ひとこと・ふたこと・時どき多言(たこと)

〈ゴマメのばーば〉の、日々訪れる想い・あれこれ

『血は水よりも濃い』

2014-05-21 07:32:46 | 日記
姉の墓参りへ行って来ました。
まずは、お墓周りの片づけ。
いつものように お花を供えて焼香。
当地名物の お饅頭も一つ供え、私も頂きました。
昭和20年、数え年二十歳で逝ってしまった姉です。
灯火管制の暗い夜でした。
母の嘆きとともに思い出すのです。

当時、家にいた姉が、国家政策であった「女子挺身隊」という名の許に近くの工場で働かされて
体調を崩しました
その後、私たちの住んでいた町が空爆に遭い、水浸しの防空壕に退避した姉は、
病状が悪化の一途をたどり亡くなってしまったのです。
これも、戦災死の一つだと思います。
70年ほど経っても、血の絆が痛みを覚えているのです。
私の兄弟姉妹も高齢化し、命日の墓参りに行けるのは、私一人になってしまいました。

ところで、安倍首相は、多数の国民の反対、懸念を無視して、改憲への道を強引に
推し進めています。
祖父・岸信介元首相からの宿願が首相の心身に脈打っているのでしょうか。
憲法9条を葬り去ろうとするこのエートス。

『血は水よりも濃い』という諺があります。
私は60年安保闘争の際、国会を取り囲んだデモ隊という環境下での、
岸信介元首相・安倍首相の おじい様を、あの時の対応を思い出してしまうのです。
改憲を強引に推し進め
《おじいちゃん、ぼく、やったよ》
と、墓前で報告したいのかもしれない。
そんな気がしました。

ニ十歳のままの姉の面影に、
「お姉ちゃん、またまた、戦争の気配が濃くなってきたよ」
と呼びかけます。
姉からの応えはありません。

高台にある墓所からは、遠くに新幹線の走行が望めます。
音もなく南から北へと、流れるように走り去って行きました。
その先には阿武隈山地が連なっています。
そして、その向こうに、福島第一原子力発電所があるのです。
見える筈はないのに見えるような気がしました。

少し風が吹いて来ました。
涼しい、心地よい風です。
姉からの、メッセージでしょうか。
《よく来てくれたわね》と、やさしい声で。

空を見上げました。
『天上大風』
良寛さまの言葉を思い出しました。
                                 〈ゴマメのばーば〉

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さくらんぼ・『美味しんぼ』

2014-05-20 07:22:23 | 日記
さくらんぼが大好きです。
今年はまだ食べておりません。
味そのものはもちろんですが、あの形が何ともいえず可愛らしくて。
「おいしい」
と言って食べるだけでいいものを、そこが貧乏性、
「一個いくらにつくのかしら」
と、毎年考えながら買うのです。

名前が似ているので、『美味しんぼ』を思い出しました。
次号からしばらく休載にするとか。
たしかに、福島県で暮らして行こうと思っている私などにとっては、「鼻血」云々は、
愉快とはいえない表現でした。

「多くの方々が不快な思いをされたことについて、編集長としての責任を痛感しております」
「一連の内容には多くのご批判とご抗議を頂戴しました」
との編集部見解だそうですが、やっぱり「休載」ということになりますか。
愛読者ではありませんでしたので残念とまでは言えませんが、これで不快感が治まると
溜飲を下げて おしまいと言うことにもなりません。

私が懸念するのは、今後、放射性物質に関してや、健康への不安に関して、
あまり語られなくなってしまうのではないかと言うことです。
確固たる化学的根拠に裏打ちされていないと、不安などを声に しにくくなって
しまうのではないかと言う心配です。

「クローズアップ現代」でも取り上げていましたが、福島原発の事故の際、
拡散された放射性物質によって汚染された『指定廃棄物』は、いまだ処分地も決まらずに
保管されているのです。
12の都府県で、その量、14万トン。
まだまだ、事故後のケア-ができずにいる問題が、除染をはじめ数多く存在しているのです。

日常的な感覚で不安なことは「不安」だと言い続けなくてはなりません。
故意に風評被害を引き起こす言動は慎むべきですが、不安なことは「不安」だと表明し、
政府は、その不安に具体的に対処する責任があると思います。

放射線禍に晒された福島県人のひとりとしては、マイナーな「風評」は悲しく思います。
でも人は それぞれに感じ方、捉え方に「温度差」があるのです。

作家の池澤夏樹氏は、
その著書『春を恨んだりはしない』
―――震災をめぐって考えた事(2011.9.11発行)
のなかで、次の様に記していました。
     《地震に震源地があって そこからの距離に比例して被害の大きさが決まるように、
      人にも一人一人に事件の中心からの距離がある。》

人それぞれの捉え方、温度差に、目くじら立てて非難し合うのではなく、
使いこなせない「原子力発電」の再稼働にこそ、『否』と言い続けたいと思います。
                                   〈ゴマメのばーば〉
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「見も知らぬ配達人が」

2014-05-19 07:38:53 | 日記
キップを買いにJRの駅まで行きました。
帰りに、時々訪れる喫茶店へ。
窓の外を通り過ぎる若者、リックを背負った元気な高齢者などを見るともなく眺め、ゆっくりとコーヒーの香りを楽しみました。
そういえば、このところ、忙し過ぎたのです。
だから、楽しんだのは、コーヒーだけでなく、ゆったりとした時間だったのかもしれません。

「もっと、ゆっくり生きなければ………」などと思いながら、先刻買った「キップ」を取り出して眺めました。

「キップ」という言葉の響きが好きです。
手にとって眺めるのも好きです。
行き先が印字された さもない紙きれですが、
何かしら新しいものとの出会いの予感すら感じさせてくれますから。

     『キップ』
      はじめてのキップは、
      たしか
      母が預かったはず
      一つ身の晴れ着の袂にでも
      しまいこんでしまったのだろうか

      招待はしないのに
      見も知らぬ配達人が
      誕生日に欠かさずやって来て
      キップを置いていく
      キップの表には年齢が記されていて
      数字の若いキップの裏には
      おめでとう と太文字で
      おじい様 おばあ様の口添えも一緒に
      二十枚目は
      自覚と責任
      大人への通行手形

      四十枚目の このキップには
      おめでとうの文字が
      薄く書かれていて
      健康管理のことなど

      キップ配達人は
      どこからやって来るのか
      発行責任者も記されていないのに
      書きこまれている数字は
      万国共通の
      公文書用数字なのだが

こんな詩などを書いていた頃、「四十枚目」のキップが届けられてから、倍近い歳月が過ぎて行きました。
来る年も、来る年も、間違いなく、「見も知らぬ配達人」がやって来て、「歳」のキップを置いて行ってくれたのです。
少し かすれてきた「おめでとう」の文字の脇に、「ありがとう」の文字を書いて、
「明日」へ投函するつもりです。

明日、一人で、小さな旅に出ます。
                                 〈ゴマメのばーば〉

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放射線への不安や、疑問の声が、抑圧されてはなりません。

2014-05-18 07:46:27 | 日記
安倍首相は、17日、福島県を視察に訪れました。
〈風評被害や住民の健康不安の払しょくに、全力で取り組む決意を示す〉
ための来県とのことでした。

本県から出ている現役大臣二人が、漫画「美味しんぼ」に関連して、
早々に県民の不快感情に寄り添った風なコメントを発表しましたが、
安倍首相も、そのことをフォローするための来県なのだろうと私は思っています。

水田で、田植え機に乗ってみたり、
(以前、戦車にも乗ってみせました)
さくらんぼ農家を訪れ、
「取れたてですから、甘くておいしいですね」
などと、お得意のパフォーマンスをして見せました。
そして、
『いわれのない風評被害を払しょくしていく』
との見解を示しました。

また、福島県立医大で、甲状腺検査などについての説明を受け、
「甲状腺の状況につきましても、健康状況についても、ほかの県とは違いがないという話を伺いました」
と語りましたが、
首相の本音を言えば、
『福島県は、もう安全です。原発事故にかかる健康被害については、もう心配いりません』
『だから、原発を再稼働しても大丈夫です』
と、言いたかったのではないでしょうか。

安倍首相は、漫画「美味しんぼ」で問題になった放射線の健康被害に関することがらに対して、
「今後、政府としては、根拠のない風評を払しょくしていくために、しっかりと正確な情報を提供していく」
と述べました。

根拠のない風評は払しょくして行くべきです。
「風評」等に限らず、政府は、すべての情報を正確にしっかり開示すべきです。
たとえ、県民にとって不安要素ともなる事象であっても、事実であれば 
しっかり報告、説明を怠らないで下さい。
東電にも一層の指導をして下さい。

私は、漫画「美味しんぼ」に画かれている様に、
「鼻血が出た人たちが大勢いる」ということが事実であるなら、
しっかりフォローして行かねばならないと考えます。

今回の、こうした「騒ぎ」を機に、
原発事故・放射線リスクがらみの件についての不安や、疑問の声が抑圧されたり、
あるいは自主規制してしまったりすることになりはしないかと懸念いたします。
『風評被害』にマイナスを及ぼすと思われる発言が しにくくなってしまっては、
将来に大きな禍根を残しかねないのではないでしょうか。
                                   〈ゴマメのばーば〉
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「五月晴れ」は明るすぎて、

2014-05-17 07:23:56 | 日記
【鎮まる】。
いい言葉です。やさしいことばです。
真夏の陽気でしたが、若葉の緑がまだ柔らかいので、まだ、春が居残っていました。
見上げる梢の奥に広がっている空は、海です。
波の音も聞こえます。
サックスの音色も。

3年前、福島県立博物館の赤坂憲雄館長から伺った話しを思い出しました。
館長は、「東日本大震災復興構想会議」の委員に就かれていらっしゃっていて、
南相馬市方面を視察した時の状況を、動画を見せていただきながら、お聞きしたことです。

    【高台に、被害を受けずに残っている神社などが、
     車窓を通して瓦礫の向こうに見え隠れしていました。
     貝塚も被災しませんでした。
     津波は、あの高さまでは押し寄せなかったのです。
     そこは、縄文からの知恵が息づいていたのでしょう。
     明治になって、干拓や埋め立てをした場所は津波被害に遭ったようです。
     自然現象を、自らのスパンで制圧しょうという私たちの思い上がりに、
     少なからず反省させられました。】
と、穏やかな口調で話されたのです。
そして、『再生』のためには、死んだ者の魂を鎮めること、
その死に対して、生き残ったものは、きっちりと向かい合うこと、
が大切とも語られたのです。
私は深く共鳴したのでした。

死者の魂を鎮めることは、生きている者の魂をも鎮めることになるのでしょう。
【鎮まる】
いい言葉です。やさしいことばです。
手持ちの知識では納得のいかないことが多くとも、
まずは、生きているものが鎮まらなければいけないのでしょう。
死んだ者たちの、声にならない思いに、耳を傾けてみなければいけないのでしょう。

【鎮める】
生と死を一線で区切ってしまうことなどできません。
今、生きているものだけを、それだけが存在のすべてのように捉えては
いけないのです。

「五月晴れ」は明る過ぎるせいか、心が、過ぎ去って時へ向かいがちです。
やはり3年前、赤坂館長の「遠野物語講座」の際に見せて頂いた『海辺の慰霊祭』の映像に、
胸がいっぱいになったことも思い出しました。
沢山のいのちが津波に飲み込まれた海辺での慰霊祭でした。
あの時、坂田明氏のサックス、「ふるさと・浜辺の歌」が、空と海とに、
溶けこんで行ったのです。
波にさらわれた数多くの方々へも届いたはずです。

【鎮める・鎮まる】
若葉の奥に広がる海から、「ふるさと・浜辺の歌」が聞こえました。
私の心が「鎮まった」のでしょうか。
                                  〈ゴマメのばーば〉
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