2019年が終わり、2020年が始まろうとしています。
今年を振り返ってみると、例年になく様々なことがあったようにも思います。ある意味では、激動の2019年であったと言えます(あくまでも個人的に)。
最も印象に残ることの一つは、微生物の系統分類進化のBergey’s Manual改訂版に貢献できたことです。これは、渡邊美穂さんやドイツのJan Kuever博士との共著ですが、特に美穂さんの貢献は極めて大きいのです。
研究を始めた頃の私は、もう37年も前のことですが、水界の物質循環に関わる微生物の生態に興味があり、系統分類進化学研究を行おうとは夢にも思いませんでした。その後研究を進めていくうちに、新規の微生物(滑走能を有する糸状性硫酸還元細菌Desulfonema)の単離培養に成功いたしました。東京湾勝島運河とドイツの北海から。それは1994年のこと。当時は放射性同位元素を使って16SリボゾームRNAの塩基配列を決定し、生理生化学的性質とともに系統分類を行うのが定石でした。現在では、全ゲノム配列を決定することが不可欠であり、新種として発表するためには少なくとも2つの菌株保存機関に寄託して、証明書を発行してもらう必要があります。ここで問題となるのは、それぞれの菌株保存機関で寄託した微生物の培養維持ができるかです。残念ながら、寄託しても培養できないことがあります。可能となるまで粘り強く保存機関担当者と遣り取りするため、多大な時間と労力を要します。したがって、こうした研究には忍耐力を要します。
2004年、低温科学研究所へ異動後は、寒冷圏の微生物生理生態研究を中心とするテーマへ。寒冷圏の物質循環や生物地球化学的過程には微生物が主要な役割を担っているのですが、その9割以上は培養困難です。メタゲノム解析で未培養の微生物の完全長ゲノム配列決定に成功したこともありましたが、ゲノムから読みとれる機能には限界があることを痛感。やはり、地味ではあるけれども、自然界に存在する微生物の単離培養を行う研究の重要性を認識することに。小島久弥さんのご努力で、硫黄代謝に関与する微生物を数多く発見することに成功いたしました。この研究の流れは、東岡由里子さん、渡邊美穂さん、渡邉友浩さん、梅澤和寛さんに引き継がれています。2016年、この分野での研究が認められて、渡邊美穂さんが育志賞を受賞されたことは、意義深いことです。特に若手研究者には励みになったかと思います。
ご参考までに、12月9日基礎生物学研究所にてセミナーでご紹介したポワーポイントのスライドの一枚を掲載いたします。
さて、2020年はどんな年になるのでしょう? 更なる研究の発展を目指して、不断の努力を続けてまいります。
皆様、良い年をお迎えください。
【主な出来事】
<1月>
・中国揚州大学使節団来所
・カナダWaterloo大学Jackson Tsuji来所
<2月>
・修論発表会
・リスボン新大学ITQBと部局間交流協定締結
・紋別北方圏国際シンポジウム
・韓国極地研究所長来所
<3月>
・フランス・パリ天文台と部局間交流協定締結
・修了式:修士課程薛さん
<4月>
・入学式
<5月>
・JpGU
<6月>
・低温科学研究所一般公開日
・韓国・極地研究所と部局間交流協定締結
・生物環境部門BBQパーティ
<7月>
・FEMS2019(英国・グラスゴー)
<8月>
・厚岸調査
・尾瀬調査
<9月>
・日本微生物生態学会(山梨県甲府市)
・日露大学協会総会(ロシア・モスクワ大学)
・日本陸水学会(石川県金沢市)
・嶋盛吾博士来所(マックスプランク陸生微生物学研究所)
<10月>
・北大附置研・センターアライアンスシンポジウム「計算機科学」
<11月>
・研究集会「環境保全と微生物」(代表:横浜国立大学 鏡味麻衣子)
<12月>
・基礎生物学研究所と交流協定締結
・研究集会「雪氷の生態学」(代表:国立環境研究所 野原精一)
・生物環境部門クリスマス会
今年を振り返ってみると、例年になく様々なことがあったようにも思います。ある意味では、激動の2019年であったと言えます(あくまでも個人的に)。
最も印象に残ることの一つは、微生物の系統分類進化のBergey’s Manual改訂版に貢献できたことです。これは、渡邊美穂さんやドイツのJan Kuever博士との共著ですが、特に美穂さんの貢献は極めて大きいのです。
研究を始めた頃の私は、もう37年も前のことですが、水界の物質循環に関わる微生物の生態に興味があり、系統分類進化学研究を行おうとは夢にも思いませんでした。その後研究を進めていくうちに、新規の微生物(滑走能を有する糸状性硫酸還元細菌Desulfonema)の単離培養に成功いたしました。東京湾勝島運河とドイツの北海から。それは1994年のこと。当時は放射性同位元素を使って16SリボゾームRNAの塩基配列を決定し、生理生化学的性質とともに系統分類を行うのが定石でした。現在では、全ゲノム配列を決定することが不可欠であり、新種として発表するためには少なくとも2つの菌株保存機関に寄託して、証明書を発行してもらう必要があります。ここで問題となるのは、それぞれの菌株保存機関で寄託した微生物の培養維持ができるかです。残念ながら、寄託しても培養できないことがあります。可能となるまで粘り強く保存機関担当者と遣り取りするため、多大な時間と労力を要します。したがって、こうした研究には忍耐力を要します。
2004年、低温科学研究所へ異動後は、寒冷圏の微生物生理生態研究を中心とするテーマへ。寒冷圏の物質循環や生物地球化学的過程には微生物が主要な役割を担っているのですが、その9割以上は培養困難です。メタゲノム解析で未培養の微生物の完全長ゲノム配列決定に成功したこともありましたが、ゲノムから読みとれる機能には限界があることを痛感。やはり、地味ではあるけれども、自然界に存在する微生物の単離培養を行う研究の重要性を認識することに。小島久弥さんのご努力で、硫黄代謝に関与する微生物を数多く発見することに成功いたしました。この研究の流れは、東岡由里子さん、渡邊美穂さん、渡邉友浩さん、梅澤和寛さんに引き継がれています。2016年、この分野での研究が認められて、渡邊美穂さんが育志賞を受賞されたことは、意義深いことです。特に若手研究者には励みになったかと思います。
ご参考までに、12月9日基礎生物学研究所にてセミナーでご紹介したポワーポイントのスライドの一枚を掲載いたします。
さて、2020年はどんな年になるのでしょう? 更なる研究の発展を目指して、不断の努力を続けてまいります。
皆様、良い年をお迎えください。
【主な出来事】
<1月>
・中国揚州大学使節団来所
・カナダWaterloo大学Jackson Tsuji来所
<2月>
・修論発表会
・リスボン新大学ITQBと部局間交流協定締結
・紋別北方圏国際シンポジウム
・韓国極地研究所長来所
<3月>
・フランス・パリ天文台と部局間交流協定締結
・修了式:修士課程薛さん
<4月>
・入学式
<5月>
・JpGU
<6月>
・低温科学研究所一般公開日
・韓国・極地研究所と部局間交流協定締結
・生物環境部門BBQパーティ
<7月>
・FEMS2019(英国・グラスゴー)
<8月>
・厚岸調査
・尾瀬調査
<9月>
・日本微生物生態学会(山梨県甲府市)
・日露大学協会総会(ロシア・モスクワ大学)
・日本陸水学会(石川県金沢市)
・嶋盛吾博士来所(マックスプランク陸生微生物学研究所)
<10月>
・北大附置研・センターアライアンスシンポジウム「計算機科学」
<11月>
・研究集会「環境保全と微生物」(代表:横浜国立大学 鏡味麻衣子)
<12月>
・基礎生物学研究所と交流協定締結
・研究集会「雪氷の生態学」(代表:国立環境研究所 野原精一)
・生物環境部門クリスマス会