福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

ウッズホール海洋生物学研究所(MBL)

2009-06-30 09:11:21 | 学問

米国マサチューセッツ州ボストン。ここに訪れる機会があれば、是非とも立ち寄ってみたい場所があります。それは、ウッズホール海洋生物学研究所です。

以前に、大学院生の小泉さんと小島さんと一緒にボストンへ訪れたことがあります(2001年2月末のこと)。

ボストンの街です。

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ボストンからボナンザバスに乗って1時間半で、ケープコッドのウッズホールに到着。

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ここが、ウッズホール海洋生物学研究所

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研究所に隣接したイールポンド(鰻池)。汽水の池で、多様な微生物の宝庫です。

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さあ、Andreas Teskeとともに試料採取です。

Teske

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宿に戻り、Andreas Tekeから頂いた、ウッズホール海洋研究所(WHOI)の小冊子を紐解いてみましょう。表紙は、熱水噴出口における微生物学研究パイオニアであるHolger Jannasch先生です。

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Jannaschteske

ボストンに学会等があって、1日お時間が取れるようでしたら、是非どうぞ! ちなみに、MBL留学記も大変に参考になりますよ。

<追記>
KKさんへ

MBLの玄関に入ったら、下記の『The last one to go』をご覧下さい。

The_last_one_to_go


これに関しては、井筒ゆみさんが書かれたものがご参考になるかと思います。

井筒ゆみ 

「オタマジャクシの尾はなぜ消える? 免疫学の視点から」 
ミクロスコピア 2006年夏 23巻2号


おたぽっぽ再考

2009-06-29 21:51:38 | 日記・エッセイ・コラム

歩センセイに作っていただいた「おたぽっぽのオイル漬け」ですが、その後、身近な北海道育ちの方々と話題になりました。

低温研の北海道人によると、チカの方言として、「おたぽっぽ」はあまり使わないらしい。実際に、北海道のどの地方で使われているのか、不明です。

また、「なまら~」と言う表現は、限られた人たちによるものらしい。ごくごく、普通の日常会話では、あまり使われないとのことです。

それから種明かしですが、「今日も北海道弁でナイスデイ」というエントリータイトルは、新潟放送(BSN)のラジオ番組「今日も新潟弁でナイスデイ」のパクリです。このラジオ番組で強調している点は、下記の通り。

「尚、このコーナーで紹介している言葉は、主に新潟市とその周辺で使われている方言ですがそれでも、世代や地域によって、使い方、解釈、発音、アクセントなどに微妙な違いがある事を御了承下さい。」

なるほど、方言とはいろいろなバリエーションがあり、その地方のネーティブスピーカーにはかないません。この番組の、新潟市沼垂(ぬったり)出身の「やまもとさん」が話す新潟弁を聴いて、肺腑から笑えるということは、私もまぎれもなく新潟人であること証明しているようなものです。

そう言えば、こんな歌もあります。「名古屋はええよ! やっとかめ」。

インパクトのある歌詞ですね。名古屋弁を知らない私たちにも、笑えます。「やっとかめ(八十日目)」は、「久しぶり」と言う意味の名古屋弁だそうです。

「おたぽっぽのオイル漬けが、ばっか、うんめてば! やっとかめ」 う~む、こんなことを言っている人はいないか。

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研究室には、方々の地方から人が集まり、コンパ等でそれぞれのお国自慢をお聞きするのも楽しみの一つです。


「共同利用・共同研究拠点」の認定

2009-06-28 17:09:05 | 低温研のことごと

低温科学研究所は、6月25日付けで、文部科学大臣による「共同利用・共同研究拠点」の認定を受けました。認定期間は、平成22年4月1日より平成28年3月31日までの6年間。

「共同利用・共同研究拠点」とは、個々の大学の枠を超えて、大型の研究設備や大量の資料・データ等を全国の研究者が共同で利用したり、共同研究を行うための拠点(たとえば、大学の附置研究所や研究センター)のことです。

低温研の拠点名は「低温科学研究拠点」で、その研究分野は「低温科学」です。今後一層、共同利用・共同研究拠点としての役割が期待されています。


光合成と化学合成

2009-06-23 21:40:16 | 低温研のことごと

光のエネルギーを利用して二酸化炭素を固定する光合成は、「光独立栄養」とも呼ばれています。一方、化学エネルギーを利用して二酸化炭素を固定することを「化学独立栄養」と呼んでいます。

隣の研究室は、光合成研究を盛んに行っていますが、私たちの研究室では、硫黄、メタン、鉄などを利用する「化学独立栄養」微生物がメインターゲット。両研究室は、盛んな交流があります。

今日は、となりのトトロ、いえいえ、となりの高林厚史先生の誕生会。手作りケーキでお祝いです。

高林先生、おめでとうございます。

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さあ、○○本のロウソクを消してください。

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そして、ケーキ入刀。人数分をキッチリとカット。

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3種類のケーキを用意いたしました。

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今回は、高林先生が『うなぎのじゅもん』のふるさとのご出身と言うことで、抹茶クリームのケーキにみかんをトッピングしてあります。そう言えば、みかんの産地でもありましたね。う~ん、なるほどねえ、大学院生の皆さんの心遣いが憎いですね。それにしても、この色、緑色硫黄光合成細菌やシアノバクテリアの色に似ていますね。みかんがクロロフレキサスか? クリーム色のスポンジは、硫黄酸化細菌か?

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今でも良く想い出しますが、前の大学でも、隣の研究室は光合成研究を中心に行っています。みなさん、お元気でしょうか? 紅色硫黄光合成細菌、緑色硫黄光合成細菌、それに原始的な光合成細菌。硫黄が繋ぐご縁ですね。


職業病

2009-06-22 17:11:01 | 大学院時代をどう過ごすか

今朝、朝食準備中の時のこと。床に置いてあったものを取ろうとした瞬間、腰に電光のごとくズキッと痛みが走る。目の前は閃光。そうです、ギックリ腰です。ああああああ。年に1回はやってくる、厄介な病です。

南極観測尾瀬調査高山湖沼調査では、腰を酷使してしたにもかかわらず、ギックリ腰にならなかったのは幸いです。

しかし、苦い思いでもあります。琵琶湖調査の時のこと。調査船はっけん号に乗船し、琵琶湖の北湖、しかも水深が90mの早崎沖で湖底泥をエックマンバージ式採泥器で採取作業中にひどいギックリ腰になったことがあります。揺れる船上で90mの深さから泥をロープで引き上げるのですから、腰に負荷がかからないわけがありません。これも、ある種の職業病です。

その調査では、ほとんど役に立たないデクノボウ状態になってしまいました。幸い、パワフルな大学院生と一緒でしたので、残りの調査を彼がすべてやってくれました。

前にもご紹介しましたが、微生物の調査は試料採取後速やかに研究室に戻って、試料の処理をしなければなりません。さもないと、活発な微生物活動により、採取時の状態を保てないからです。現場の、その時の微生物の生態像を明らかにするためには、素早く、微生物活動を抑えて、核酸の抽出、pH、酸化還元電位、温度、酸素濃度、栄養塩濃度、有機物濃度、無機物濃度、微生物活性速度等を測定しなければなりません。

琵琶湖調査では、下船後、徒歩でJR大津駅へ向かい、JR在来線で京都駅、新幹線で新横浜駅、JR横浜線で橋本駅、京王線で南大沢駅、そして、徒歩で大学の研究室へ。とまあ、大変な道のりです。おまけに採取した底泥コア試料を冷やしながら持ち運ばなければなりません。さらに、追い討ちをかけるのは、横浜線に乗車する頃は、通勤ラッシュです。こんな時にギックリ腰を患ってしまったのなら、、、。想像してみてください。

今日から2名の大学院生が山梨県へ湖沼調査に出かけています。大学院生の調査は、研究室に無事に戻るまでは、心配で心配でたまりません。現場調査は、かなりハードですので、事故がなく、怪我のないように注意して欲しいものです。

大学院生のAさんとBさん、無事に帰ってきてくださいね!

あ、いたたたたああ。寝返りを打つことさえできない痛さです。ブログなんて書いていないで、ギックリ腰治癒につとめます。


今日も北海道弁でナイスデイ(1)

2009-06-20 16:31:14 | 低温研のことごと

「おたぽっぽ」

北海道弁ですが、この言葉の意味が想像つきますでしょうか? 私には、全くお手上げ状態です。

「おたぽっぽ」は、魚の「チカ」のことです。キュウリウオ科ワカサギ属の魚で、ワカサギに似ているとのこと。ワカサギとの見分け方は、尾びれと尻びれの位置関係。チカは、背びれの前方端が尻ビレのそれに比べて前方に位置している。一方、ワカサギはその逆とのこと。

3月から6月にかけて北海道の砂地の沿岸で良く釣れるらしい。ということは、隣の研究室の歩センセイも、、、、、

本州の人には馴染みのない魚ですが、ワカサギ同様に天ぷらにしていただくと美味しいとのこと。

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しかし、低温研のお勧めレシピは、やはり、「チカのオイル漬け」です。

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オイル漬けされたチカのシッポを親指と人差し指でつまみ上げ、顔を天に向かいながら、垂直方向にチカを口の中に入れよう! 口の中に入れる前にオイルが滴り落ちて、頬に落下することもありますが、食べた瞬間、

 「おたぽっぽのオイル漬け、ナマラうんめえ~」

と叫んでしまうでしょう。標準語では、「チカのオイル漬けは、本当に美味しいねえ」の意です。

さあ、皆さんも声を出して、練習してみてください。ちょっと高めの声で発音するのがコツですよ。

 「おたぽっぽのオイル漬け、ナマラうんめえ~」

はい、「今日も北海道弁でナイスデー」は、この辺で。ではまた、どこかでお会いいたしましょう。


生物環境部門フィッシュ・バーベキュー・パーティー

2009-06-19 10:00:03 | 低温研のことごと

もうすぐ夏至(21日)。日が長くなりましたね。

昨年10月1日の低温科学研究所改組で発足した、生物環境部門。部門内の交流促進を図るため、フィッシュ・バーベキュー・パーティーを開催(昨日)。

部門内の若手を中心に準備、企画、運営。一方、シニアなスタッフも隠し球を用意!さあ、スタートです。

部門主任の、歩先生から開会の挨拶と隠し球の紹介です。

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さあ、さあ、肉を焼きましょう!

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どの肉から焼こうか?

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うーん、煙がしみる~。

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結構、豪華ですね。このホッケは、どうしたの? それは、釣り名人・歩先生の収穫物です!

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研究室のホームページ係は、写真撮影に大忙しです。 

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この写真はいい出来だねえ。早速、明日にでもホームページにアップしようね。

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歩先生の手作り「チカのオイル漬け」。これが絶品! トシちゃんにも食べて欲しかったなあ~。

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そして、歩センセイが小樽でつり上げた魚の天ぷらです。

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余分な油をとって、さあ、召し上がれ~。カリッと揚がり、熱々でマイウ~(ちょっと、古いか?)。

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おっとっと~。話に夢中になって、バーベキューが「ファイヤー」状態になっていますよ!

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楽しい時間はあっという間に過ぎ、辺りは暗くなってきました。オナカを十分に満たしたお子様たちのためにイベントスタート! さあ、花火大会だよ。

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夜は更けても、さらに増す交流。

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とても楽しく、素晴らしい部門バーベキューパーティーでした。大学院生の所属としては、生命科学院と環境科学院に別れていますが、こうした機会で、互いの研究を紹介し合い、その中から、共同研究が生まれるかもしれません。

企画、準備、運営、後片付け等、部門の皆様には感謝いたします。


基本のマスター

2009-06-18 08:21:13 | 大学院時代をどう過ごすか

地球化学、安定同位体学、分析化学、有機化学、無機化学、物理化学、熱力学、陸水学、海洋学、大気科学、地質学、分子生物学、遺伝学、ゲノム学、進化系統学、土壌学、雪氷学、低温研学、、、、

微生物生態学は、微生物を通して自然界の現象を解明する総合科学でもある。そのため、身につけておきたい周辺分野は広い。

年々学問レベルが高くなっている微生物生態学。だからこそ、しっかりと身につけておきたい基本は、やはり、生態学である。せめて、下記の入門書くらいは読破し、生態学の基本概念を脳裏に定着させておこう。

日本生態学会編. 生態学入門. 東京化学同人. 2004
ISBN4-8079-0598-8(2,800円+税)

ということで、福井学からは学ぶものなし。すみません、言い過ぎですね。「相互学習」の精神は、良いかも知れません。大学院生同士で、英文教科書の輪読会を行い、相互学習と言う方法もありますね。

Eugene L. Madsen.

Environmental Microbiology: From genomes to biogeochemistry.

Blackwell Publishing. 2008.

ISBN 978-1-4051-3647-1


ネタ仕込み中

2009-06-17 00:19:06 | 研究

とりあえず、報告。

小島さんの論文が公表されました。山梨県みずがき湖でのメタン酸化細菌に関するもので、山梨大学の岩田智也さんとの共同研究です。

Hisaya Kojima, Tomoya Iwata and Manabu Fukui.
DNA-based analysis of planktonic methanotrophs in a stratified lake.
Freshwater Biology 54: 1501-1509. 2009.
doi:10.111/j.1365-2427.2009.02199.x

それから、学術研究員の東岡由里子さんの論文も公表されました。石狩油田及び厚田油田の汚染土壌での石油分解細菌に関するもので、産業技術総合研究所の佐藤信也さんとの共同研究です。

Yuriko Higashioka, Hisaya Kojima, Shinya Sato and Manabu Fukui.
Microbial community analysis at crude oil-contaminated soils targeting the 16S ribosomal RNA, xylM, C23O, and bcr genes.
Journal of Applied Microbiology 107: 126-135. 2009.
doi: 10.1111/j.1365-2672.2009.04198.x

上記論文内容を紹介する、ネタを仕込み中ですので、エントリーが完成次第アップいたします。今のところ、東岡さんの論文を紹介するエントリータイトルは、『油にまみれて幾歳月』です。

小島さんの方は、『安定同位体研究との組み合わせが研究の成否を決メタンだね』。う~ん、ださくて、さむ~いタイトルかも。


学術雑誌掲載論文ができあがるまで

2009-06-16 21:21:10 | 大学院時代をどう過ごすか

大学院博士課程の1年生だった頃のこと。思い入れのある研究を大学の紀要に論文として発表したことがある。その別刷が手もとに届き、ちょっと誇らしげに、となりに研究室のS先生に謹呈すると、予想外の返事が返ってきた。

「ノーカウントだね。大学の紀要などに論文を発表しても、研究業績としてはカウントされないんだよ。研究者を目指すのならば、君たちは、査読付きの国際学術雑誌に投稿しなくてはならない!」

この一言は、憮然とさせるものであった。S先生への強い反発を覚えたのも確かであった。しかし、これは正論である。

北海道大学大学院環境科学院生物圏科学専攻では、博士(環境科学)の学位を取得するための最低限の条件として、「学術雑誌への掲載論文1報」をあげている。学術雑誌と言っても、いろいろで、国内雑誌もあれば海外の国際誌もある。できれば、当該分野のトップレベルの学術雑誌掲載を目指したい。分野にもよるが、微生物生態学分野は年々レベルが上がってきている。正直なところ、大学院博士課程の3年間でトップレベルの学術雑誌(たとえば、Environmental Microbiology)に掲載される論文にいたるには相当の努力を要する。最近の論文には、より確実で深い情報、そして、より多角的なアプローチが求められていることも確かである。

ただし、論文を書くことが目的となってはいけない。「何かを知りたい、何かを明らかにしたい」(知的好奇心)が基本で、その研究の結果を学術雑誌に論文として、発表し、第3者からの評価を受ける。この精神を絶対に忘れてはならないし、本末転倒なことになってはならない。

さて、近頃の微生物生態学分野の学術論文の審査事情を紹介しよう。学術雑誌の投稿規定に従い、論文(manuscript)をまとめあげたら、指示通りにウェブ(web)投稿する。そして、直ぐに、編集委員長(Editor-in-Chief)から電子メールで受付通知(receive)が届く。私が大学院生の頃は、オリジナル原稿と2部のコピーを添えて、編集委員長(Editor-in-Chief)へ航空便かEMSで郵送だったので、受付通知を受け取るのに2~3週間程度かかった。

論文を受け取った編集委員長は、論文内容から担当編集委員を決め、web上で編集委員に打診。編集委員(Handling Editor)は、査読者(レフェリー)の候補者リストを作成し、まず2名の候補者に査読依頼(すんなりと査読者が決まるとは限らないのが現状で、依頼しても候補者から返事が来なかったり、査読を断ってきたり。この過程で時間を要することもある)。査読を同意した審査員は、web上から投稿論文をダウンロードし、規定の期間内に審査を終え、web上から審査結果をアップロードする。審査期間は約3週間の場合が多いが、大幅に遅れる審査員もいる。この場合、編集委員(Handling Editor)が審査の督促をする場合もあるし、自動的に督促状が送付されることもある。2名以上の審査結果を受けた編集委員(Handling Editor)は、「accept(受理)」、「minor revision(小幅修正)」、「major revision(大幅修正)」あるいは「reject(却下)」の判断を下し、さらに、コメント(confidential comment)を添えて編集委員長へ報告。これを基に、編集委員長は最終的判断を下し、投稿者へメールで通知。

ざっとここまでは、3ヶ月。

私たちの研究室の経験では、投稿した論文が一発で「accept(受理)」されることはほとんどない。おおくは、「minor revision(小幅修正)」、「major revision(大幅修正)」あるいは「reject(却下)」。もし、「minor revision(小幅修正)」であるならば、レフェリーの指摘通りに修正。指摘された点、全てに対応し、どのように修正したのかを文書にする。これらの作業は、おおよそ2、3週間かかるだろうか? 修正を終えたら、再投稿。おおよそ1、2週間程度で「accept(受理)」が届く。

もし、「major revision(大幅修正)」であったら、どうであろうか? 間違いなく、修正は手間ひまかかる。おおよそ、1ヶ月半くらいでだろうか? 場合によっては、追加データを求められる。追加データを得るための実験が必要になるかもしれない。何とか、修正稿を再投稿したとしても、編集委員長は修正稿を編集委員(Handling Editor)へ、編集委員(Handling Editor)は「major revision(大幅修正)」と判定したレフェリーに再審査依頼。上記と同様のプロセスを経て、最終的に「accept(受理)」されれば、一安心。この審査にも、やはり1、2ヶ月を要する。

もし、残念ながら「reject(却下)」になってしまったら、どうしたらよいだろうか? 気を取り直して、一から再スタート。

このように、投稿論文が「accept(受理)」に至るには、おおよそ半年を覚悟しておこう。もし、学位申請日が12月10日であるならば、5月末には投稿していなければならない(これはあくまでもギリギリのライン)。「reject」になって、投稿先変更を検討するなど、早めに準備する必要がある。

「受理」された論文は、すぐ雑誌に掲載されるというわけでなく、数ヶ月~半年間かかる。最近は、雑誌に掲載される前にオンライン上で公表されるケースが増えてきた。雑誌の巻号や頁の入っていない論文のpdfをwebからダウンロードすることが出来るようになった。受理論文の雑誌掲載前後、手もとに論文の別刷が届く。それを手にした瞬間の喜びは、苦労の分だけ嬉しいものである。

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<追記>
そうそう、投稿論文を仕上げるには、どれくらいかかるでしょう? それは、人によりますが、大学院生にとっての最初の論文は大体半年くらいかかるでしょう。 大学院生と教員の間で原稿のやり取りは、平均15回程度と考えておいてください。では、投稿論文に至るまでの結果を得るにはどのくらい時間がかかるのでしょうか? それは、研究テーマ、実験材料の質、実験の腕前、実験投入時間、そして運によるかな?

とまあ、微生物生態学分野のトップレベルの国際雑誌に論文を公表することは、結構ハードルが高いですね。しかし、大学院時代は、研究に専念できます。知的好奇心を満たすような研究を思いっきり行い、その結果として、投稿論文が出来てしまった。そんなふうに大学院時代を過ごすことが出来たなら、どんなに幸せなことでしょうか。

<追記2>
Yasbeeさんのコメントにもありますように、投稿してから受理されるまでに1年半もかかることもあります。と言うことは、12月10日に学位申請するならば、前年の5月末には投稿していないと間に合わない。「半年」と言うのは、うまくいったケースと考えていた方がよいでしょう。さらに、次のポストドクのポジションを狙うのであれば、何をどうすべきかは自ずと見えてきます。


ザ・バースデー・ビュッフェ

2009-06-15 00:19:00 | 研究室紹介

日々、質素に暮らしている、研究室の大学院生たち。年に一度や2度くらい、ちょっとした贅沢をしたくなるもの。例えば、苦労して仕上げた投稿論文が受理された時など、自分で自分にご褒美をあげたい。そんなときに最適な場所が、札幌駅前のデパート最上階レストラン街にある『The Buffet(ザ・ビュッフェ)』。ランチが1,490円、デナーが2,150円で、食べ放題。好きなものを、好きなだけ、思いっきり、どうぞ! でも、食べ過ぎにご注意。

と言うことで、今月の研究室のお誕生会は、『ザ・バースデー・ビュッフェ』。各人一品持ち込み、節約型月例コンパです(実は、先週開催)。今回は趣向を凝らし、ビュッフェスタイルにいたしました。

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各種チャンチャン焼きもあります。

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そして、今回の目玉は、手作り『バースデーケーキ』。Aさんの力作です。

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では、いただきます。

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Bさんへのバースデープレゼントは、プラモ(プラモデルのこと)。休日の昼間に、自宅で制作してみてね。

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Cさんへは、厚手のゴム手袋。危険をともなう手作業の時は、これを装着して、怪我をしないでね。

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今回は、笠原先生が京都の総合地球環境研究所へ出張のため参加できず、残念。次回は、笠原先生の手作り○○○○○を期待しております!

ああ、それにしても、腹クッチェ! プフウ~。


巷では、よさこいソーラン祭り

2009-06-14 00:03:53 | 四季折々

最終日を迎える「よさこいソーラン祭り」。北大キャンパスでも、毎晩練習している学生さんたちを見かける。彼らの衣装は、宇宙服。スケールの大きな踊りが期待できそうですね。

札幌駅前(こちらの人たちは、『札駅(さつえき)』と呼んでいる)は、各地から集まったチームで賑わっています。

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新千歳空港へ向かうフライトでは、よさこいソーラン祭りを宣伝する紙コップ、そして、「札幌農学校」ミルククッキーが楽しめます。

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そう言えば、ビジット・ジャパン・キャンペーンのロゴマーク「YOKOSO! JAPAN」を見かける度に、「よさこい、じゃぱん」と読み違えてしまうのは、私だけでしょうか?


流氷への旅(11)

2009-06-13 00:07:35 | 流氷への旅シリーズ

車が流氷研究所に着いたとき、あたりはすでに夜になっていた。この前来た時、丘から夜目にも白く見えた氷原は、いまは氷がとけ、黒一色の闇である。

(中略)

オホーツクの果てにもようやく春の息吹が伝わってきて、人々の気持ちも、どことなく華やいでくるらしい。

(流氷研究所でのコンパが)一時間もすると、みな勝手に歌を歌ったり、議論をしている。議論は学術調査隊のあり方や、教室の研究体制の問題など、かなり堅い話である。紙谷はこの研究所の実質的な責任者だけに、みなに取り囲まれて、次々と話しかけられている。
「その点をはっきりいってやってくださいよ」と一人がいうと、別の男が「断固追求すべきですよ」とテーブルを叩く。どうやら若い研究員たちが紙谷をつきあげているらしい。

美砂はそんな話になると皆目わからない。

(中略)

九時を過ぎた時、藤野が美砂の横にきてささやいた。
「これから飲みに行きます。一緒に行きましょう」
「どこへですか」
「駅の近くの“オホーツク”という飲屋です。そこまで行けば旅館もすぐです」

“オホーツク”という店は、入った左手にスタンドがあり、右手にボックスが四つほど並んでいる。地方のせいか全体にゆったりとして、東京のような狭苦しさはない。

(中略)

座はまた、賑やかになる。もう前のような難しい話はなく、研究途中でのゆかいな失敗談などを話している。酔ってはいても、若い男たちの席はすかっとして気持ちがいい。

(渡辺淳一『流氷への旅』より)

流氷の街紋別で、『オホーツク』という飲み屋を捜してみたのですが、見つからず、残念。しかし、「はまなす通り」って、何だか親しみの持てるネーミングですね。

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そう言えば、『チェンジング・ブルー』の第11章の冒頭に寺田寅彦の言葉が記されています。

   

   科学はやはり不思議を殺すものではなく、
   不思議を生み出すものである。
                 寺田寅彦