本と旅とやきもの

内外の近代小説、個人海外旅行、陶磁器の鑑賞について触れていき、ブログ・コミュニティを広げたい。

日本語あれこれ12

2011-10-30 11:45:26 | Weblog
 位相語の話の続きです。

 よい言葉を伝えることが大事ですから、逆に言えば、嫌な思いをする言葉は避けなければいけません。ビジネスの文では倒れる、失う、つぶれる、終わるといった言葉に注意をしないと相手を不快にさせかねません。
 結婚式ではケーキを切るとは言いませんね。受験生に落ちるは禁句でしょう。落ちてよいのは恋ぐらいですかな。

 雑談的に忌み言葉を避けた例をいくつか挙げましょう。
 スルメのことを「あたりめ」ともいいますね。スルは「掏る」に通じて馬券を掏る、財布を掏られるとなって具合が悪い。そこで反対の当たりに換えて「当たり目」としたわけです。床屋さんはひげをあたると言いますね。むろん、剃るが正しいのですが、剃るは「反る」に通じてだんだん離れていく。そこで、ビシッとひげに当てるのですな。
 
 梨は「無し」と同音です。ですから昔の年配の方は「有りの実」と言っておりました。日田梨も日田有りの実と称するのもよいかもしれません。
 
 葦(あし)は正しいのですが、「悪し」に通じますから「善し」にちなんで、よしず張りやよしの髄から天井をのぞくというように使われますね。
 
 猿にはエテ公の別称があります。同音の「去る」は忌み言葉になりますので使いづらい。その反対の「得て」となったということです。公は爵位の最高位ですけれど、ここではダチ公とかワン公と同じ発想でしょう。
 
 宴会でそろそろお開きにします、と幹事さんが言いますね。終わりにすることですが、これでは縁起が悪い。終わりは閉じることですから、その反対の「開く」になったのです。  
 では、この項はお開きにします。