今回の脚本は金井寛氏。
過去に
season11
第8話「棋風」、第15話「同窓会」
season12
第2話「殺人の定理」、第5話「エントリーシート」、第12話「崖っぷちの女」
を担当している。
私は将棋ファン、しかも、“うるさい”という形容詞がつくファンであるが、「棋風」は面白かったという記憶がある。「エントリーシート」「崖っぷちの女」はかなりひねりを聞かせた作品だった。
印象としては、推理ドラマを(ぼお~っと)楽しむとしたら面白いが、私のような“ひねくれ者”があら捜しをすると、登場人物の心情や行動が不自然、偶然に頼ることが多いように思える。
今話も、その傾向が強かったように思う。
★登場人物の心情や行動の不自然さ
☆謎のヒーロー(青年・竜也)の行動
・弁護士・麗子に近づいて、彼女のことを探りたいのなら、あの場から立ち去るのは、火事の時に殺意(敵意)を持って近づいたという後ろめたさがあったとしても、妙。
・上記の件は良いとしても、風呂屋で右京たちに呼びかけられた時に、これ幸いに麗子に紹介してもらうほうが、あとで電話を掛けて名乗り出るより、はるかに自然。
これは右京たちを事件(麗子と竜也の関わり合い)に絡ませるためで、かなりの強引さを感じる。
☆中途半端な女性弁護士・麗子
過去のクルーズ船事故の真実を隠ぺいしたが、それは、真実が明らかになると事故を起こした会社が倒産してしまい、そうなると、被害者遺族たちが事故の損害賠償を受け取れなくなるという理由。
旅行会社は保険に入っていたかもしれないし、そうでなくても、真実を明らかにして、経営破たんしない範囲でできるだけの賠償金を出させる方が、誠意のある対応だと思う。「会社が支払う賠償金を最小限にとどめた」という事実は、被害者遺族にとっては“悪徳弁護士”に他ならない。
☆糾弾しない右京
今回の殺人を引き起こしたのは、クルーズ事故の真相を隠ぺいしたこと。
この点について、右京が麗子を糾弾しないのはおかしい。
☆理解に苦しむ船長の自殺
自分の愛する海・船を使って、しかも、他の人を巻き込んでの自殺なんて考えられない。
残された家族(妻)は、被害者遺族に責められるだろうし。
☆轟さんは殺されなければならなかったのか?……不可解な真犯人の殺人
社長に説得されて、船長の自殺の意思を隠ぺいした轟。確かに、部長に昇進するなどおいしい目にあっていたが、慰霊祭の彼は本当に悔いており、その様子を真犯人も目撃していたはず。
恨みはあったとは思うが、殺さなければならなかったのだろうか?
恨む対象なら、船長か社長が一番のはず。轟や麗子がターゲットになり、社長が狙われなかったのはおかしい。
美談で済ませてしまった。
★右京の言葉をそっくり返してあげたい『相棒』によくある偶然
「竜也君があなたを助け、その竜也君がたまたま軟派した女の子に聞いて掛けた番号が殺された轟さんの番号だった。そして轟さんの会社が起こしたクルーズ船事故の弁護を担当したのがたまたまあなただった。
この偶然が、何とも気になりましてねぇ」
という右京の問いかけに対し、
「そんな偶然、いくらでもありますよ」
と、麗子は一笑。
そう、相棒にはよくある偶然だ。
現に、竜也が麗子に近づいたとき、たまたま火事が起こり、その火事の付近にたまたま右京たちがうなぎを食べに来ていて、“竜也が火事の件を知らないふりをした”と報告を麗子にしたとき、たまたま竜也から電話がかかってきた。
確かに、よくある偶然だ。
★『相棒』としての物足りなさ……推理がなかったような気がするが
証言の不自然さに着目したぐらい(これも推理と呼ぶのは抵抗がある)で、ほとんどは想像だけ。
評価できるのは、享の調査(過去の事件と社長が経営する2つの会社について)と、クルーズ事故の被害者と今回の事件の関係者の共通人物を発見したぐらい。
もしかしたら、携帯の電源が切られていて追跡不能であったが、車両の盗難防止システムを利用するという機転を利かせた米沢さんが今回の真の「ヒーロー」だったのかもしれない。
★突っ込みどころも多い
・“煙にまかれそうになった女性を救い、名も告げずに立ち去った”というのは美談かもしれないが、本記事も「小火(ぼや)」にしては記事の扱いが大きいし、美談記事も助けられた弁護士の顔写真を載せるというのは不自然。
美談で大々的に扱うのなら、火の海の中に飛び込んだぐらいでないと。
・竜也はいつも先頭のタオルを持ち歩いているのだろうか?
・3年前の給料明細を取っておくものなのか?しかも、右京に見つけてくれとばかりの場所に置いておくとは!
・同じく、3年前の旅行ガイドブックを、これ見よがしに本立てに入れておくのも不自然。
・タイトルの「ヒーロー」にも違和感。「恩人」が妥当か。
【ストーリー】番組サイトより
右京(水谷豊)と享(成宮寛貴)は昼食後偶然、ビル火災の現場に出くわし救出作業に加わる。上の階で煙の中にいた女性を一人の青年が抱きかかえながら階段を降りてきて救出。救出されたのは弁護士の麗子(松尾れい子)。しかし、助けた青年はその場から姿を消してしまう。
麗子から助けた青年を探すよう頼まれた右京らは、現場に残された手がかりからその青年を見つけるが、自分は助けた覚えなどないと言って逃げるように去っていく。なぜ彼は人助けをしたことを認めようとしないのだろうか?
新聞で弁護士を救った「謎のヒーロー」と報道される中、右京と享は麗子に状況を報告するが、そこへ青年本人から名乗り出る電話が入った。電話をかけてきたのは竜也(岸田タツヤ)と名乗る男性。
竜也のアパートへ向かうと、捜査一課の伊丹(川原和久)らと鉢合わせ。伊丹らは殺害されたIT企業の経営企画部長・轟(大内厚雄)の携帯の最後の着信が竜也からだったから事情を聞きにきたというのだ…。
弁護士の麗子を助けた人物だと名乗り出た直後に殺人事件への関与を疑われるこの偶然性に不審を抱く右京。
竜也はヒーローなのか、それとも殺人に関与する人物なのか?
ゲスト:岸田タツヤ、松尾れい子
脚本:金井寛
監督:田村孝蔵
過去に
season11
第8話「棋風」、第15話「同窓会」
season12
第2話「殺人の定理」、第5話「エントリーシート」、第12話「崖っぷちの女」
を担当している。
私は将棋ファン、しかも、“うるさい”という形容詞がつくファンであるが、「棋風」は面白かったという記憶がある。「エントリーシート」「崖っぷちの女」はかなりひねりを聞かせた作品だった。
印象としては、推理ドラマを(ぼお~っと)楽しむとしたら面白いが、私のような“ひねくれ者”があら捜しをすると、登場人物の心情や行動が不自然、偶然に頼ることが多いように思える。
今話も、その傾向が強かったように思う。
★登場人物の心情や行動の不自然さ
☆謎のヒーロー(青年・竜也)の行動
・弁護士・麗子に近づいて、彼女のことを探りたいのなら、あの場から立ち去るのは、火事の時に殺意(敵意)を持って近づいたという後ろめたさがあったとしても、妙。
・上記の件は良いとしても、風呂屋で右京たちに呼びかけられた時に、これ幸いに麗子に紹介してもらうほうが、あとで電話を掛けて名乗り出るより、はるかに自然。
これは右京たちを事件(麗子と竜也の関わり合い)に絡ませるためで、かなりの強引さを感じる。
☆中途半端な女性弁護士・麗子
過去のクルーズ船事故の真実を隠ぺいしたが、それは、真実が明らかになると事故を起こした会社が倒産してしまい、そうなると、被害者遺族たちが事故の損害賠償を受け取れなくなるという理由。
旅行会社は保険に入っていたかもしれないし、そうでなくても、真実を明らかにして、経営破たんしない範囲でできるだけの賠償金を出させる方が、誠意のある対応だと思う。「会社が支払う賠償金を最小限にとどめた」という事実は、被害者遺族にとっては“悪徳弁護士”に他ならない。
☆糾弾しない右京
今回の殺人を引き起こしたのは、クルーズ事故の真相を隠ぺいしたこと。
この点について、右京が麗子を糾弾しないのはおかしい。
☆理解に苦しむ船長の自殺
自分の愛する海・船を使って、しかも、他の人を巻き込んでの自殺なんて考えられない。
残された家族(妻)は、被害者遺族に責められるだろうし。
☆轟さんは殺されなければならなかったのか?……不可解な真犯人の殺人
社長に説得されて、船長の自殺の意思を隠ぺいした轟。確かに、部長に昇進するなどおいしい目にあっていたが、慰霊祭の彼は本当に悔いており、その様子を真犯人も目撃していたはず。
恨みはあったとは思うが、殺さなければならなかったのだろうか?
恨む対象なら、船長か社長が一番のはず。轟や麗子がターゲットになり、社長が狙われなかったのはおかしい。
美談で済ませてしまった。
★右京の言葉をそっくり返してあげたい『相棒』によくある偶然
「竜也君があなたを助け、その竜也君がたまたま軟派した女の子に聞いて掛けた番号が殺された轟さんの番号だった。そして轟さんの会社が起こしたクルーズ船事故の弁護を担当したのがたまたまあなただった。
この偶然が、何とも気になりましてねぇ」
という右京の問いかけに対し、
「そんな偶然、いくらでもありますよ」
と、麗子は一笑。
そう、相棒にはよくある偶然だ。
現に、竜也が麗子に近づいたとき、たまたま火事が起こり、その火事の付近にたまたま右京たちがうなぎを食べに来ていて、“竜也が火事の件を知らないふりをした”と報告を麗子にしたとき、たまたま竜也から電話がかかってきた。
確かに、よくある偶然だ。
★『相棒』としての物足りなさ……推理がなかったような気がするが
証言の不自然さに着目したぐらい(これも推理と呼ぶのは抵抗がある)で、ほとんどは想像だけ。
評価できるのは、享の調査(過去の事件と社長が経営する2つの会社について)と、クルーズ事故の被害者と今回の事件の関係者の共通人物を発見したぐらい。
もしかしたら、携帯の電源が切られていて追跡不能であったが、車両の盗難防止システムを利用するという機転を利かせた米沢さんが今回の真の「ヒーロー」だったのかもしれない。
★突っ込みどころも多い
・“煙にまかれそうになった女性を救い、名も告げずに立ち去った”というのは美談かもしれないが、本記事も「小火(ぼや)」にしては記事の扱いが大きいし、美談記事も助けられた弁護士の顔写真を載せるというのは不自然。
美談で大々的に扱うのなら、火の海の中に飛び込んだぐらいでないと。
・竜也はいつも先頭のタオルを持ち歩いているのだろうか?
・3年前の給料明細を取っておくものなのか?しかも、右京に見つけてくれとばかりの場所に置いておくとは!
・同じく、3年前の旅行ガイドブックを、これ見よがしに本立てに入れておくのも不自然。
・タイトルの「ヒーロー」にも違和感。「恩人」が妥当か。
【ストーリー】番組サイトより
右京(水谷豊)と享(成宮寛貴)は昼食後偶然、ビル火災の現場に出くわし救出作業に加わる。上の階で煙の中にいた女性を一人の青年が抱きかかえながら階段を降りてきて救出。救出されたのは弁護士の麗子(松尾れい子)。しかし、助けた青年はその場から姿を消してしまう。
麗子から助けた青年を探すよう頼まれた右京らは、現場に残された手がかりからその青年を見つけるが、自分は助けた覚えなどないと言って逃げるように去っていく。なぜ彼は人助けをしたことを認めようとしないのだろうか?
新聞で弁護士を救った「謎のヒーロー」と報道される中、右京と享は麗子に状況を報告するが、そこへ青年本人から名乗り出る電話が入った。電話をかけてきたのは竜也(岸田タツヤ)と名乗る男性。
竜也のアパートへ向かうと、捜査一課の伊丹(川原和久)らと鉢合わせ。伊丹らは殺害されたIT企業の経営企画部長・轟(大内厚雄)の携帯の最後の着信が竜也からだったから事情を聞きにきたというのだ…。
弁護士の麗子を助けた人物だと名乗り出た直後に殺人事件への関与を疑われるこの偶然性に不審を抱く右京。
竜也はヒーローなのか、それとも殺人に関与する人物なのか?
ゲスト:岸田タツヤ、松尾れい子
脚本:金井寛
監督:田村孝蔵
「乗客巻き添えにして自殺した」
とは普通考えないでしょう。他に何かそれを疑わせる材料が提示されていましたかね?
「過労を原因とする事故の可能性が高い」
というのが普通の感覚だと思うのですよ。勿論そうだとしても隠蔽を試みるのだろうから、ストーリーを特別変更する必要はないと思いますが。
>「乗客巻き添えにして自殺した」
とは普通考えないでしょう。他に何かそれを疑わせる材料が提示されていましたかね?
この辺り、私も見逃したかもしれません。とにかく、「自殺説」は強引だと感じました。
船長の心情が重要なのに、深く考えてなかったように思います。そのうえ、弁護士の中途半端な正義を讃えるような描き方。
低空飛行を続けるここ2シーズンでも、1,2を争う不出来さでした。(最低は「顔」かな)
そんなにリアリティー求めるならドラマは見ない方がいい
エンターテイメントなんだから
確かに「うるさい」と感じるようなことを書いていると思います。
昔のクオリティを期待してしまい、ついつい書いてしまいます。でも、『相棒』に限らず、「昔の方が面白かった」と感じるのは、錯覚もあるのかもしれませんね。(と書きましたが、正直に言うと“錯覚は2割ぐらい”と思っています)
まあ、うるさい奴がいるなあと見逃してください。
それにしても、3年前の記事のコメントというのは、少々驚きです。