語彙の必要性2

　語彙はなぜ多いほうがよいのか。言うまでもないが、意図に最適な言葉を選択できるから。また、表現が単調になることも防げる。

　語彙の豊富とは、たとえば和語の「あたらしい」には他に漢語（字音語）で「新鮮、斬新、最新、新規など」がある。「つよい」には「強力、強大、強固、頑丈、強靭など」の語彙がある。
　「まじめ」に相当する漢語には「誠実、忠実、律儀、几帳面など」があり、「はっきり」の言い換えには「明瞭、鮮明、明晰、明白など」が挙げられる。

　和語の類語はあまりないが、漢語の類語は多いのだ。
　もっと具体的にいえば、「少々」のミス、「僅少」の差で敗れた、「最少」の損失といった例のように「すこし」という和語だけでは量的、質的な深みが足りないということだ。

語彙の必要性

太宰治の『津軽』の文庫本は177頁程度だが、注書きが447もある。これを教えてくれたのは高島俊男著『お言葉ですが…』である。
注書きには地名の解説もあるが、語意を扱ったものが多い。それだけ単語の意味を理解できない読者がいるという前提なのだろう。初版は1944年のようだが、今の若者と違って、70数年前の人は漢字に強いと思うので、注書きは文庫版になってから入れたのではないか。

　さて、「どれだけの単語ができれば、どれだけの会話ができるか」というデータがある。
　知っている単語が1,000語とすれば、理解度は仏語では83.5%、英語では80.5%、日本語では60%という。
　では、逆に会話の理解度を9割まで高めるための単語はどのくらいかといえば、仏語2000語、英語3000語、日本語9700語のあった。実際、外国人の日本語能力試験1級では1万語を覚えていないと対応に欠けるとか。1万語は91.7%相当らしい。

　要するに日本語の理解には高度の単語率がいるというわけだ。

ネッカチーフなど

　ネッカチーフとスカーフに違いがあるのか。ものの本にネッカチーフは保温や防塵用、スカーフは装飾用とあった。

　昔、「真知子巻き」なるものがあった。真知子巻きとは映画「君の名は」で真知子役を演じた岸恵子さんのストールのファッションである。

　とにかく女性の保温・装飾にはいろいろとある。その点、男性は冬場のマフラーだけか。
　東京が暮らしの場のときは、木枯しが吹いてもからっ風が吹き荒れてもマフラーを使用したことはない。野暮ったい感じがあったし、そもそも通勤電車のすし詰めの車内では無用の長物だった。

　温暖な九州に転居して、マフラーと縁がなくなった、というわけではない。
　実はここ何年、冬場の就寝の際に必ずウールのマフラーを巻くようになった。首筋が暖かいと気持ちよく眠れるのだ。

神田名物の第1位

　テレビ番組の「クールジャパン」で神田の名物をテーマにしていた。
　ランキング5位明大博物館、4位カレー店、3位神田明神、2位楽器店街、そして1位は想像したとおり神保町の古書店街だった。

　私も古書店を何度か覘いたことはある。その古書の多さに圧倒されたものだ。こちらはせいぜい古本漁りなのだ。

　この古書店街には司馬遼太郎の古書買い占め伝説があるようだ。最初は『竜馬がゆく』の執筆にあたり「坂本竜馬に関する史料を集めてほしい」と依頼があったとか。昵懇にしていた老舗の古書店の店主が号令をかけると古書店街の同業者が持ち寄ってきたそうだ。小型トラックに満載になるほどの冊数になったという。
　この価格1千万円になるらしい。昭和37年ごろのこととある。大変な金額といえよう。

　『坂の上の雲』でも依頼されたとか。こちらの史料は「竜馬」の比ではなかろう。それで神田古書店から日露戦争関連の古書はなくなったそうだ。
　これらの史料は司馬遼太郎記念館アーカイブス（そんな施設があるか知らない）にあるのだろう。

表と裏

　表裏と裏表、左右と右左、風雨と雨風、黒白と白黒
　上の言葉は言うまでもないが、前が音読み、後が訓読みである。つまり読み方によって入れ替わるわけだ。日本語の不思議な一面だろう。

　表か裏かの続き。
　野球のイニングで日本では1回の表とか2回の裏とか言う。アメリカではスコアボードが基準なのか表（上）はトップ、裏（下）はボトムとなるそうだ。

　また、コインを投げて表か裏かで決めるときは、表はヘッド、裏はテイルと呼ぶようだ。頭か尻尾というわけだ。

　ボトム技やテイル投げはよいとして、ボトム取引とかはテイル口入門はいけませんね。