ひとこと・ふたこと・時どき多言(たこと)

〈ゴマメのばーば〉の、日々訪れる想い・あれこれ

「そのあとの雨」

2014-05-05 07:35:33 | 日記
ほんのちょっぴり雨が降りました。
雨を眺め、庭の柿の木を見ていました。
今年は花芽をたくさん付けています。
多く咲いたから沢山の実がなるわけではありません。
多く咲きすぎますと、木が自ら花を落としてしまうのです。
朝、落ちている花をみますと可哀そうな気もします。
自らの選別から もれてしまった花ですから。
でも、落ちた花も、ながーいサイクルで土に還り、また花になるのでしょう。

眺めていたのは、五月という季節。
3年という時の経過だったでしょうか。
3年前、外の空気を室内に入れないようにと、閉め切った窓ガラス越しに柿の木を眺めていました。
つい昨日のような、ずいぶんと以前の様な気がします。

このところ振り返る「時」が多いのは、5月という旺盛ないのちの萌え出しに、
体力がついていけないせいでしょうか。
それとも、樹々の萌え出しの中に包み込んでいる次の季節(秋・冬)を観てしまうからでしょうか。
3年前、あの頃書き止めたものの一部を今日も掲載します。

    『そのあとの雨』
     雨。
     冷たい風。

     柿の木の新芽に すきとおった小さな水粒の電燈が ポッ ポッ ポッ
     見ると 賢治さんが 透明なマントをはおって枝に腰かけている
     「雨 降ってますよ 放射線 あぶないですよ」と言ったら
     聞こえたのか 聞こえなかったのか 帽子もかぶらずに何かつぶやいている
      【ワタクシトイフゲンショウハ
       カテイサレタ
       ユウキコウリュウデントウノ
       ヒトツノアオイショウメイデス】※
     つぶやきながら
     消えそうな電燈を やさしくゆすったり
     手のひらで温めたりしている
     「その電燈の列 銀河鉄道の窓明かりですか」って聞いたら
     賢治さん やっぱり何も応えない
     雨脚が強くなって 小さな電燈は
     ポトリ ポトリ ポトポト ポトリと落ちはじめた
      【インガコウリュウデントウノ
       ヒトツノアオイショウメイデス
      (ヒカリハタモチ ソノデントウハウシナハレ)】(※)
     つぶやきながら 賢治さんが遠ざかっていく。

     『ポー』と汽笛の音
     「あっ 銀河鉄道」
     ポッ ポッ ポッ
     ポトリ ポトリ ポトポト ポトリ。
                       (※)宮澤賢治「春と修羅 序」から
コメント
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