英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2024王位戦 第1局 藤井王位-渡辺九段 その3

2024-07-10 15:04:43 | 将棋
「その1」「その2」


 互角で難解な局面。
 図以下、△3七歩成▲同銀△2七飛成▲2八金△2五龍▲3三歩成△同金▲2六歩△7五龍▲7六歩△同龍▲5六桂△5五角▲4六銀打△8六歩と進み第6図。
 上記手順で△3七歩成や△2七飛成に対し手抜きで▲3三歩成と切り合う手も有力だったが、渡辺九段は自陣に禍根を残さないよう▲3七同銀△2七飛成▲2八金と応じる(最善の手順)。
 対して龍の引き場所や▲3三歩成の取り方が最善ではなかったようだ。
 この後の▲2六歩△7五龍▲7六歩△同龍▲5六桂△5五角▲4六銀打と渡辺九段は最善手を続ける。対する藤井王位の△7六同飛は△8四飛が正着だったらしく、"渡辺有利”がはっきりしてきた
 しかし、形勢とは逆に残り時間は、56手目△6四歩(考慮時間1分で残り9分)から、藤井王位は時間を消費せず、72手目△5五角に1分消費しただけで残り時間は8分と減らない。対する渡辺九段はこの間、残り61分から残り25分(△8六歩の局面)までに減らしている。
 藤井王位は残り時間を減らさないよう60秒未満で頭脳をフル回転し形勢を大きく損なわない指し続けた。この1分以内でビシビシ指してくる藤井王位に渡辺九段は大きな圧力を感じていたのではないだろうか?形勢は有利を拡大していたが、「あまり前進している気がしなかった」と局後の感想戦で漏らしていた(by棋譜中継)

 ▲4六銀打に藤井王位は2分消費して△8六歩。

 この△8六歩は利かしておきたい歩の合わせ。「△4六同角▲同銀△8六歩だと▲8五角で間に合わないが、先に歩を合わせて▲8六同歩を強要しておけば、以下△4六角▲同銀に△8六竜で間に合う」(by棋譜中継)。しかし、手抜きで▲5五銀と角を取られてしまう心配がある(実際、手抜きで▲5五銀が正着)。勝負を懸けた一着だ。
 渡辺九段は1分で▲8六同歩。以下△4六角▲同銀△8六龍となり、藤井王位の意が通った。ただし、渡辺九段は優勢を拡大するチャンスを逃しただけで、"有利”状態はその前の▲4六銀打の時とほとんど同じ。


 ここで▲8七歩△8三龍▲同馬△同角と進めるのが普通で、それが最善だった。
 しかし、先に8筋の歩の合わせを利かされ、△8六龍とされてしまった流れから、そう進めるのは藤井王位の意図した流れとなってしまう。そこで、▲6四桂△6三角を利かせ、さらに▲3四歩(第8図)△3二金も利かせる。

 ▲3四歩の利かしの損得は微妙。この手に渡辺九段は15分を消費し、残り時間が5分となってしまった(藤井王位は6分)。
 局後の感想によると、《利かしが得か損か》で悩んだのではなく、《△3四同金と応じられる手を心配した》らしい。「△3四同金には▲8三角△5一金に▲5六角成が手厚く大丈夫だと気がつくのに15分を要してしまった。△3二金と引いてくれるのなら、すぐ打つんだった。時間を損してしまった」(←解説の鈴木九段の伝聞)
 とにかく、細心の注意を払い、さらに▲8三角△5一金を利かせて、懸案の▲8七歩を打ったが……

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