本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

プライバシー権

2021-09-30 09:01:08 | Weblog
 「プライバシー侵害」の記事が一面トップにあった。
 被差別の全国の地名リストに関しネット公開や書籍化は差別を助長する」という東京地裁の判決。「プライバシーを違法に侵害する」ことになるようだ。原告の勝訴である。

 なんのために地名リストを公開したり出版したりするのでしょう。営業的に儲かる情報なのか。よくわからない。

 私は東北生まれだか、東北六県はこの問題に特に関心はなかった。というよりそもそも貧しい寒冷地で凶作の歴史がある。つまり、貧する底辺の身分なんぞ分けようがないくらい模糊として差別の意識が生まれなかったのではないか。
 
 秋田県での存在が特に知られている狩猟に長けた「マタギ」がいる。熊やカモシカやウサギなど捕殺する。当然、皮はなめして防寒着にしただろう。しかし、差別の対象とは訊かない。

 私は高校時代に呼んだ藤村の『破戒』はまったく意味を理解できなかった。それだけ問題とはなにか知らなかったのだ。
 社会人になって九州に出張したとき「解放同盟」なる話を聞いて理解の端緒になったものだ。

 伝え聞いたことだが、娘さんが靴製造業の若者と付き合っていると知った母親がやめなさいと言ったとか、遠くの県に嫁入りする話があるともしやの出身かと疑われたとか、後年そんな話を耳にした。ばかばかしい。

 それにしても九州に転居して、どの県でもどこの基礎自治体でも「差別解消の推進」や「人権・同和対策」といったセクションがあることに驚いた。そんなに差別の根が深いのか。東北にそんな対策セクションはないだろう。

 実は、「プライバシー侵害」から、このプライバシー権なるものは憲法上の「幸福追求権」の一種だったと思うが、そのおさらいをするつもりだった。それが余計な話を長引かせてやめた。

額絵シリーズ

2021-09-28 08:37:51 | Weblog
 我が家では九州ブロック紙と読売新聞を購読している。
 ブロック紙はかみさんの親時代から半世紀以上も贔屓にしているのではないか。

 読売は私の希望である。以前は御多分に漏れず朝日を購読していたが、従軍慰安婦というフェイク記事で嫌気がさして絶縁した。
 私は九州人ではないから全国紙がほしい。 てなわけでアンチ巨人ながら読売を購読している次第だ。

 出だしから言い訳めいた話を差しはさんだ。本題に入る。
 昨年から読売新聞では「額絵シリーズ」の絵を月に2枚ずつ購読者に無料配布している。昨2020年は「ロンドンナショナルギャラリーの至宝」であった。印象派やらルネッサンスやら17世紀オランダ絵画やら多様な名画が配られた。
 
 今年は「日本名勝紀行広重六十余州名所図会」である。昨年と違って広重のみの浮世絵である。雪、波、桜、川、日本三景、祭礼、山、水運そして9月は橋のモチーフである。10月からの3か月を残すのみになった。

 折角だから壁掛けすることにした。そこでダイソーで額縁(200円)を買ってきた。掛ける場所は、私が常時籠る二階の六畳二間だが思ったよりスペースがない。天井までの硝子戸があり、エアコンがあり、洋服ダンスがあり、本棚までこしらえてあるのだ。それでも欄間も利用して名画と浮世絵が24枚を掛けた。

 こうして日々、夜な夜な絵画にぐるりと囲まれている。ただ、広重の「周防岩国錦帯橋」とルーベンスの美女像「麦わら帽子」が横並びではとんちんかんだ。展示替えが必要。

いじめはいつの時代でも

2021-09-27 08:46:34 | Weblog
 子どもの自殺は後を絶たない。よもや厭世感から自裁するわけではあるまい。陰湿ないじめに耐えられなかったというのが事実だろう。

 旭川の中学生のイジメ自殺で、究明を申し出た親に対し、教頭は「加害者10人と被害者1人の未来どっちが大切か」と言ったとか。絶句した。
 やはり教育委員会もいじの事実を糊塗していたようで、隠蔽体質の極りだ。

 戦前の軍隊も鍛えるという名目で体罰を課すなど初年兵のいじめがひどかったようだ。映画にもなった野間宏の『真空地帯』で軍隊のリンチや制裁がまかり通る。これが一般社会から隔絶された「真空地帯」だという。

 アリカの軍隊でも似たようなものらしい。映画『フルメタル・ジャケット』で海兵隊の鬼教官のすさまじい体罰があり、あぜんとしたものだ。

 『フルメタル・ジャケット』はベトナム戦争時代の話である。日本の場合は戦前の軍隊の狂気だから時空の彼方になったか。ところがそうではない。

 ある本からの孫引きになるが、05年5月の新聞で陸海空の自衛官の自殺者総数が報じていたとある。
 それによると00年度73人、01年度59人、02年度78人、03年度75人、04年度94人とある。二昔前の数値ではあるが、今も相当数あるに違いない。

 自殺の原因はいじめがすべてとは思わないものの多いだろうと推察される。新兵いじめの軍隊の体質は今なお変わるまい。
 
 人を育てる場は軍隊も学校も同じ。その上いじめ、隠蔽体質、保身、示し合わせ、なかったことにする等々も共通していないか。

同の字点

2021-09-26 08:24:04 | Weblog
 図書館から藤沢周平のエッセイ集『帰省』を借りてきた。ある時期、この作家の小説をよく読んだ。人情ものの短編集は車中や喫茶店の一休みにちょうどよい。

 名を覚えていないが、ある評論家がこの作家の繰り返し符号である「同の字点」を使わないことにいちゃもんを点けていたことがあった。例えていえば山々、家々、年々の(々)を用いないのだ。山山、家家、年年とするわけ。

 このエッセイ集でも「郷里の方方、少少の雨風、嬉嬉として」などがある。もっとあったかもしれない。とにかく、よほど字ではない符号がきらいらしい。
 
 もっとも引用文には手を加えない。文中の「清河八郎」という随筆にある清河の日記から引いた「人生豈碌々として市塵に亡びんや」には、ちゃんと「同の字点」のままだ。自身の小説では「碌碌」とするのだろうか。

 藤沢文学は好きだが、繰り返し符号になれているせいか、私も漢字の文字並び表記は字面がよくないと思う。

退任まぎわの渡米

2021-09-25 09:12:40 | Weblog
 この期に及んで菅首相は渡米した。あと在任は1週間もない。
 政府専用機に議員や随行、記者団もつれて、高級ホテルに宿泊する。何千万円どころか億単位かもしれない費用を税金で費消する。
 電話会談でも、駐米大使を政府代表にしてもいいではないか。

 本来ならばレイム・ダックどころか、不謹慎な言い方だけれど政治脳死ではないか。「卒業旅行かい」とからかっている文もあったが、卒業していない。自主退学したようなものではないか。

 なんでも、この渡米はバイデン大統領が、次の首相の情報を知りたく呼び寄せたという話もある。本当かねぇ。米国はインテリジェンスに長けている。とうに総裁選を分析して、閣僚や党役員の人事までも想定しているかもしれない。

 山本五十六連合艦隊司令長官がラバウル基地を飛び立つという暗号電報を解読した米軍は、その飛行機を撃墜すべきかどうか検討した。山本長官を葬っても、次の長官がさらに優れていては困るからだ。結果、山本長官が最高の指揮官とわかり撃墜した。暗号解読から指揮官の資質までインテリジェンスの能力に舌を巻く。

 米国は当然、総裁選候補を調べているだろうし、対米外交をおろそかにしないとわかっているはずだ。