私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

個性派ピアニスト、サンソン・フランソワの「ドビュッシー名演集」

2010-04-19 23:29:34 | 器楽曲
 過日紹介した個性派ピアニスト、サンソン・フランソワ(Samson François/1924~1970)のラヴェルの二つの「ピアノ協奏曲」と並んでドビュッシーのピアノ作品集も忘れがたい名盤である。写真のLPは今から約30年近く前に東芝EMIの「NEW ANGEL BEST100シリーズ」の1枚としてリリースされたものだが彼の色彩感あふれる個性的なドビュッシーを聴くことができる。
 収録曲は組曲4作品ー「子供の領分」・「版画」・「ベルガマスク組曲」・「ピアノのために」である。これらは当時彼が録音進行中であった「ドビュッシーピアノ作品全集」からの選曲だが特に「版画」の第3曲「雨の庭」と「ベルガマスク組曲」の最も有名な第3曲「月の光」、第4曲「パスピエ」は聴きものである。彼は心臓発作で急逝したため全集録音は未完で終わってしまったが個性派ピアニスト、フランソワの魅力を余すところなく伝えている。

エルンスト・フォン・ドホナーニ/「ピアノと管弦楽のための童謡の主題による変奏曲」

2010-04-18 12:42:36 | 協奏曲
 今日はハンガリーのピアニスト、指揮者、作曲家として名声を博したエルンスト・フォン・ドホナーニ(1877~1960/ハンガリー名ドホナーニ・エルネー)の「ピアノと管弦楽のための童謡の主題による変奏曲」作品25を取り上げてみたい。因みに世界的名指揮者として知られるクリストフ・フォン・ドホナーニ(1929~ )は彼の孫にあたる。
 この作品はドホナーニが36歳(1913年)に作曲したピアノ協奏曲風の11の変奏曲と終曲からなる作品で童謡「キラキラ星」を主題に用いている。「キラキラ星」をテーマに用いた作品と言えば一番に思い浮かぶのがモーツアルトのピアノ曲ー通称「キラキラ星変奏曲」K.265であろう。一方、このドホナーニの作品は管弦楽を伴う協奏曲作品でスケール感のあるダイナミックなものである。後期ロマン派風の雰囲気を持ち優美で快活に曲は進む。写真のLPレコードは以前にも紹介した19歳で「ヴァン・クライバーン・ピアノ・コンクール」で優勝したブラジル出身の名女流ピアニスト、クリスティーナ・オルティスが1975年頃に録音したものである。(英EMI/ASD3197)指揮は日本の小泉和裕、管弦楽はニュー・フィルハーモニア(現、フィルハーモニア)管弦楽団である。この作品はレコード第2面に収録されているが第1面にはラフマニノフの「パガニーニの主題による変奏曲」が収録されておりどちらも好演である。ドホナーニのこの作品は国内のコンサートで演奏される機会が滅多にないので今後はもう少し演奏されることも期待したい。

フランス風エスプリが漂うプーランクの「ピアノ協奏曲」

2010-04-17 01:01:02 | 協奏曲
 「フランス6人組」の一人フランシス・プーランク(Francis Poulenc/1899~1963)の「ピアノ協奏曲」はアメリカの名門オーケストラ、ボストン交響楽団の委嘱により1949年に作曲された。全3楽章構成のこの協奏曲は演奏時間にして約20分足らずの作品であるがその旋律はまさにフランスのエスプリが漂う優美なものである。特に第2楽章「アンダンテ・コン・モート」は瞑想的でうっとりとさせられる。写真のCDはBMG/FRANCEレーベルから2004年にリリースされたプーランクを得意とするエリック・ル・サージュ(Elic le Sage)のピアノによるアルバムである。指揮はステファヌ・ドネーヴ、管弦楽はベルギーのリエージュ・フィルハーモニー管弦楽団によるものでこの他に「2台のためのピアノ協奏曲」(フランク・ブラレイとの共演)と普段生で聴く機会が少ない「ピアノと18の楽器のための舞踊協奏曲ーオバド(Aubade)」が収録されている。「Aubade」とはフランス語で「表敬のために戸口などで朝おこなう演奏、またはそのための曲」を意味するものだがこの作品はノアーユ伯爵邸で上演された舞踊音楽である。
 いずれもピアニスト、ル・サージュの巧まさがプラーンクの作品の魅力を充分に引き立たせた好演になっている。

サティの「ジムノペディ」(ドビュッシー管弦楽編曲版)

2010-04-15 23:01:39 | 管弦楽曲
 エリック・サティ(Erik Satie/1866~1925)のピアノ曲に「3つのジムノペディ(3Gymnopédies)」という傑作がある。この作品は後にクロード・ドビュッシー(Claude Debussy/1862~1918)により「第1番」と「第3番」が管弦楽に編曲されている。今日紹介するレコードは若きアンドレ・プレヴィンがロンドン交響楽団とRCAに録音した(1966年)その管弦楽版である。(写真ー独RCA-GL42303)この種の作品の演奏にはとりわけ巧さが光るプレヴィンだがこの録音も例外ではなく曲のツボをうまく捉えドビュッシーによる管弦楽編曲の魅力を余すところなく伝えている。
 このレコード盤では「ジムノペディ第1番・第2番」となっているが「第2番」はドビュッシーの編曲はないため必然的に「第1番」・「第3番」ということになるがこのLPの収録は「第3番」-「第1番」の順になっている。因みにタイトルの「ジムノペディ」とは古代スパルタの「ディオニュソスの祭り」の際、戦没した兵士を悼むための踊りのことである。
 この他には普段コンサート等でもあまり耳にすことがないフランスの新古典様式の現代作曲家ジャン・フランセ(Jean Françaix/1912~1997)のオーボエと管弦楽のための「花時計」(1959)やジャック・イベール(Jacques Ibert/1890~1962)の「オーボエと弦楽合奏のための協奏交響曲」(1948)、オーボエ独奏ージョン・ド・ランシィ(John de Lancie)も収録されておりこちらも好演である。









デゾミエール編曲/バレエ音楽「美しきドナウ」(原曲/ヨハン・シュトラウスⅡ)

2010-04-14 17:17:30 | 管弦楽曲

 パリ・オペラ=コミックの指揮者(音楽監督)を務めたロジェ・デゾルミエール(Roger Désormière/1898~1963)がヨハン・シュトラウスⅡの代表作円舞曲「美しき青きドナウ」やオペレッタ「こうもり」等々の名曲を集めて編曲したバレエ音楽「美しきドナウ(Le Beau Danube)」が収録された珍しいCDを紹介したい。
 写真のCDは4、5年前にドイツ・グラモフォンから「THE ORIGINALS」シリーズとしてリリースされたポール・シュトラウスがベルリン放送交響楽団(現、ベルリン・ドイツ交響楽団)を振ったステレオ最初期(1958年)の録音である。LPレコードとしての初出は1959年でこのCDにも収録されているオフェンバック/ロザンタール編曲バレエ音楽「パリの喜び」とのカップリングであった。指揮者のポール・シュトラウスはあまり馴染みがないと思われるがベルギーのリエージュ管弦楽団の首席指揮者を務めていた人で今から30年余り昔になるがフランクのギリシャ神話を題材にした珍しい声楽付き交響詩「プシュケ」を同楽団他とEMIに録音してちょっと話題になったことがある。
 この他にこのCD盤には19世紀フランス・オペラ・コミックの作曲家として活躍したダニエルーフランソワーエスプリ・オーベール(Daniel-François-Esprit Auber)の歌劇「フラ・ディアボロ(Fra Diavolo)」の序曲などめったに聴くことができない作品も収録されている。ポール・シュトラウスのそつのない見事な指揮ぶりが魅力的な1枚だ。



ムラヴィンスキー最後の来日公演ライヴ盤から「グラズノフ/交響曲第5番」

2010-04-13 21:17:27 | 交響曲
 一昨日グラズノフの舞踊音楽「四季」を紹介したが今日は彼の交響曲作品から1枚取り上げてみたい。写真のCDはエフゲニー・ムラヴィンスキー/レニングラード・フィルが1979年に最後の来日公演を行った最終公演のライヴ盤である。(1979年6月8日/NHKホール、東京)グラズノフの交響曲は最後の「第9番」が第1楽章のスケッチのみで未完に終わったため完成された作品は全部で第1番から第8番までの8曲ということになる。とりわけこの「第5番変ロ長調作品55」はグラズノフ30歳の1895年に完成された作品でロシア的国民音楽文化と西欧の音楽文化が見事に融合された彼らしい美しい旋律を持った作品で彼の交響曲作品の中でも傑作とされているものである。またこの作品は別名「英雄的」とか「ワグネリアン」とも呼ばれることもありこの作品に与えらえれた作品番号55は偶然にもベートーヴェンの第3番~「英雄」と同じ作品番号なのが興味深い。
 グラズノフの舞踊音楽を思わせるこの「第5番」の優美な旋律はまさに彼の真骨頂である。このムラヴィンスキーのステレオ・ライヴ盤はレニングラード・フィルの弦の美しさが印象的な1枚でもある。

K.ザンデルリンク/シュトゥットガルト放送響ーブルックナー交響曲第7番ライヴ盤

2010-04-12 22:21:35 | 交響曲
 ブルックナーの「交響曲第7番」については今までにカラヤンを筆頭に数々の名盤を紹介してきたところだがもう1枚ぜひ取り上げておきたい演奏がある。それはクルト・ザンデルリンク(Kurt Sanderling)が1999年12月シュトゥットガルト放送交響楽団に客演指揮した時のライヴ盤である。このCDはドイツの「hänssler CLASSIC」ー主としてこのシュトゥットガルト放送響をはじめとしてSWR(南西ドイツ放送)に所属するオーケストラの演奏をリリースしているレーベルから発売されている。(hänssler-CD93.027)
 演奏はザンデルリンクらしい非常に節度のあるしっとりとした響きに吸い込まれていく名演である。やはり一番の聴きどころは第2楽章「アダージョ」であろう。透明感あふれる響きは素晴らしいの一語につきる。因みにザンデルリンクはこの楽章のクライマクッスでのシンバルは加えていない。また終楽章もテンポを派手に動かすことなくじっくりと情感がこもった説得力ある演奏が魅力的だ。



グラズノフの舞踊音楽「四季」

2010-04-11 15:55:31 | 管弦楽曲

 ロシアのグラズノフ(Glazunov/1856~1936)はオペラ作品以外の様々の分野に渡り傑作を書いた人であるがわが国ではチャイコフスキー等の影に隠れてしまう存在にある。しかしバレエ音楽をはじめとする彼の管弦楽曲作品には特に注目されるものが多く今日取り上げるバレエ音楽「四季」作品67も彼の代表作「ライモンダ」と並び色彩豊かな管弦楽法が魅力の一つになっている。
 曲は「冬」から始まり「秋」に終わる構成で自然の風物を「擬人化」しメルヘンチックな味わいがある親しみやすい音楽になっている。写真のLPレコードはバレエ音楽を得意としていたロシアの指揮者ボリス・ハイキン(Boris Khaykin/1904~1978)がモスクワ放送交響楽団と録音した大変懐かしい1枚である。(新世界SMK7512/原盤ーメロディア)演奏は旧レニングラード(現、サンクトペテルブルグ)のキーロフ劇場(マリンスキー劇場)でオペラ、バレエ音楽の指揮者として活躍したハイキンだけありこの作品の魅力を充分に引き出した華やかで美しい見事なものになっている。


ジョルジュ・エネスコの「貴重なライヴ音源」

2010-04-10 14:30:29 | 協奏曲
 ルーマニアを代表する音楽家の一人ジョルジュ・エネスコ(Georges Enesco/1881~1955)の貴重なライヴ音源を紹介したい。写真のCDがそれである。これは彼が教師として1949年にアメリカ、イリノイ大学のマスター・クラスに招かれた時の「フェアウェル・コンサート」のライヴ録音でJ.S.バッハ/ヴァイオリン協奏曲第2番ホ長調BWV1042、ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲ニ長調作品61とアンコールに演奏されたバッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第1番ト短調BWV1001からフーガが収録されている。アンコール演奏では曲目を紹介するエネスコ自身の肉声も聴こえる。ヴァイオリン・ソロはもちろんエネスコ自身、管弦楽/イリノイ大学管弦楽団、指揮ジョン・クィパーで会場はイリノイ大学の「The Smith Music Hall」、1949年2月16日のライヴである。この演奏を聴くといかにエネスコがヴァイオリニストとしても偉大であったかがうなづける。また彼は指揮者としても活躍し1923年ニューヨークでフィラデルフィア管弦楽団を指揮者デビューを果たしその後ニューヨーク・フィルハーモニックの指揮台にも立っている。
 このCDは1995年イギリスのビダルフ・レコーディングス(Biddulph Recordings)よりイリノイ大学の協力を得てオリジナル・アセテート盤から復刻されたものである。(Biddulph-LAB108)

 




ツィモン・バルトの「ラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番」

2010-04-09 23:23:18 | 協奏曲
 アメリカ出身のピアニスト、ツィモン・バルト(Tzimon Barto/1963~ )も大変個性が強いピアニストで彼のEMIレーベルへのデビュー2作目にあたるラフマニノフ/ピアノ協奏曲第3番ニ短調作品30(1989年録音/バルトーク/ピアノ協奏曲第2番とカッップリング/エッシェンバハ指揮、ロンドン・フィルハーモニック)は筆者が好んでよく聴く1枚である。
 写真は独EMIのLP盤であるが国内ではCDのみの発売だった。彼のEMIレコーディング・デビュー盤のプロコフィエフの協奏曲第3番ハ長調他(アンドリュー・デイヴィス指揮/ロンドン・フィル)と同様スケール感のあるピアノの妙技を聴かせている。さすがにエッシェンバッハが彼の才能を高く評価しただけのことが充分にうかがえる当時弱冠26歳にして完成度の高いラフマニノフの演奏である。また第2面に収録されているバルトークも好演でLP1枚でこれら2つの協奏曲が楽しめる合計演奏時間にして80分近い長時間収録のLPである。音質も長時間収録の割には大変良好でレコード内周の歪もほとんど感じることはない。余談だがバルトは欧米を中心に指揮者としてもその才能を発揮しており特にオペラにその関心が高いようである。