朝目覚めると、いろいろな問題が頭をかけめぐる。どこへ行かなければならないか、今は何時だろうか、どれほど寒いのだろうか。眠りに就く時にも、翌日のことについて、同じ問題を考える。
長さ、時間、温度の三つは、日常生活のリズムを決める。この中でいちばんとらえどころのない温度に、私は魅せられている。長さと時間に関する日常的な理解は、過去何千年にもわたってあまり変わっていない。長い時間にわたって私たちは、定規と時計を利用してきた。だが、温度の場合はそうではない。赤ん坊でさえ、すぐに寒さと暑さがわかるようになるというのに、私たちが温度を測れるようになったのはやっと200~300年ほど前のことである。気体の温度が実は、熱的平衡にある分子の平均の運動エネルギーであることがわかったのは、さらにずっとあとのことである。
(中略)
私は、本書で、これまでに提起された科学の未解決問題のいくつかについて提議をしたい。その際に、温度は単なる脇役ではなく、欠かすことのできない存在であることがわかってくる。
(ジノ・セグレ著『温度から見た宇宙・物質・生命』の「はじめに」より)
本日は、大学院生主催の低温科学研究所新人歓迎会です。
新人に是非読んでいただきたい本が、ジノ・セグレ著『温度から見た宇宙・物質・生命』(講談社ブルーバックス)。「温度」によって開かれる科学の扉から、物理学のみならず、気象学、生物学にいたるまで様々な不思議な現象を捉えてみませんか?
新刊案内です。
■書名 分子でよむ環境汚染
■編者名 鈴木 聡
■体 裁 A5判 264頁 上製本・印刷カバー
■定 価 3675円(税込)
■刊行 4月20日
■ISBN978-4-486-01812-4
■内容
汚染物質の分子およびその分子に反応する生体分子に焦点をあてる分子環境科学への招待
目次
第Ⅰ部 地球環境の化学汚染
第1章 アジア-太平洋地域の化学汚染 磯部友彦・国末達也・田辺信介
1.生態系にとって厄介なPOPs関連物質/2.地球規模の化学汚染/
3.アジア途上国のPOPs汚染/4.POPs候補物質(臭素系難燃剤)によるアジア-太平洋地域の汚染/5.まとめと今後の展望
第2章 環境汚染を分子で診る 熊田英峰・高田秀重
1.モニタリングの実例と必要性/ 2.モニタリングに何を使う?/
3.何を測る?マーカー物質の重要性/4.まとめ
第3章 分子の中にある汚染情報 熊田英峰
1.大気を調べる/2.燃焼過程で生成される有機化合物および炭素系物質/
3.化合物同士の存在比で起源情報を知る/4.分子内に起源情報を求める/
5.地球環境問題とのかかわり
第Ⅱ部 環境汚染と生物
第4章 環境化学物質と魚介類の生殖 三浦 猛
1.環境ホルモン問題/2.生殖とホルモン/3.化学物質の水圏動物の生殖への影響/
4.最後に
第5章 生物反応を利用して化学物質汚染の危険性を検知する 岩田久人・金 恩英
1.生物はどのように化学物質の侵入に応答するのか/2.バイオアッセイによる化学物質の検出/3.化学物質に対する感受性の種差とリスク
第Ⅲ部 環境汚染への微生物応答
第6章 微生物による分子変換 鈴木 聡
1.生態系での微生物の役割/2.汚染物質の分解/3.化学物質による耐性発現
4.これからの化学汚染と耐性微生物の研究
第7章 化石燃料による環境汚染と微生物生態系の応答 福井 学
1.化学物質としての化石燃料と汚染/2.石油の海洋汚染と微生物分解/
3.今後の課題
第Ⅳ部 汚染と分子テクノロジー
第8章 水質汚濁とあらたな制御テクノロジー 岡部 聡
1.水質汚濁の歴史/2.水環境保全の目標/3.現在の水環境は?/
4.水環境を保全するために/5.あらたな化学物質による汚染/6.これからの排水処理テクノロジー/7.あらたな水の安全性評価テクノロジー
『チェンジング・ブルー』の著者からお聞きした話。低温科学研究所を舞台にした渡辺淳一の小説『流氷への旅』に登場する流氷研究者・紙谷誠吾には、モデルとなる実在の研究者がいたらしい。その方が先月末で退職されました。長い間、いろいろとありがとうございました。