英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

相棒 season15 第8話「100%の女」

2016-12-01 23:22:14 | ドラマ・映画
「法を破って、正義を全うできるとは思いません」
…………………あんたが言うなっっ、あんたがっ!
 非常に多くの視聴者が叫んだはずだ。様々な違法捜査を繰り返す右京に言われたくない。


≪法廷での目撃証言が、捜査段階でのものと微妙に食い違っていた≫ことに冠城が気になってしまったことから始まった。
犯人と思われる男を目撃した地点が少し違っていた
【なぜか?】
1.より明るい地点で目撃したとした方が、裁判を有利に進められる
2.証言者の女性中学校教師は目撃前に教え子とカラオケボックスで会っており、法廷で真の目撃地点での証言を述べると、それが明るみに出る可能性がある。証言をしてもらうため、目撃地点を修正した。
3.検事の倉田映子(鶴田真由)は、自身が取り調べた被告から襲われ、スカーフで首を絞められ、心の傷を負っていた。その為、心理カウンセリングを受けていたが、その場所が女性教師と中学生が会っていたカラオケボックスと同じ建物であった。
 女性教師の目撃証言からカウンセリングを受けていた事実に辿りつかれることを恐れた。



 “100%の女”と言うと、完璧な女性(人間)のように思われるが、“100%でないと安心できない人間”“100%でないことを許容できない人間”だったのだ。
「実際、証人がそれまでどこで何をしていたかなんて、弁護側が裏を取るかどうかも分からない。ましてや、カウンセリングルームから出てくる私が発見される確率も限りなくゼロに近い。でも、100%保証されない限り、安心できなかったんです。
 カウンセリングは私にとって心のバランスを保つもの。決して、うしろめたいものではない。でも、そう思わない者もいる(右京は“それこそ100%馬鹿げた偏見”だと言う)
 だからと言って、今回の事件を不起訴にするなんて、私にはできなかった」


 “細かいことが気になってしまうのは、冠城くん(右京も)の悪い癖”だが、倉田検事も気にし過ぎだった。
 さらに、右京の追及は続く……

「だとすれば、あなたは偏見を恐れるべきではなかった。正々堂々と証人を説得し、裁判を闘うべきではなかったのではありませんか」(それよりも、私は、他の証拠をしっかり固めれば、防犯カメラの映像だけに留めても、立証でき、それに精力を注げばよかったと思う。実際、共犯者(被害者の妻)の存在に行き着けば、充分、犯行を立証できていた)
「そうね、きっと杉下さんの仰る通りだったんです。でも、私はそこまで強くなかった。
 明日にでも、辞表を書きます」
「そうですか。とても残念です」

「待ってください。そこまでさせる必要はないでしょう」
「冠城くん、ありがとう。自分で蒔いた種だから、自分で拾う」

「このことは我々しか知らないわけですし、事件にも影響はない。今回だけは、不問に付してやるわけには…」
「冠城くん、それは我々が決めることではありません。倉田検事ご自身がお決めになることです」


 “倉田検事ご自身がお決めになることです”……いやはや、これだけネチネチと追及したら、“辞表届を書く”と言ってしまうだろう。『相棒』に於ける正義感の強い常識人だと尚更である。三雲判事が偲ばれる……
 確かに、“証言の内容を修正する”ことは“やってはいけない事”である。
 しかし、検事を辞めるほどの重大な過ちなのだろうか?


【右京の“過ぎた正義感”を弁護してみる】
 右京が許せなかったのは、倉田が保身の為に証言を修正させたこと。
 少なくとも右京の違法捜査は、私心によるものではなく、その点で大きな違いがあるのだ。


 
【右京の“過ぎた正義感”を糾弾してみよう】
 これに関しては、日下部彌彦(榎木孝明)が攻撃している。

 笑顔で右京を出迎えつつ、「“キミが考える正義”について、一度ゆっくり話したいと思っていた」と切り出し、
「これから先、彼女がやろうとしていた大きな正義を失うことの方が、大きな損失だとは思わないのか?」

 今後の彼女が重ねるであろう功績を思うと、もっと遥かに軽い処分でいいのではないだろうか?
 右京にとっては、私心で証言を修正させたことが、許せないのだ
……“100%の正義男”・右京だ。


 個人的には、女性教師を振り回した甘えた男子中学生にムカついた。
 こいつがいなければ、目撃証言はなかったわけだが、それならそれで、警察(検察)ももっと多方面からしっかりした捜査をしていたはずで、倉田検事が辞職することもなかった。


 さて、今回のテーマは、時折(しょっちゅう)暴走する“右京の正義”であった。
 脚本は金井寛氏。意表を突くことにとらわれ過ぎて、人物の心理の動きや行動に強引さがあったり、状況などに細かい不整合が多い傾向が強く、私がマークする要注意脚本家の一人。他に真部千晶氏、西岡琢也氏、池上純哉氏らがいる。(『相棒』の脚本とは限らない)……season14 第9話「秘密の家」での記述

 金井氏は、右京の正義について、上記のseason14 第9話「秘密の家」season13 第5話「最期の告白」で、テーマにしている。

 “右京の正義”については融通の利かなさが売り?だが、今回は「倉田検事の功績」>「右京の正義」過ぎる。
 事件の真相そのものはつまらなく、「もっとしっかり捜査しろよ」と言いたい。



 納得できない回が多いが、面白かったと評価している回もある。(season14 第13話「伊丹刑事の失職」season13 第17話「妹よ」
 
 
【『相棒』における金井寛脚本の当ブログの記事】
season14 第13話「伊丹刑事の失職」
season14 第9話「秘密の家」
season14 第3話「死に神」
season13 第17話「妹よ」
season13 第6話「ママ友」
season13 第5話「最期の告白」
season13 第3話「許されざる者」
season12 第17話「ヒーロー」
season12 第12話「崖っぷちの女」
season12 第5話「エントリーシート」
season12 第2話「殺人の定理」
season11 第15話「同窓会」
season11 第8話「棋風」


【ストーリー】番組サイトより

外務省高官の刺殺事件の背景に大国の影が?
有罪率100%の女検事と対峙し特命係が消滅の危機に


 2か月前、外務省欧州第一局長の棚橋(窪園純一)が、都内の公園で刺殺される事件が発生。事件の背景に国際問題が絡んでいる可能性があることから、警察は慎重に捜査を開始していた。そんな中、公園近くの中学校で教師をする田村紗季(志保)が、犯人らしき人物を目撃したと名乗り出る。証言によると、目撃したのは棚橋と同じ外務省に勤める中嶋(松下哲)という男で、同僚らによると棚橋と中嶋は事あるごとに職務上で衝突していたらしい。
 検察は、これらの状況を加味して、被疑者否認のまま中嶋を起訴。裁判員裁判が行われることになった。中嶋を厳しく追及するのは、負け知らずの有罪率で、周囲から「100%の女」と評される検事の倉田映子(鶴田真由)。亘(反町隆史)が法務省時代に研修で一緒になり、現在は「勝てない事件は不起訴にして有罪率を高めている」との批判もある検察のあり方を変えようと取り組んでいる女性だった。
 しかし、裁判を傍聴していた亘は、紗季が目撃証言を微妙に変えていることに引っ掛かる。亘から話を聞いた右京(水谷豊)が捜査に乗り出すと、次席検事のポストが目前といわれる映子が、有罪率100%を維持するために紗季に証言の修正を依頼したのではないかという疑惑が浮上。右京と亘が映子に直接その疑惑をぶつけると、彼女は亘の元上司である法務省事務次官の日下部(榎木孝明)を通じて圧力をかけてきた。日下部は亘に、もし棚橋の殺害に国際情勢が絡んできた場合、これ以上事件にかかわると、特命係の存続自体が危ぶまれるというが…!?

“100%の女”に向けられた疑惑の真相は…!?
そして法務省時代の上司である日下部の指示で亘がとった意外な行動とは!?
警察vs検察となった殺人事件に、特命係存続を懸けた右京の推理が冴える!!


ゲスト:鶴田真由

脚本:金井寛
監督:権野元

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正義どうこうの台詞 (hamarun)
2016-12-02 23:14:58
はじめまして。去年の今頃「相棒」作品を見始めたhamarunと申します。

正直この手の話は過去の衝撃作「黙示録」等の焼き直しでしかなく、右京の正義がどうこうという話自体に飽きがきています。

ところで
「法を破って、正義を全うできるとは思いません」
私も思わず画面に突っ込みたくなりました(笑)
脚本家はこういう台詞をどんな神経で言わせているのでしょうか。
捜査権がないのに捜査している以上、ある程度の職務違反は仕方がありません。違法捜査も極力さけるべきですが、話の都合上出てくることもあるでしょう。
しかし、不必要で眉を顰めたくなるような違法捜査も散見される(「女優~後編」などどういう意図で脚本家がそのような描写を入れたのか疑問に思うものが多い)のに、上記の台詞を何故使うのか、似たような台詞を聞くたびに疑問に思っています。
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「杉下の正義は暴走するよ」(by官房長) ()
2016-12-03 11:53:38
hamarunさん、はじめまして。

 右京の正義についてですが、コメントのタイトルに挙げた「杉下の正義は暴走するよ」が有名で、端的に表現した言葉です。
 右京の信念ですが、「真実を究明し、その罪は厳正に処されなければならない」だと思います。サスペンスの多くの主人公の場合、真実を究明することが主ですが、右京の場合、厳格に処するまで、しかも処する方に重きを置いています。それが、暴走に繋がっています。(「厳正に処される」とは、右京の場合、裁判でその罪を裁定すること。右京自身が罪を裁定するのではなく、裁判の判決に任せるというスタンスです)
 そして、「厳正に処する」こと第一なので、そのための違法捜査はやむを得ないと考えているようです。
 これまで15シーズンを通した右京の設定は、「洞察力や推理力は極めて優れているが、罪や遵法に厳格すぎて、過ぎた正義に走る傾向がある」というようなものだと考えます。
 だから、杉下右京が厳格すぎて、情状酌量の余地を挟まない対処をするのは右京の個性(欠点)で、右京に完璧な主人公を求めていないようです。
 おそらく、そういった設定のもとで製作しており、多くの脚本家もそれに沿ったシナリオを描いているはずですが、何しろ、ロングランなので、右京のキャラ自体もぶれており、さらに、脚本家によるブレも大きくなってきているようです。

 で、右京自身の違法捜査における、右京の考えですが、初期のころは私の記憶もあやふやなので言及できませんが、ここ数年では、制作サイドでの掘り下げた議論や設定もなく、各脚本家に任せているだけのように思われます。
 そこで、これまでもよく使われてきた「法を破って、正義を全うできるとは思いません」で済ましてしまっているだけの気がします。

 しかし、この言葉は、矛盾が大きすぎるので、使ってほしくないですね。
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