福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

流氷への旅(10)

2009-06-11 08:56:10 | 流氷への旅シリーズ

夕暮れとともに寒気が増していた。ただ見ると止まっているようにみえるオホーツクは、その実いっときとして止まっている時がないらしい。
「今夜は紋別に泊まるのですか」
氷原の中程まで来た時、紙谷がきいた。
(美砂曰く)「駅前の小山旅館というところに、泊ることにしました」

(中略)

昨夜、寝る前には、朝早く起きて、流氷の日の出を見るつもりだった。白く輝く氷原の先から朝日が昇ってくる。その時、蒼い海はどのように輝き、氷原に浅く積もった雪はどのように染まるのか。美砂は、昨夜、それを想像しながら眠った。

(中略)

昨日、流氷研究所を教えてくれた丸顔の女中が入ってきた。
「流氷研究所はいかがでしたか?」
「とても楽しかったわ」
一瞬、女中は不思議そうに美砂を見た。流氷研究所を見て、楽しいというのは、わからないと言った表情である。たしかに、研究所は楽しいというより、素晴らしいとか、感心した、とでもいうべきところなのかもしれない。

ただ、美砂は本当に楽しかったのだから仕方がない。

(渡辺淳一『流氷への旅』より)

既に紋別駅はなく、現在は、道の駅になっています。駅周辺で小山旅館を探してみましたが、残念ながら見つからず。道の駅近くの「あんどう」と言うレストランに入り、その旅館の所在地をマスターに訊ねてみました。旅館はレストランから歩いて数分のところにあるとのこと。

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早速、その地を訪れてみました。しかし、すでに建物は取り壊され、空き地になっていました。まさに、この場所で美砂は泊っていたのです!

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美砂が見た日の出は、どんなだったのでしょうか?

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それにしても、低温研はいつまでも楽しく、そして、活気溢れる、若々しい研究所でありたいですね。