Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

番外編578. スキニーな女達

2023年02月28日 | field work

 YouTubeを見ていると、今の時代の人間の関心の置き所が見えるようだ。
 その一つはイベント志向。大なり小なり面白ければよく、突発的ではないにしてもキャッチコピーで聴視者をつり、演出も演技も舞台も選び・・・、といった具合に手間をかけ、数百万回といったアクセスの映像が多い。
 意外だったのは、YouTubeで「森山大道 犬の記憶、写真への旅」のアクセス数が1491回(2023年1月1日時点)だ。あら、ニューヨーク近代美術館に写真が買い取られるほど世界的著名なフォトグラファーのアクセス数が、そんなもん!、という事だった。だが森山大道さんの静止画は今見てもとても魅力的だ。しかし彼の作品は、家庭のペット程には人々の関心をよばない世界なんだろう。
 つまり自分の感性で物事をみたり、評価したり、選んだりすることをせず、他人の意見や紹介で右往左往するのが現代人の特性・・・!?。自分の感性で選べなければ撮影もできないと思うが・・・。
 感性の訓練にはフイルム機材がよく合い、いまだに必要とされる機材だ。今日は過去のフィルム画像のなかからスキニーな女達をテーマに編集。モニター画面横一杯に広げられる1024dpiの高画質画像でアップさせた。フィルムはすべてトライX-400である。
 トップは横浜市外人墓地(1996年夏)。デジタルではないので手書きで添えたメモをみるとPENTAX ME+タクマー120mmとある。それは会社のゴミ処分品に混じっていた壊れた機材を私が取り出し、自前で修理し蘇らせた機材だ。小さくとても使いやすい機材だった。

 横浜駅北口(1997年6月)。この一角だけ妙に混沌としている空間だった。スキニーな女の子の後ろを歩けば、なんか撮れるだろうとついていった。そう女の子を見ている、あるいは目をそらした男達の目線だった。データをみるとミノルタ(今のSONY)CLE+Leitz ELmarit28mm。往事のライツ明鏡玉!。モノクロでは惚れ惚れとするトーンであり、今でも大変綺麗な描写をする。

 下北沢駅(1997年夏)。私鉄沿線は面白い街が数多い。女の子が私の前を歩いている。広角レンズだから女の子のアップは無理。あのボディをいれて街を取ろうと構えていたら、男の子のオオッ!という好奇心目線と、無視する女の子目線が写っていた。コンタックス・スリムTというコンパクトカメラ、これヨドバシカメラのポイントで調達したタダ同然の機材だった。

 茨城県(1996年1月)。ニコンF4のボディにロシア製1000mmのレンズを付けていた。しかし被写体がない。夕方三脚に載せた機材をパンさせていたら、偶然女の子が住む古いアパートの窓・・・。そしたら突然着替えだした。なにしろレンズがロシア製という曲者だからスキャンダラスな被写体に向くのだろう。こんなショットが撮れたのは後にも先にもこの時だけである。というのもロシア製レンズは1000mmで撮影できる被写体がなく、持て余し早々に消えていった。被写体の大腿四頭筋群のボリュームから察すると、至極標準体型の女の子だ。

 東京蒲田(1997年7月)。JR蒲田駅前は、狭隘で賑やかなアーケードにビルや人家が狭い空間に密集している面白いところだ。だから私は何回も通った。この駅の反対側をしばらくゆくとフォトグラファーの金村修さんの写真集の表紙に使われた自転車置き場がある。その撮影現場にゆくと彼はガートレールに立ち上がって撮影していたんだという事までわかる。ミノルタCLEにライツ・エルマリート28mm。このシステムは街歩きの最高の機能を発揮してくれた。そしてCLEは電子部品が壊れ早々に動かなくなった。最高の街歩き機材だっただけに残念。いまにこれ以上のシステムというとコーGR3とか、ボリューム感が似ているSONYα6000かなぁー。

 メモには石川町・関内(1997年6月)とある。しかもライツM4-Pにヘクトール135mmをつけて撮影しているが、どこから撮影したかがわからない。長靴が干してあるから民家越しに見ていたのだろう。多分フェリス女学院に通うスキニーな女!。格好いいよね!!。

 過去画像を編集してみると、フィルムによる静止画も美しい。今でも街歩きにはフィルムがよく合うと思われる。これらの写真は狙って撮影したわけではなく、むしろ街の空気に押されてシャッターを押していた。結果として面白い写真になっていた。
 じゃあ小さなフィルム機材で再トライと思ったら、既にコンタックスT3は高価に引き取られて手元にない・・・。ミノルタCLEがいまだにWEBサイトに10万円前後である。電子部品が寿命を過ぎているので手を出すのは疑問だが・・・。
 それでもかっては森山大道さんが言うように100m歩いてフィルムを1本使ったなどという程に、被写体が街にあふれていた。そんな街が今は次第になくなりつつあるか、既にないこともある。だがトライしたい世界でもある。ただしフィルム代はすこぶる高いが・・・。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする