ひとこと・ふたこと・時どき多言(たこと)

〈ゴマメのばーば〉の、日々訪れる想い・あれこれ

「五月晴れ」は明るすぎて、

2014-05-17 07:23:56 | 日記
【鎮まる】。
いい言葉です。やさしいことばです。
真夏の陽気でしたが、若葉の緑がまだ柔らかいので、まだ、春が居残っていました。
見上げる梢の奥に広がっている空は、海です。
波の音も聞こえます。
サックスの音色も。

3年前、福島県立博物館の赤坂憲雄館長から伺った話しを思い出しました。
館長は、「東日本大震災復興構想会議」の委員に就かれていらっしゃっていて、
南相馬市方面を視察した時の状況を、動画を見せていただきながら、お聞きしたことです。

    【高台に、被害を受けずに残っている神社などが、
     車窓を通して瓦礫の向こうに見え隠れしていました。
     貝塚も被災しませんでした。
     津波は、あの高さまでは押し寄せなかったのです。
     そこは、縄文からの知恵が息づいていたのでしょう。
     明治になって、干拓や埋め立てをした場所は津波被害に遭ったようです。
     自然現象を、自らのスパンで制圧しょうという私たちの思い上がりに、
     少なからず反省させられました。】
と、穏やかな口調で話されたのです。
そして、『再生』のためには、死んだ者の魂を鎮めること、
その死に対して、生き残ったものは、きっちりと向かい合うこと、
が大切とも語られたのです。
私は深く共鳴したのでした。

死者の魂を鎮めることは、生きている者の魂をも鎮めることになるのでしょう。
【鎮まる】
いい言葉です。やさしいことばです。
手持ちの知識では納得のいかないことが多くとも、
まずは、生きているものが鎮まらなければいけないのでしょう。
死んだ者たちの、声にならない思いに、耳を傾けてみなければいけないのでしょう。

【鎮める】
生と死を一線で区切ってしまうことなどできません。
今、生きているものだけを、それだけが存在のすべてのように捉えては
いけないのです。

「五月晴れ」は明る過ぎるせいか、心が、過ぎ去って時へ向かいがちです。
やはり3年前、赤坂館長の「遠野物語講座」の際に見せて頂いた『海辺の慰霊祭』の映像に、
胸がいっぱいになったことも思い出しました。
沢山のいのちが津波に飲み込まれた海辺での慰霊祭でした。
あの時、坂田明氏のサックス、「ふるさと・浜辺の歌」が、空と海とに、
溶けこんで行ったのです。
波にさらわれた数多くの方々へも届いたはずです。

【鎮める・鎮まる】
若葉の奥に広がる海から、「ふるさと・浜辺の歌」が聞こえました。
私の心が「鎮まった」のでしょうか。
                                  〈ゴマメのばーば〉
コメント
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