福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

アガロースあたためますか

2024-07-30 15:35:47 | 研究室紹介
先日の停電時でのこと。アガロース(おおまかに言うと分子生物学研究用の寒天)を加熱して融解させた溶液を用いる実験の最中であった。おおよそ40~50℃が適温。しかし、停電により実験が中断し、アガロースが固まってしまった。

復電後、アガロースを電子レンジで再加熱融解。この後の実験が上手くいきますように!



ふと、北海道でのローカルTV深夜番組「おにぎりあたためますか」を思い出してしまった停電ハプニング。

クールなマイスターとその弟子(その2)

2024-07-19 16:33:02 | 研究室紹介
早朝から実験を行なっていると、突然全館停電。電灯、冷蔵庫、冷凍庫等がシャットダウン。もちろん稼働中の実験装置も然り。非常灯のみが点灯。ふと、2018年9月に発生した胆振東部地震が脳裏に蘇る。マイナス80℃のフリーザーに保存している試料は大丈夫だろうか?

速やかにかつ冷静に対応するハウス・テクニシャン。オフイスをともにしているテクニシャンのAさんは、ラボ内の装置等を点検。10分程度で復電。

復電後、Aさんはラボ内の装置に異常がないかチェックし、奔走する。マイナス80℃のフリーザーにトラブル発生。工具箱の中から必要なギアを取り出し、修理を始める。その手際良さと種々の問題解決能力の高さに感服してしまう。クール!

私の方は、復電後実験の仕切り直し。少し困ったことがあり、お隣の部門のテクニシャンのBさんにご相談。直ちに解決。クール!

嬉しかったので、Bさんと記念撮影。老齢の我が身を晒すのは憚れるので、ボカシを入れる。



ふと、思う。低温科学研究所の技術部職員の方々も極めて優秀。近い将来、両研究所間で技術職員の交流会があっても良いかも、と。

クールなマイスターとその弟子

2024-07-17 05:53:04 | 研究室紹介
彼の地の研究所で長年働いている技術職員は優秀であり、頼りになる存在である。朝6時半にはすでに実験を開始していたりもする。

いつも7時。彼らに挨拶し、心温まる会話を楽しんでから私も実験開始。困ったことがあれば、何でも親切に相談にのってくれるので、常に感謝。

ちょっと頼みごとがあって、技術職員のAさん(私とほぼ同年代?)のもとへ。そこには見習いのBさん(20歳くらい?)も。白衣姿でそのポッケには各種筆記具を用意している姿が初々しい。そのBさんを懇切丁寧、そして徹底した指導しているA さん。クール!



サンデー・パラダイス

2024-07-09 19:07:10 | 研究室紹介
彼の地での日曜日。掃除、洗濯等、やらねばならぬことが多いが、心身ともにリラックスする日でもある。30年以上前、もちろんインターネットが発達していない時代だが、日本からの情報を得るための手段の一つは短波放送。鈍色の空模様が続く北ドイツでは、ラジオ・ジャパンの放送が心を癒してくれたものだ。その時の電離層の状態で、アフリカのガボンで中継されて届く音声がクリアに聴こえたり、ノイズが優って微かにしか聴こえなかったりと。そんな不安定な状態であったとしても、中継された「のど自慢」は郷愁を誘う。

今は便利な時代である。インターネットで多様な情報を手に入れることができる。このところ楽しみにしているのは、YouTube配信の「安住紳一郎の日曜天国」(TBSラジオ)。東京からの生放送が編集されて、その日のうちに配信されている。北海道出身の安住氏が語る地元に関わるエピソードは、札幌在住の我が身には心に染み入る。6月30日の放送で取り上げられた「遠軽・家庭学校」の先生との想い出話(5歳の頃)は胸に刺さるほど印象的であった。

https://www.youtube.com/watch?v=TcydYEZagjc


https://www.youtube.com/watch?v=pnpzpurie8Y

リアルタイムではないが、クリアーな音声で繰り返し聴けるラジオ番組。ついつい何度も聴いてしまう。北海道のことを思い出す「サンデー・パラダイス」。翌日の月曜日からは、「サルサ・パラダイス」へ!



<遠軽ではないが、オホーツクの町の一つ「卯原内」風景(1982年8月撮影)>

愉快なサルサ

2024-07-08 22:46:10 | 研究室紹介
2.0ミリリットルのマイクロチューブに入っている「たいしょく」防止剤に1.0マイクロリットルの「かくさん」染色液を加える。緊張の瞬間でもある。「かくさん」染色液は有害物質だからだ。加えて、粘っこい「たいしょく」防止剤(1,000マイクロリットル)に「かくさん」染色液(1.0マイクロリットル)を混ぜるのだから、難儀だ。



そんな実験を進めていると、背後から音楽が聴こえてきた。振り返るとスペインからの博士研究員Sさん。彼と目が合うと、「サルサなんだけど、迷惑だろうか?」と尋ねられる。「大丈だよ」、と私。見ると、Sさんのスマホから音楽が流れている。

ふと、「おかあさんといっしょ」で流れていた「さるさるさ」を思い出した。

              🎵さる さる さるさるさ🎶

この歌は頭の中から離れにくい。神経を使う実験最中には思い出してはならない歌である。

愉快な「サルサ」S博士。後ろ姿を拝見したが、彼のお尻は赤くなかった、当たり前だが。

北の海で嫌気

2024-07-04 04:28:50 | 研究室紹介
このところ涼しい日が続いている。時折、激しい雨も。低気圧に乗って、久しぶりに北の海へ。どんよりとした空。風もいささか強め。



干潮時、干潟を歩く。水深10cm程、時には膝まで浸かる。ゴカイ、二枚貝、カニ等の巣穴。砂の表面に黄色味がかった茶色の薄い層は、珪藻のバイオマットか?



園芸用シャベルで砂を掘ってみる。すると、黒色の層が広がる。まさに硫酸塩還元細菌が活躍している嫌気(けんき)の世界だ! 



砂の垂直断面を観察すると、ゴカイ等の巣穴周辺は赤茶けている。酸素をたっぷり含んだ海水が巣穴の中を流れている証だ。こうした底生動物と微生物との相互作用も興味深い。



浜辺で椅子にゆっくりと座って、ボーッと何時間でも過ごしてみたい。



しかし、ラボに戻らねば。さあ、小実験開始!



ちなみに、東京湾にも干潟が存在する。東京ディズニーランド近くに三番瀬干潟がある。かつて(四半世紀前)、大学院生だった田渕敬一さん(現・大阪府庁)と有機物の嫌気的分解と微生物に関する研究を行ったことがある。15℃を境に、有機物分解過程が大きく異なることを発見。田渕さんの不断の努力の賜物である。この研究は、私にとって、低温環境での微生物世界を探求するきっかけの一つとなっている。

Keiichi Tabuchi, Hisaya Kojima and Manabu Fukui. Seasonal Changes in Organic Matter Mineralization in a Sublittoral Sediment and Temperature-Driven Decoupling of Key Processes. Microbial Ecology 60: 551-560. 2010. DOI: 10.1007/s00248-010-9659-9 



インドカレー2日目

2024-07-02 17:03:57 | 研究室紹介
20年以上も前のエピソード。青森県の小川原湖へ調査に出かけた時のこと。宿泊は湖畔のコテージを借り、自炊することにした。学部生だったBさんが夕方カレーを作り始めた。夕食はカレーかと思っていたが、実際は別の料理であった。Bさんに尋ねたところ、翌日にカレーとのこと。カレーを一晩寝かすのがBさん流。

インド人の留学生Aさんから頂いたカレー。食べきれなかったので、翌日へ持ち越す。ご飯(インディカ米)も余っていたので、インドカレーリゾットへとアレンジ。和風だしを加えて、コトコトと煮込み、最後に鶏卵を投入。



インドと日本の架け橋のようなテーストに仕上がり、笑みを浮かべながら頂く。



ちなみに、小川原湖で調査を行った結果は下記の論文で。大学院生だった小島久弥博士の苦心作。糸状性硫黄酸化細菌チオプローカ(Thioploca)のシースに付着したバクテリア群集について、小川原湖、琵琶湖、そしてドイツのコンスタンツ湖を比較したもの。研究当時のことが今でも鮮明に思い出される。

Hisaya Kojima, Yoshikazu Koizumi and Manabu Fukui. Community Structure of Bacteria Associated with Sheaths of Freshwater and Brackish Thioploca Species. Microbial Ecology 52: 765-773. 2006. DOI: 10.1007/s00248-006-9127-8 



おたがいさま

2024-07-01 15:57:58 | 研究室紹介
彼の地。比較的慣れた土地でもさまざまなことが起こり得る。

先日、あることで困り果てていたインド人留学生Aさんを助けたことがある。Aさんは2週間前に来たばかりで、初めての海外。そんな状況でのトラブル発生。パニック状態のAさんに助けを求められ、問題を解決。

私の貴重な時間を潰してしまって申し訳なく思っているAさん。そのお礼として、カレーを頂いた。



ベジタリアンカレーにヨーグルトが添えられていた。ヨーグルトも香辛料が入っており、私にとっては新たな味覚の世界。両者を混ぜてみたところ、これはこれで美味。予想に反して辛さ控えめで、日本人の私に配慮したのであろう。





キュウリに添えられていた赤いペースト状のもの。見た目は、「かんずり」(新潟県妙高市で生産されている唐辛子の発酵調味料)に似ている。そして、口の中へ。瞬く間に身体中から汗が噴き出る。こうして、パソコンに向かいながら思い出しただけでも、汗だくになってしまうほどの辛さであった。



Aさんのおもてなしに感謝し、困ったときは「おたがいさま」!