博士課程2年の堤 正純さんの研究が国際誌に掲載されました。
Tsutsumi M., Kojima H., Uemura S., Ono K., Sumida A., Hara T. and Fukui M. (2009) Structure and activity of soil-inhabiting methanotrophic communities in northern forest of Japan. Soil Biology and Biochemistry 41: 403-408
この研究は、低温研の生物環境部門寒冷域植物生理生態分野との共同研究です。研究内容は、下記の通りです。
メタンは強力な温室効果を持つガスであり、その大気中濃度は気候に対して大きく影響すると考えられている。森林土壌は大気中のメタンを吸収する働きを持っているが、これは土壌中に生息するメタン酸化細菌の活動によるものである。本研究では、植生の異なる地点で森林土壌のメタン吸収能力を測定し、そこにどのようなメタン酸化細菌が生息しているかを比較した。北海道大学雨龍研究林内の4地点において、大気から土壌へのメタン吸収速度を現場で測定した。その結果、林床のササを人為的に除去した区画において他地点より2倍程度高い吸収活性が認められた。実験室に持ち帰った土壌を用いた実験でも同様の結果が得られた。各地点の土壌中に生息するメタン酸化細菌を解析した結果、高木層の植生よりも林床植生の状態(ササの種類および有無)の方が、メタン酸化細菌との関わりが深いことが示唆された。従来、森林でのメタン吸収と植生の関係については専ら樹木に注目した研究がなされてきた。本研究の結果は、メタン吸収量を見積もる際に林床植生を考慮に入れることの必要性を示すものであり、地球規模でのメタン動態を正確に把握し、その気候への影響を予測する上でも重要なものと考えられる。
図1. 調査を行った4地点の様子。右端がササ除去区。
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図2. メタン吸収測定用チャンバー