異議があります。
 
 漢和辞典の字義によると、「虞」(おそれ)はうれいや心配とある。「パスに乗り遅れる恐れがある」では誤用になります。「恐れ」はこわがること、びくびくする、かしこまることですから恐怖や恐縮に使いますよね。同訓でも意味が違うわけです。
 
 また、「附」は「付」を代用漢字として使っています。それで、「附録」を「付録」に換えているのですが、「こざとへん」のある「附」は、もともとは主要なものにくっ付くものの意味です。ですから附則、附帯、附随が正しいのです。
 一方、「付」は渡す、与えるという意味で交付、付与、配付、給付がその例です。全国には大学の附属高校がたくさんあります。「附属」が正しいわけですが、新聞が付属と書くのは失礼です。


日本語あれこれ12

2011-10-30 11:45:26 | Weblog
 位相語の話の続きです。

 よい言葉を伝えることが大事ですから、逆に言えば、嫌な思いをする言葉は避けなければいけません。ビジネスの文では倒れる、失う、つぶれる、終わるといった言葉に注意をしないと相手を不快にさせかねません。
 結婚式ではケーキを切るとは言いませんね。受験生に落ちるは禁句でしょう。落ちてよいのは恋ぐらいですかな。

 雑談的に忌み言葉を避けた例をいくつか挙げましょう。
 スルメのことを「あたりめ」ともいいますね。スルは「掏る」に通じて馬券を掏る、財布を掏られるとなって具合が悪い。そこで反対の当たりに換えて「当たり目」としたわけです。床屋さんはひげをあたると言いますね。むろん、剃るが正しいのですが、剃るは「反る」に通じてだんだん離れていく。そこで、ビシッとひげに当てるのですな。
 
 梨は「無し」と同音です。ですから昔の年配の方は「有りの実」と言っておりました。日田梨も日田有りの実と称するのもよいかもしれません。
 
 葦(あし)は正しいのですが、「悪し」に通じますから「善し」にちなんで、よしず張りやよしの髄から天井をのぞくというように使われますね。
 
 猿にはエテ公の別称があります。同音の「去る」は忌み言葉になりますので使いづらい。その反対の「得て」となったということです。公は爵位の最高位ですけれど、ここではダチ公とかワン公と同じ発想でしょう。
 
 宴会でそろそろお開きにします、と幹事さんが言いますね。終わりにすることですが、これでは縁起が悪い。終わりは閉じることですから、その反対の「開く」になったのです。  
 では、この項はお開きにします。

日本語あれこれ11

2011-10-29 12:09:23 | Weblog
* 位相語の世界
 
 位相語の話をします。
 位相語とは、性別や年齢や地域などで特徴的に使われる言葉のことです。女性語、若者言葉、幼児語、お国言葉もちろん業界用語もそうです。
  
 ある飲み屋に黒い背広の四、五人の客がきました。彼らの一人を盛んに「わかがしら」と呼んでいる。それを聞いておかみさんは「わかがしらさんは珍しい苗字ですね」と言ったそうです。その若頭からどんな反応があったか聞き漏らしましたが、これもある特定の社会の位相語です。

 さて、位相語の一種に忌み言葉があります。縁起の悪いことや不吉なことを連想させる言葉ですね。
 日本には古来より言霊信仰があります。言葉にしたことは実現すると信じる信仰ですね。柿本人麻呂は「磯城島の日本の国は言霊の幸はふ国ぞ真幸くありこそ」と詠いました。しき島のヤマトの国は言霊が幸いをもたらす国ですよ、ご無事でありますように、と言祝いだのです。

 忌み言葉については次回に。

朝食

2011-10-28 13:00:42 | Weblog
 十余年前、二度に亘りイングランドをレンタカーで回り、あちこちのB&B(朝食付き民宿)に泊まった。
 イングリッシュ・ブレックファーストのメインは目玉焼き、ソーセージ、ベーコン、焼きトマト、炒めたマッシュルームが定番である。これが気に入った。

 それ以来、我が家の朝ごはんはイギリス風になった。かみさんは、季節のイチゴ、ブドウ、イチヂクのジャムを作る。それで、テーブルは多彩になる。一日の初めの活力として申し分ない。ただし、炒めマッシュルームはない。トマトは焼かない。日本のトマトは水分が多いせいか焼きくずれる。最近、焼き専用のトマトも出てきているが。

 映画「旅する女」は、イギリスの中年女性がギリシャを旅する話だが、「国の朝めしを食べたい」といったセリフがあって納得した。
 日本人が外国で味噌汁を飲みたいと思うように、どこの国でも旅行中に恋しくなるのは朝餉(あさげ)ではないか。
 もっとも、味噌汁や梅干が欲しいと思う日本人旅行者も少なくなったかもしれない。

日本語あれこれ10

2011-10-27 13:12:11 | Weblog
* 音節の興味津々
 日本語は音節が少ないと話しました。このため同音異義や同訓異義が相当に多い。
「貴社の記者は汽車で帰社した」は同音異義の典型的な例でしょう。また、(こうせい)という熟語は辞書に26もあります。ですから電話で名前を言えば「どういう字を書きますか」と訊かれるわけです。

 常用漢字は2,100字強ありますが、その音訓読みの数の推計はおよそ2倍です。音節が限られているので、漢字の読みは思ったより多くないということです。

 音節の少ない特徴に語呂合わせができやすいことが挙げられます。
「昼からはちと蔭もあり雲の峰」これは一茶の句ですが、この中に七つの小動物が隠されています。お分かりですか。
 蛭、蜂、とかげ、蟻、蜘蛛、蚤はすぐ見当がつくでしょう。もう一つはなかなか浮かばないようです。答えは蚊です。シンプルな単語は盲点ですね。
 
 さらに、音節が少ないことにより回文ができやすいという特質があります。回文とは「たけやがやけた」といった上から読んでも下から読んでも同じ読みになるものですね。これは日本語が音節文字であることも大きいでしょう。というのは、英語は音素文字ですからTOMATOは、逆に読めばOTAMOT(オタモト)になりますね。
 最後に回文として名高い万葉狂歌集の宝舟を挙げておきます。
「永き夜のとおのねぶりの皆めざめ 波のり舟の音のよきかな」