2014年。研究においては実り多き年であったと思います。
何と言っても、1994年から手がけてきた巨大硫黄酸化細菌チオプローカの研究において、大きく飛躍することができました(論文1)。小島さん曰く、「ゲノム解読は研究の新しい出発点ある。硝酸イオン蓄積硫黄酸化細菌は海底に大量に生息し、海洋の窒素などの循環に大きく寄与している。地球上の元素循環を解明するためにも、この巨大硫黄酸化細菌のゲノムを深く読み込みたい」と。本研究の解説等は下記から。
・ 北海道大学プレスリリース
・ サイエンスポータル
・ ハフポスト
・ 科学新聞
私たちは、淡水湖沼で優占する浮遊性硫黄酸化細菌研究においてもトップランナーです(研究論文8)。今年も新たに新種を発見いたしました(研究論文9)。そして、丁寧に完全長ゲノム配列を決定しながら、新しい目の提案もいたしました(研究論文6)。
戦前、湖沼学者吉村信吉博士は、春採湖(北海道釧路市)の湖水中の硫化水素濃度が世界一高いと記載しています。その原因を探るべく、近代的かつ本格的な微生物生態学調査を行った成果も発表いたしました(研究論文7)。冬期、凍結した春採湖において、低温科学研究所の事務職員と技術職員の協力を得て調査。彼らの協力なしでは遂行できませんでした。今なおも春採湖水の最大硫化水素濃度は1 mM以上で、驚異の湖です。
新規微生物ハンターとして不断の努力を重ね、新属新種の発見も続々(研究論文2、3)。
マックスプランク陸生微生物学研究所の嶋盛吾先生(低温科学研究所客員教授)との国際共同研究も着々と進んでいます(研究論文4)。
海外研究者との共同研究で、全く予期していなかった結果が得られました。台湾のダム湖(翡翠水庫)の深層水で脱窒メタン酸化細菌が優占していることを世界で初めて発見いたしました。これは陸水生態学の教科書を塗り替える知見(湖沼生態系の炭素及び窒素循環おける新知見)です。JST(科学技術振興機構)より取材を受けた際の私のコメントは下記の通りです。
「湖の深層水に脱窒メタン酸化細菌がこれほど多かったのには驚いた。この細菌の群集が湖沼の環境保全に重要な役割をしているのは間違いない。湖水の生態系研究の新しい突破口になる。亜熱帯だけでなく、温帯や寒帯の深い湖沼にも、この細菌の群集がいるかどうか、調査したい」
また、脱窒メタン酸化細菌に関する解説等は下記よりご覧頂けます。
・ 北海道大学プレスリリース
・ サイエンスポータル
・ ハフポスト
・ 環境展望台
・ 財経新聞
以上のように、2014年の研究成果をまとめてみましたが、来年も楽しみながら不断の努力をして参ります。これからもよろしくお願いいたします。
<2014年発表論文>
何と言っても、1994年から手がけてきた巨大硫黄酸化細菌チオプローカの研究において、大きく飛躍することができました(論文1)。小島さん曰く、「ゲノム解読は研究の新しい出発点ある。硝酸イオン蓄積硫黄酸化細菌は海底に大量に生息し、海洋の窒素などの循環に大きく寄与している。地球上の元素循環を解明するためにも、この巨大硫黄酸化細菌のゲノムを深く読み込みたい」と。本研究の解説等は下記から。
・ 北海道大学プレスリリース
・ サイエンスポータル
・ ハフポスト
・ 科学新聞
私たちは、淡水湖沼で優占する浮遊性硫黄酸化細菌研究においてもトップランナーです(研究論文8)。今年も新たに新種を発見いたしました(研究論文9)。そして、丁寧に完全長ゲノム配列を決定しながら、新しい目の提案もいたしました(研究論文6)。
戦前、湖沼学者吉村信吉博士は、春採湖(北海道釧路市)の湖水中の硫化水素濃度が世界一高いと記載しています。その原因を探るべく、近代的かつ本格的な微生物生態学調査を行った成果も発表いたしました(研究論文7)。冬期、凍結した春採湖において、低温科学研究所の事務職員と技術職員の協力を得て調査。彼らの協力なしでは遂行できませんでした。今なおも春採湖水の最大硫化水素濃度は1 mM以上で、驚異の湖です。
新規微生物ハンターとして不断の努力を重ね、新属新種の発見も続々(研究論文2、3)。
マックスプランク陸生微生物学研究所の嶋盛吾先生(低温科学研究所客員教授)との国際共同研究も着々と進んでいます(研究論文4)。
海外研究者との共同研究で、全く予期していなかった結果が得られました。台湾のダム湖(翡翠水庫)の深層水で脱窒メタン酸化細菌が優占していることを世界で初めて発見いたしました。これは陸水生態学の教科書を塗り替える知見(湖沼生態系の炭素及び窒素循環おける新知見)です。JST(科学技術振興機構)より取材を受けた際の私のコメントは下記の通りです。
「湖の深層水に脱窒メタン酸化細菌がこれほど多かったのには驚いた。この細菌の群集が湖沼の環境保全に重要な役割をしているのは間違いない。湖水の生態系研究の新しい突破口になる。亜熱帯だけでなく、温帯や寒帯の深い湖沼にも、この細菌の群集がいるかどうか、調査したい」
また、脱窒メタン酸化細菌に関する解説等は下記よりご覧頂けます。
・ 北海道大学プレスリリース
・ サイエンスポータル
・ ハフポスト
・ 環境展望台
・ 財経新聞
以上のように、2014年の研究成果をまとめてみましたが、来年も楽しみながら不断の努力をして参ります。これからもよろしくお願いいたします。
<2014年発表論文>
1. Kojima,H., Ogura,Y., Yamamoto,N., Togashi,T., Mori,H., Watanabe,T., Nemoto,F., Kurokawa,K., Hayashi,T., and Fukui,M. Ecophysiology of Thioploca ingrica as revealed by the complete genome sequence supplemented with proteomic evidence. The ISME Journal : in press.
2. Kojima,H., Tokizawa, R. and Fukui,M. Mizugakiibacter sediminis gen. nov., sp. nov., isolated from a freshwater lake. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology : in press.
3. Watanabe,M., Kojima,H. and Fukui,M. Proposal of Effusibacillus lacus gen. nov., sp. nov. and reclassification of Alicyclobacillus pohliae as Effusibacillus pohliae comb. nov. and Alicyclobacillus consociatus as Effusibacillus consociatus comb. nov.. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 64: in press.
4. Kojima,H., Moll,J., Kahnt,J., Fukui,M. and Shima,S. A reversed genetic approach reveals the coenzyme specificity and the catalytic properties of three enzymes putatively involved in anaerobic oxidation of methane with sulfate. Environmental Microbiology: in press.
5. Kojima,H., Tokizawa,R., Kogure,K., Kobayashi,Y., Itoh,M., Shiah,F-K., Okuda,N. and Fukui,M. Community structure of planktonic methane-oxidizing bacteria in a subtropical reservoir characterized by dominance of phylotype closely related to nitrite reducer. Scientific Reports 4: 5728. DOI: 10.1038/srep05728.
6. Watanabe,T., Kojima,H., and Fukui,M. Complete genomes of freshwater sulfur oxidizers Sulfuricella denitrificans skB26 and Sulfuritalea hydrogenivorans sk43H: Genetic insights into the sulfur oxidation pathway of betaproteobacteria. Systematic and Applied Microbiology 37:387-395.2014.
7. Kubo,K., Kojima,H., and Fukui,M. Vertical distribution of major sulfate-reducing bacteria in a eutrophic shallow meromictic lake. Systematic and Applied Microbiology 37:510-519.2014.
8. Kojima,H., Watanabe,T., Iwata,T. and Fukui,M. Identification of major planktonic sulfur oxidizers in stratified freshwater lake. PLoS ONE : e93877. 2014.
9. Kojima,H. and Fukui,M. Sulfurisoma sediminicola gen. nov., sp. nov., a novel facultative autotroph isolated from a freshwater lake. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 64: 1587-1592. 2014.
2. Kojima,H., Tokizawa, R. and Fukui,M. Mizugakiibacter sediminis gen. nov., sp. nov., isolated from a freshwater lake. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology : in press.
3. Watanabe,M., Kojima,H. and Fukui,M. Proposal of Effusibacillus lacus gen. nov., sp. nov. and reclassification of Alicyclobacillus pohliae as Effusibacillus pohliae comb. nov. and Alicyclobacillus consociatus as Effusibacillus consociatus comb. nov.. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 64: in press.
4. Kojima,H., Moll,J., Kahnt,J., Fukui,M. and Shima,S. A reversed genetic approach reveals the coenzyme specificity and the catalytic properties of three enzymes putatively involved in anaerobic oxidation of methane with sulfate. Environmental Microbiology: in press.
5. Kojima,H., Tokizawa,R., Kogure,K., Kobayashi,Y., Itoh,M., Shiah,F-K., Okuda,N. and Fukui,M. Community structure of planktonic methane-oxidizing bacteria in a subtropical reservoir characterized by dominance of phylotype closely related to nitrite reducer. Scientific Reports 4: 5728. DOI: 10.1038/srep05728.
6. Watanabe,T., Kojima,H., and Fukui,M. Complete genomes of freshwater sulfur oxidizers Sulfuricella denitrificans skB26 and Sulfuritalea hydrogenivorans sk43H: Genetic insights into the sulfur oxidation pathway of betaproteobacteria. Systematic and Applied Microbiology 37:387-395.2014.
7. Kubo,K., Kojima,H., and Fukui,M. Vertical distribution of major sulfate-reducing bacteria in a eutrophic shallow meromictic lake. Systematic and Applied Microbiology 37:510-519.2014.
8. Kojima,H., Watanabe,T., Iwata,T. and Fukui,M. Identification of major planktonic sulfur oxidizers in stratified freshwater lake. PLoS ONE : e93877. 2014.
9. Kojima,H. and Fukui,M. Sulfurisoma sediminicola gen. nov., sp. nov., a novel facultative autotroph isolated from a freshwater lake. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology 64: 1587-1592. 2014.