福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

タンニン

2007-10-30 18:34:43 | 日記・エッセイ・コラム

午後のひととき、紅茶を入れる。じっくり物事を考えたい時は、アッサム系のストレートティーが良い。

あれやこれやと考え、紅茶を口に含む。そして、再び、あれやこれやと。

いつしか、紅茶が冷えきて、白濁する。これを「クリームダウン」と言うのだそうです。紅茶の温度が低下したとき、カフェインとタンニンが結合して結晶化し、白濁するのだそうです(本当か否かはわかりませんが)。

0709先日の昼下がり、紅茶のタンニンが析出し始めた頃、研究室にN君がT君とともに登場。T君もN君も、前任校で担任をした学生。

前任校では、学科の学部生のクラス担任制度をとっている。ひとクラス35名くらい。担任は、履修ガイダンスや最初の生物学基礎実習を担当する。また、一人一人面談。いわば、よろず相談係と言った役目。彼らが、卒業研究で研究室に配属されるまで、担任の役目が続く。

そう言うわけで、タンニンとクラス生とは結構密なコミュケーションが成立する。そのため、私としては、彼らの卒業後の生き様がとても気になります。

N君は、京都大学の理学研究科で魚の生態研究を行っているとのこと。今回来札したのも、学会参加のため。ご活躍の様子で、何よりです。我が身のように嬉しく思います。

T君も北の地で達者で研究に邁進されている様子。素晴らしい。

今回は、時間がなくて懇親会を開催できませんでしたが、今度いらした時は、是非ともどこかでチンデンしながら、お食事を一緒にいたしましょう。

遠いところ足を運んでくださったN君、ありがとう。


雪氷の生態学Snow Ecology

2007-10-26 11:29:00 | 講演会

雪の中で繰り広げられる自然現象や生き物の生活はわかっていないことばかり。

10月26日(金) 10:00から16:00まで、低温科学研究所 新棟3階交流ラウンジにて、研究集会『雪氷の生態学(2)-融雪期の水環境とアカユキの一種、アカシボの発生要因』が開催されました(低温研共同利用研究事業)。

Photo集会の代表は、福原晴夫先生(新潟大学教育人間学部教授)。




*****
内容は、下記の通り。

1. 集会にあたって 福原晴夫(新潟大)
2. 融雪とゆきみち 兒玉 裕二 (北海道大)
3. スバールバル諸島アウストフォンナ氷帽表面積雪における季節融解による無機溶存イオン成分の流出  飯塚芳徳  (北海道大)
4. 尾瀬ヶ原におけるアカシボ発生の概要  福原晴夫 (新潟大)
5. 尾瀬沼におけるアカシボ発生の概要   野原精一 (国立環境研究所)
6. アカシボの化学的特徴 落合正宏(徳島文理大)
7. 彩雪(アカシボ)にかかわる藻類Hemitoma  山本鎔子
8. アカシボの微生物生態学 小島久弥(北海道大) 
10. 南極赤雪現象の微生物生態学 藤井正典(北海道大)
12.トピック1:アカシボ中のヒメミミズ科貧毛類について 鳥居高明(いであ株式会社)
13.トピック2:弘前トンボ池での雪中動物の季節変化 大高明史(弘前大)
14. 総合討論

集会の様子です。
Photo_202_2Photo_3






*****
Photo_6シュフ度の高いEさんの熱弁の様子。
思わず、カチオンが優先的に流れ出しました。

*****

*****

Photo_4山本先生(前明治大教授)の若者へのエンカレッジ、しかと受け止めましたよ!



Photo_5懇親会の様子です。
雪が融けるほどの熱気です。

参加していただいた皆さん、ありがとうございました。


ゲノム微生物学の最前線

2007-10-25 11:01:00 | 講演会

微生物生態学の研究にも、ゲノム解析が必要な時代になりました。

10月25日(木) 13:00から16:00まで、理学部5号館大講堂にて『ゲノム微生物学の最前線』と題する研究集会が開催されました(低温研共同利用事業)。

今回は、笠原康裕先生が主催で、この分野を牽引されておられる3人の先生方にお話をしていただきました。

1. 林 哲也 (宮崎大学フロンティア科学実験総合センター)
「細菌ゲノムの進化と多様化における遺伝子の水平伝播の役割~病原性大腸菌を例として~」
2. 服部正平 (東京大学大学院新領域創成科学研究科)
「ヒト腸内細菌叢のメタゲノム解析」
3. 小笠原直毅 (奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科)
「枯草菌の細胞システムのゲノムからの理解」

0203


テイオンケンの秋へ

2007-10-20 00:18:47 | 旅行記

好きなことをやっていれば、あっという間に時間が過ぎてしまう。この時間がいつまでも続いて欲しいとも思う。

Photo今朝のオックスフォードは、気温がぐっと下がり、芝に霜が降りていました。朝靄に包まれた、この大学街を去り難い気持ちでいっぱいです。

*****

071019朝食後、30分程散歩する時間をとることができました。この地も秋を迎えています。

そう言えば、例のテイオンケンの秋はどうなっているのでしょうか?

期待通り、conyさんがその様子をアップしてくれました。すっかり、紅葉が進みましたね。

さあ、札幌へ帰ろう!


変形菌、札幌、そしてオックスフォード

2007-10-19 03:10:40 | 学問

17世紀、オランダの呉服商人レーウェンフックは、趣味で自作の顕微鏡でせっせと微生物の観察にいそしみ、スケッチと観察記録を残しました。彼は、科学者としての教育を受けたわけではなく、アマチュア観察者だったのです。もちろん、英語もできなかったとのこと。

しかし、何故彼が多様な微生物の発見者として科学史の記録されることになったのでしょうか?

レーウェンフックはオランダ語で書いた観察記録を英国の王立協会(Royal Society)に送ったのです。その英語訳が紀要に掲載されたため、微生物の存在が科学界に広まったのです。

さて、今から6年前のこと。一人の学生が私のもとにやって来て、変形菌の生態研究を卒業研究として行いたいと。正直、迷いました。なぜなら、私はバクテリアが専門ですので、原生生物の変形菌は専門外。さらに、変形菌の研究そのものが国内外でどのようなレベルで行われているかも、全く理解していませんでした。

随分と悩んだあげく、Aさんの熱意に負けて、「まあ、うまくいくかどうかわかりませんが、とにかく研究を始めましょう!」と言ってしまったのです。

卒業研究、大学院の修士研究、そして博士研究。多くの困難を克服して、とうとうAさんは博士の学位を取得。現在は、学術研究員として当研究室で研究を続けています。

Aさんの研究が、オックスフォード大学動物学教室のカバリエ-スミス教授の目にとまり、今年度から2年間国際共同研究を実施することになりました。王立協会の研究費です。

と言うことで、現在、Aさんとともにオックスフォード大学に来ています。

動物学教室には、かつて、動物学者のチャールズ・エルトン教授が在籍していました。彼の著書「動物の生態学」を、私の大学院時代に何度も読みかえしたを覚えています。

Photoオックスフォード大学でも自然科学系の建物が集まっている地区に動物学教室があります。


*****
Photo_2建物内への出入は厳しく管理されていて、部外者が容易に入れないようになっています。


*****

Photo_32階には、ダーウィン・カフェがあり、簡単な食事と喫茶ができます。朝食もフル・イングリッシュ・ブレックファーストがいただけるとのこと。

*****

この建物の最上階にカバリエ・スミス教授の研究室があります。先生は、原生生物の進化(真核生物の起源、進化と多様性)を研究されて来られました。その研究成果が評価され、2004年度国際生物学賞を受賞されておられます。東京での授賞式では、天皇皇后両陛下とお話をされたとのこと。

Photo_4カバリエ・スミス教授との研究の打合せは、実に楽しい! 先生は次から次へと生物学的疑問が湧いて来て、それらに答えるのが大変でしたね。しかし、どの質問も鋭い洞察力に満ちたもので、とても参考になりました。気がつけば、4時間もの時が過ぎていました。

Aさんが中心の国際共同研究。6年前、研究を始めた頃からは予想していなかった研究の展開に、Aさんも私も驚いている次第です。この国際共同研究、何としてでも成功させたいものですね、Aさん!

森に行けば、変形菌を見つけることができます。しかし、その多様性や生態はほとんどわかっていません。

Photo_5機会がありましたら、皆さんも森に出かけてみてください。枯れ葉や切り株の表面に愛らしく変形菌の子実体が形成されているのを容易に観察することができます。

私の故郷の、加茂の山にもきっと!


ブログを綴り続けるということ

2007-10-18 12:40:55 | このブログに関して

低温研の樹々はすっかり色付いたでしょうか?
そんなことが気になるのも、札幌の地を離れて外国に滞在しているせいでしょうか?

英国滞在中に、前の大学の研究室の卒業生Aさんからメールを頂きました。

卒業後、ある会社に勤務したのですが、つい最近転職したとのこと。新しい会社の選択には、研究室で学んだことや当時出会った人たちからの影響が大きく作用しているとのことです。

卒業後Aさんとは音信不通になりました。そして、私の低温研への赴任が重なり、私としてもAさんのその後がずうっと気になっていました。

思いがけず、Aさんからメールを頂けたのも、ブログを書き綴っていたからです。

卒業生にとっては、卒業後気楽に立ち寄れる研究室が無くなった訳ですから、申し訳ない気持ちでいっぱいです。先週も、先々週も札幌に地に卒業生が訪ねてくれました。とても嬉しいことです。

私のブログは実名で綴っていますので、内容そのものは大変気を遣います。当研究室への受験生向けの情報提供が主目的なのですが、何をどこまで書くべきか、いつも迷いながらエントリーをアップしています。一方で、このブログは卒業生への近況報告としての役割を果たしているようです。

幸いにも、「福井学」でネット検索をかけると、このブログが一番にヒットします。

071017卒業生とって、私の研究室に滞在する数年間は人生の通過点かもしれません。しかし、後で振り返った時、彼らがかけがえのない時を過ごしたと思えるような研究室に育てて行きたいと思います。

Aさん、今度は札幌の研究室にも気楽に足を運んでくださいね。

福井 学
オックスフォードにて


今日のテイオンケンの秋7

2007-10-12 08:53:02 | 低温研のことごと

0710120107101202今朝の札幌の気温は、12.2℃。

昨日よりは、若干気温が高めですが、予想最高気温は12℃だそうです。

明日の朝は、グッと冷え込み、5℃以下になるとか。
もしかして、初雪か?

例によって、「テイオンケンの秋」の様子です。
今朝は、アングルを変えたショットをおまけに。

*****

07101203天気予報がハズレ、晴れてきました。

残念ですが、来週は、出張のため「今日のテイオンケンの秋」をお届けすることが出来ません。


今日のテイオンケンの秋6

2007-10-11 07:04:21 | 低温研のことごと

07101101今朝の札幌の気温は、10.5℃。
昨日よりは、若干気温が高め。

例によって、「テイオンケンの秋」の様子です。




*****
071011021日しか経過していないのに、葉の色づきが広がっているよう思えます。


*****
07101103低温研の敷地内の白樺には、番号札が付けられています。
何のためのナンバーリングでしょうか?
どなたか、ご存知でしたら、お教えください。

*****

午後からは、雨が降り出すようです。
しっとりした一日になりそうですね。

雨に日でも、改修工事が続きます。


今日のテイオンケンの秋5

2007-10-10 06:54:52 | 低温研のことごと

07101001今朝の札幌の気温は、8.9℃。
この秋一番の冷え込みだとか。

例によって、「テイオンケンの秋」の様子です。
先週に比べて、紅色に一層深みが増したようですね。



*****

昨晩は、雨でした。
一夜明けて、日が差し込み、瑞々しい秋の葉が何とも言えない美しさですね(↓)。

071010020710100307101004





*****
今日も改修工事が続きます。

そろそろ、野外調査に出かけたいですね。


今日のテイオンケンの秋3

2007-10-04 06:50:57 | 低温研のことごと

07100401今朝の札幌の気温は、13.5℃。

いつもの「テイオンケンの秋」の様子です。





******
07100402写真だけですが、雰囲気だけでもお伝えしたいと思いまして。



******

07100403駐輪場の脇には、実は、改修工事のための現場工事事務所(プレハブ)が建っています。


******
07100404一方で、こんなベンチもあります。昼下がり、ベンチに腰掛けながら、「低温科学」の未来について思いを巡らすのも、良いかもしれません。