福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

ISME16終了

2016-08-27 17:01:48 | 学会
8月26日、第16回国際微生物生態学シンポジウムが盛会のうちに終了。閉会セレモニーでは、次回の開催地ライプチヒ(ドイツ)が紹介されました。次回も是非とも参加したいものです。





とてもエキサイティングなISME16。私にとっては、時差13時間と言うハンディキャップはありましたが、印象深いシンプジウムとなりました。



さあ、札幌へ帰ろう!


モントリオールの夕べ

2016-08-25 17:10:07 | 学会
ISME16会場の外でも、議論するAさんとBさん。



折角の機会ですので、夕食をご一緒することに。モントリオールのダウンタウンにあるブラッスリーへ。さすがに疲れが出てきました。



Aさんと私はFlank steak(フランクステーキ、牛バラ肉)を、Bさんはモントリオールのソーセージ料理を頂く。





明日のセッションを話題にしながら、モントリオールの夕べはゆっくりと過ぎてゆく。


南極の赤雪から耐冷性微生物の単離に成功

2016-08-25 00:46:00 | 研究論文など
第47次南極地域観測隊に参加して10年余の年月が経過。その記憶は薄まらず。人生初めての南極での野外調査。多くの発見あり。



ラングホブデのやつで沢にて赤雪を発見し、すでに下記の論文を発表済。

Masanaori Fujii, Yoshinori Takano, Hisaya Kojima, Tamotsu Hoshino, Ryoichi Tanaka and Manabu Fukui. Microbial community structure, pigment composition, and nitrogen source of red snow in Antarctica. Microbial Ecology 59: 466-4775.2010.


南極赤雪を構成している藻類のほかに、従属栄養性のバクテリアであるHymenobacter (ヒメノバクター)が優占していることを突き止めた

ふと遊び心が湧き、マイナス20℃で9年も保存ししていた赤雪試料からバクテリアの単離培養を試みる。幸運にも、優占種の単離培養に成功。そこで、新種提案し、この度下記の通り学術雑誌に受理される

Hisaya Kojima, Miho Watanabe, Riho Tokizawa, Arisa Shinohara and Manabu Fukui. Hymenobacter nivis sp. nov., isolated from red snow in Antarctica. International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology. In press. DOI: 10.1099/ijsem.0.001435


『nivis』とは、雪という意味である。低温科学研究所ならでの研究成果の一つ。小島さんの努力のおかげでもある。


ISME16 ポスターセッションにて

2016-08-24 14:06:09 | 学会
8月22日、23日の両日、15時から17時半までポスタープレゼンテーション。当研究室からは、『sulfur links in Earth’s microbiomes』セッションにて大学院生の梅澤和寛さんが下記を発表。

Kazuhiro Umezawa, Hisaya Kojima and Manabu Fukui. Complete genomes of sulfur-oxidizing gammaproteobacteria Sulfurifustis variabilis sKN76 and Sulfuricaulis limicola HA5.


伝わるデザイン』を参考にしながら作成した発表ポスターです。次から次へと質問者が現れ、休む間もなく英語で説明する梅澤さん。きっと印象深い、初めての国際学会になったかと思います。




シンポジウムセッション『Freshwater Microbial Ecology』(淡水微生物生態学)

2016-08-23 14:12:46 | 学会
8月22日(月)午前と午後、ISME16の最初のセッションの一つとして、『Freshwater Microbial Ecology: crossing the border from sediment to pelagic zone』が行われました。コンビーナーは、私とMichaela Salcherです。MichaelaはISMEの若手研究者賞を受賞した新進気鋭の研究者です。



400名収容の会場。会場に入りきれないほどに聴衆者が集まり、活発に議論が行われ、盛況でした。









セッション終了後もポスター会場に移り、議論が続く。午後最初の招待講演者Lars Peter Nielsen教授(デンマーク•オーフス大学教授、ケーブルバクテリアの研究で著名)と午後最後の講演者のJakob Zopfi博士(スイス•バーゼル大学)。まさに白熱議論。とてもエキサイティングな一日でした。



このセッションの慰労会と言うことで、夕食会を開いてもらいました。会場は、何と寿司レストラン。びっくりです。しかも、飲み物はサッポロビールです。



時差13時間。ひどい時差ボケに悩ませられながら長い長い一日でしたが、ワクワク感に満ちたものでした。

国際微生物生態学シンポジウム(ISME16)へ

2016-08-21 19:40:31 | 学会
8月21日から26日まで、カナダのモントリオールで国際微生物生態学シンポジウム(ISME16)が開催されます。私たちの分野にとっては、重要な国際会議です。

札幌駅6時16分発の快速エアポートに乗車し、新千歳空港から成田国際空港、そしてニューヨークJFK国際空港へ。JFKで予定通り、モントリオール便に乗り継げたのですが、出発後機体の故障によりゲートへ引き返し、一旦待合所で待機することになりました。フライトそのものがキャンセルされる可能性もあり、ニューヨークでの宿泊を覚悟。2時間半後、飛行が決まり再搭乗。



結局のところ、ホテルに到着したのは現地時間20時半(日本時間翌日9時半)。札幌駅を出発してから、27時間。さすがに疲れました。



しかし、どんな発表があるのか、楽しみです!

ドイツの思い出に浸る

2016-08-05 16:56:56 | 大学院時代をどう過ごすか
研究室OBの渡邉友浩さん。この4月からアレキサンダー・フォン・フンボルト財団(AvH)のフェローとしてドイツのマールブルグに留学しています。ドイツ学術交流会(DAAD)やAvHの奨学生は、帰国後アルムニ会での活動を通して互いのネットワークを構築されているようです。

その一環で、去る7月15日北海道大学にてDAAD主催のアルムニ会が開催されました。東京からのDAADスタッフとともに、北海道在住のドイツ留学経験者たちが集い、ドイツの思い出に浸る和やかな会でした。

私自身はDAADやAvHの奨学生ではなかったのですが、DAADのご好意で参加させていただきました。当研究室からAvHフェローが出たことも、とても名誉なことです。また、友浩さんが帰国後ドイツでの経験を生かしてご活躍されることを願っております。


低温環境の科学事典

2016-08-04 14:41:46 | 本と雑誌
朝倉書店より、『低温環境の科学事典』が刊行されました。全169項目の解説の中で、私が特にお勧めしたいのが「好雪性変形菌類」(加茂野晃子)です。

変形菌(粘菌)は南方熊楠が魅せられた生き物として良く知られていますが、その生態や分子系統進化に関しては研究が進んでいません。そのパイオニア研究を行ったのが、加茂野晃子さんです。同事典での彼女の言は、下記の通り。

現在のところ、分子生物学的手法を用いた変形菌類の生態学的研究は数報にとどまる。好雪性変形菌類を対象とした研究も行われている。エアロゾル粒子の解析では、春の雪解けの頃に空気中での存在が認められた。土壌における群集構造もとらえられており、これまで明らかにされてこなかった多様な変形菌類の生息が示されている。また、研究の基盤となる子実体標本の塩基配列データの蓄積も進められつつある。今後、こうした方向での研究が、自然界における変形菌類の生態解明に大きく貢献するものと期待される


好雪性変形菌類の研究もまだまだこれから、と思うこの頃です。