今日17日は百丈忌です。円覚寺等臨在系の寺々では百丈忌が営まれるようです。百丈懐海(ひゃくじょう えかい)は、南宗禅の馬祖道一の法を継ぐ唐時代の禅僧で元和9年(814年)1月17日に94歳で入滅され大智禅師と諡されたといわれています。『碧巌録』二十六則の「独坐大雄峰」、『碧巌録』第五十三則にある「百丈野鴨子(百丈禅師が師の馬祖道一に野鴨の行方を聞かれて悟った)」の話や百丈清規を定められたこと、「一日不作、一日不食」とおっしゃったこと等有名ですが、私は無門関第二則・百丈野狐 の話が好きです。
「百丈和尚、凡ソ参ノ次イデ、一老人アリ、常ニ衆ニ随ッテ法ヲ聴ク。衆人退ケバ、老人モ亦退ク。忽チ一日退カズ。師遂ニ問フ、面前ニ立ツ者ハ、復タ是レ何人(ナンピト)ゾ。
老人云ク、諾、某甲(ソレガシ)ハ非人ナリ、過去迦葉仏ノ時ニ於テ曾テ、此ノ山ニ住ス、因ミニ学人問フ、大修行底ノ人、還ッテ因果ニ落ツルヤ也タ無シヤ。某甲対(コタ)ヘテ云ク、不落因果ト、五百生野狐身ニ堕ス。今請ウ和尚、一転語ヲ代ッテ、貴(タット)ムラクハ野狐ヲ脱セシメヨト。遂ニ問フ、大修行底ノ人、還ッテ因果ニ落ツルヤ也タ無シヤ。
師云ク、不昧因果。
老人言下ニオイテ大悟、作礼シテ云ク、某甲已ニ野狐身ヲ脱シテ、山後ニ住在ス、敢テ和尚ニ告ス、乞フ亡僧ノ事礼ニ依レ。
師、維那ヲシテ白槌(ビャクツイ)シテ衆ニ告ゲシム、食後ニ亡僧ヲ送ルト、大衆言議ス、一衆皆安シ、涅槃堂ニ又人ノ病ム無シ、何ガ故ゾ是ノ如クナルト。
食後ニ、只師ノ衆ヲ領シテ、山後ノ巖下ニ至リ、杖ヲ以ッテ一ノ死野狐ヲ跳出シテ、乃チ火葬ニ依ルヲ見ル。
師、晩ニ至ッテ上堂、前ノ因縁ヲ挙ス。黄蘗便(スナワ)チ問フ、古人錯マッテ一転語ヲ祇対シテ五百生野狐身ニ堕ス、転転錯ラズンバ合ニ箇ノ甚麼(ナニ)トカ作ルベキ。
師云ク、近前来、伊(カレ)ガ與ニ道ハン。黄蘗遂ニ近前シテ、師、一掌ヲ與フ、師、手ヲ拍ッテ笑ッテ云ク、将ニ謂ヘリ胡鬚赤ト、更ニ赤鬚胡アリ。
無門日ク、不落因果、甚(ナン)トシテカ野狐ニ堕ス。不昧因果、甚トシテカ野狐ヲ脱ス。若シ這裏(シャリ)ニ向ッテ一隻眼ヲ著得セバ、便チ前百丈贏チ得テ風流五百生ナルコトヲ知得セン。
頌ニ日ク、
不落不昧、
両菜一賽。
不落不昧、
千錯万錯。」というものです。因果と自分、因果と世界を別にみるのは迷いの最たるもので、すべては因果そのものなのでした。自分も因果そのものだったのです。
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