福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

コンスタンツの風

2008-07-28 16:01:47 | 微生物から学ぶ

毎月発行される米国微生物学協会の機関誌『ASM News』の講読は、大きな楽しみの一つです。

ですが、7月号には、ドイツの微生物学者Norbert Pfennig(ノルベルト・ペニッヒ)の訃報が掲載されています。享年82歳。

以前にも、このブログでもご紹介しましたが、私は、大学院博士課程修了後ドイツ留学を考えていて、ペニッヒ先生に手紙が送ったことがあります。いろいろあって、先生に初めてお会いしたのは、1990年秋、コンスタンツで。ちょうど、ペニッヒ先生がコンスタンツ大学を定年退官する時の最終講義です。あれから、もう、18年です。

Widdel先生がお書きになった、ASM Newsの追悼文には、こんなことが記されています。

Unlike many traditional professors, Norbert Pfennig gave an enormous amount of freedom to his scientists and acted more like a colleague, always curious to news.

そして、さらに。

His lectures and courses were characterized by a similar attitude: he did not regard himself as somebody who simply had to transfer knowledge, but to convey the attitude of asking questions, always willing to learn from the microbes.

さてさて、大学院生の皆さんは自由ですか? そして、自然界の微生物から学ぼうとしていますか?

Duckstein080729 余談ですが、当グログのURLにある『desulfonema』は、糸状性硫酸塩還元細菌の学名です。かつて、ペニッヒ先生がゲッチンゲン大学の教員であった頃、研究室のハイキングで、たまたま見つけた微生物がDesulfonemaです。

ペニッヒ先生のご冥福をお祈りいたします。


金曜日のお昼はカレー

2008-07-18 14:10:07 | インポート

南極砕氷艦しらせ乗船中、毎週金曜日のお昼のメニューはカレーライスと決まっています。これは、単調な船内生活で、ある種のスパイスとなっているのでしょうね。

080718 さて、前の大学の卒業生Aさんが研究室を訪ねてくれました。1年半ぶりの再会です。そこで、お昼をご一緒することになり、キャンパス内のファカルティハウス・エンレイソウへ出かけ、クラークカレーをいただきました。

Aさんの卒業後のいろいろをお聞きしていると、微笑ましい限りで、これまでの日々のクラクをともにしたような感覚に襲われました。スパイシーなランチも良いものですね。

またのお越しをお待ちしております、Aさん!


アサガオ

2008-07-14 18:16:58 | 日記・エッセイ・コラム

朝方だけ花開くアサガオ。その咲き様を見ていると、今、生あることに感謝したくなります。そして、今日一日、爽やかに生きようと思うのです。

今朝、大学院の同期だったTの訃報を受ける。朝から、とても、やるせない思いです。

私が入学した頃の東京都立大学の生物学教室は、13の研究室があり、たしか8講座分だったでしょうか。修士入学者は8名。当時も、大学院を修了したからと言って、アカデミックポジションに就くことは困難でした。私の同期では最終的に5名がその職に就き、うち2名が大学、残りの3名が国立研究所です。アカデミック以外の就職として、民間の研究所の研究員、高校の生物教員、そして私立大学の図書館員です。

同期が8名と言う少人数でしたので、事あるごとにコンパで盛り上がりました。サイエンスの議論をしたり、今後の生物学の動向を話し合ったり。時には、人生哲学を語り合ったりと。本当に充実していた時代です。

卒業後はそれぞれの道を歩んでいるので、同期会を開く機会はほとんどありません。年に一度の賀状の交換で、互いの現在を察する程度です。

十数年前に同期のSが突然死。そして、Tは、勤務先の大学へ通勤途上、くも膜下出血で倒れ、帰らぬ人となりました。早すぎます。

Tは、アサガオの花芽が分化していくメカニズムを分子生物学的に解明しようと、情熱的に研究を行ってきました。その研究が半ばで閉じてしまうことになり、さぞかし無念だったと思います。

我が身も明日は研究できない状況に陥るかもしれない。その時が突然やってくるかもしれない。悔いのないように、今できることをやっておきたいものです。

そう言えば、アサガオの花言葉は『明日も爽やかに』とか。


あさいち

2008-07-09 06:45:25 | 食・レシピ

早起きは三文の得。論文執筆は朝に限ります。朝の冴え切った頭脳で、科学論文を毎日書く。この習慣を大学院生の皆さんに是非お勧めしたい。不思議なくらい捗りますよ!

論文を書かなくても良い朝などは、朝市に出かけてみるのも、とても良い気分転換になります。

08070901 見つけました! 朝採りのキュウリ。一盛りで150円。おお、これは買いですね。さて、このキュウリをどう料理しましょうか。


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モヤシをさっと茹でて湯きり。次に、北海道産のでんぷんを使った春雨をゆで08070902 て、適当に切る。ボールにモヤシ、春雨を入れ、ごま油とポン酢をテキトーに加えて和えます。さらに、千切りにしたハムと朝採りキュウリ、そして、カニかまなどを加えて混ぜ、ジプロックに移し、冷蔵庫でソコソコ冷やします。これで出来上がり。メタボ対策には良い食事でしょ!

朝採りキュウリがシャキシャキしていて、とても美味しいです。なんだか、サッポロクラシックが飲みたくなりますね。でも、がまん、ガマン、我慢。


他人の関係

2008-07-08 11:25:46 | 食・レシピ

身の回りの環境、そして地球環境。その保全に関しては他人事ではいられません。

さて、洞爺湖サミット。外国からのお客さまを北海道産の食材で、おもてなしするとか。テレビでデナーの様子が紹介されていましたが、とても美味しそうでしたね。

08070801 08070802 と言うことで、我が家も北海道産の食材をふんだんに使っての晩メシ。北海道産の豚肉、タマネギ、鶏卵を使った他人丼です。食材をダシ醤油でささっと煮込み、とき卵をかけ、そして、きざみ海苔をかけたら、出来上がり。お味噌汁も、北海道産のメークイーンと長ネギです。

パ、パ、パラッ、パッと、今回もとても安上がりで、手早く完成。彩りがイマイチですが、贅沢は禁物です。


もやしだもん

2008-07-04 22:25:00 | 食・レシピ

石川雅之の青年漫画『もやしもん』。その主人公は、微生物の存在を知覚できる能力を有している。すごいなあ。微生物を肉眼で見たり、会話することだって出来るんだそうです。

私たち研究室では、一生懸命話しかけても、忍耐強く働きかけても、その姿を僅かにしかチラチラさせない頑固者の微生物と対峙しています。もっとその素顔を見せてください。お願いします!

さて、さて、朝から会議が続いた日でした。日本微生物生態学会札幌大会のお仕事も加速的に増えています。関係各所へ挨拶に回り、営業活動です。気がつくと、夕方。あっと言う間に一日が終わってしまいます。

08070301 08070303 今晩のおかずは何にしようか? スーパーでは、もやしが200グラムで28円。これは買いですね。帰宅して早速料理。テフロン加工の鍋で、油を使わずに、中華風もやし炒め。そして、ブナシメジをいれた、ふんわり卵スープ。安く、かつ、迅速に夕食が出来上がりました。

おっと、納豆も食べよう。

ネバネバの納豆。蒸かした大豆の表面でBacillus subtilis(納豆菌)たちが整列して、ポリグルタミン酸を生産していますねえ。ワチャ、ワチャー!


初夏のひとこま

2008-07-03 09:38:54 | 教育

洞爺湖サミット開催間近。今回は地球環境保全が中心課題の一つですね。持続可能な社会のために、私たちはなにをすべきでしょう?

さて、今年も大学院環境科学院生物圏科学専攻環境分子生物学・微生物生態学コース提供の『環境分子生物基礎論』がスタート。当研究室からのテーマは『土壌呼吸活性測定と微生物群集構造解析』。

08070201 08070202 青空が広がる北大第2農場。低温研に隣接しています。大学院生のための実習を行う上で、身近にフィールドがあります。

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森林生態系で生産された有機物の大部分は陸上土壌に流入し、微生物の分解を受けます。分解産物である二酸化炭素と水が再び光合成の働きで有機物と酸素に変換されます。これらのプロセスで、土壌中の有機物の分解を『土壌呼吸』と呼ぶことがあります。つまり、微生物が落葉などの有機物を分解する際に、大気中からの酸素を使って二酸化炭素として放出するからです。このエネルギー獲得反応は、私たちヒトと共通しています。

では、低温研の森林で土壌呼吸の活性を測定してみましょう。

08070203 08070204 土壌表面にスタンドを設置し、透明アクリルチャンバーをかぶせましょう。この測定装置は低温研オリジナルで、技術部のスタッフに作成していただきました。至る所に巧みの技が光っているのがわかりますでしょうか?


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08070205_2 スタンドとチャンバーの間からガス成分が逃げないように水でシールしましょう。そして、チャンバー内の二酸化酸素を測定するため、赤外線センサーをセット。ガス成分の測定ですから、現在の気温と気圧を記録しておきましょう。

08070206 さあ、測定開始です。チャンバー内の二酸化炭素濃度が上昇して来ました。時間で割って、速度として計算してみましょう。その際、森林の単位面積当たりの土壌呼吸活性として、算出してみてね。

皆さんが測定した『土壌呼吸活性』からどんなことが考えられるでしょうか?また、土壌1グラムの中にはどれくらいの微生物がいるのでしょう?そして、どんな種類の微生物がいて、どんな働きをしているのでしょう?もし、温暖化が進んだならば、土壌呼吸活性、土壌微生物群集や生産と分解のバランスは、どのように変動するのでしょう?