福井 学の低温研便り

北海道大学 低温科学研究所 微生物生態学分野
大学院:環境科学院 生物圏科学専攻 分子生物学コース

アルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所

2023-07-20 03:55:04 | 研究室紹介
遠く欧州の北の街。南欧では熱波が続いているのにも関わらず、ここは天候が不安定。最高気温21℃、最低気温14℃、突然激しい雨が降ったりする。

朝7時45分より実験を始める。テクニシャンのAさんはもう実験を始めている。彼女は私とほぼ同年代だと推定される。とても親切で、困った時は相談にのってくれる。

朝一番で実験を仕掛けて、少し早めに昼食。実験室に戻り、再開。細かいステップの多い実験で、気が抜けない。

午後には、実験室に学生のBさんやテクニシャンのCさんも加わり、賑やかに。さらに、ラジオのスイッチを入れるBさん。「キシマ先生の静かな時間」を好む私にとっては別世界のようではあるが、「郷にいれば郷に従え」かな。

研究を始めたばかりのBさん。その姿が札幌の院生達と重なる。

時間が流れ、遅めの午後になると、ラジオから聞き覚えのある女性の声が聴こえてきた。声の主は、アルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所の所長。彼女は、どうやらバービー人形のモデルになったらしい。社会で活躍する女性のロールモデルと言うことらしい。

アルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所(AWI)は、ドイツ・ブレーメン州ブレーマーハーフェンにある研究所で、大陸移動説のアルフレッド・ウェゲナーの名を冠している。1,000人を越える職員数とのことで、巨大な研究組織を束ねるのは容易ではないであろう。






低温科学研究所は、アルフレッド・ウェゲナー極地海洋研究所との間で部局間交流協定を締結しており、創立80周年記念式典の際はAWIから砕氷船Polarsternの写真集が贈られた。AWIは、低温研の研究分野と重なっており、今後更なる連携が期待されている。



夕方、激しい雨が止み、空が明るくなる。本日の実験結果を眺める。うーむ、微妙である。Jさんと相談し、明日の実験の方針を立てる。ふと、ミヒャエル・エンデの「ネバー・エンディング・ストーリー」(原題「Die unendliche Geschiche」)が頭をよぎる。

大雨、熱波、そして旭川ラーメン

2023-07-16 19:10:50 | 研究室紹介
ネットニュースによれば、秋田は記録的な大雨で床上浸水被害も出ているとのこと。彼の地に住む「微生物ハンター」たちは大丈夫だろうか?

一方、南ヨーロッパ(スペイン、イタリア、クロアチア、ギリシャなど)では熱波が到来。最高気温40℃近くと、今後も極度に暑い気温が続くとのこと。

幸い、私の滞在している地域ではエアコンが無くても快適に過ごせている。

そんなこんなを想いつつ、低温研の若き同僚からの救援物資に手をつけることに。「天金」をチョイス。低温研・技術部職員さんもオススメのラーメンでもある。



シナチクが無いのでマッシュルームで代用。昨日、スーパーで買ってきた長ネギをたっぷりのせ、更にゆで卵も。



美味。レベルが高い!感激止まず。ふと、チャーシュの代用品として購入したハムを失念していたことに気付く。しかし、ハム無しでも十分満足。

食後に、トルコ産チェリー。900グラムで710円であった。しばらく、チェリーな日々が続くこと、間違いなし。



蘭越町 湯里

2023-07-12 21:05:02 | 研究室紹介
らんこしちょう。内地の人たちにとってはあまり馴染みのない土地に違いない。しかし、このところ報道で話題となっている。

コロナ禍中、2021年8月、蘭越町・湯里を訪れたことがある。その頃は訪問者も少なく、静かな場所であった。強い硫化水素臭漂う大湯沼。微生物学的硫黄代謝を研究するものにとっては、興味深い場所でもある。その魅力にクラっとする、誘惑光線のよう。




大湯沼をあとにして、低温研へ戻る途中、余市町では道路沿いに農産物直売場がある。おすすめはトウキビ。こうした新鮮な農産品を安く入手出来るのも、北海道で学究生活を送る人達の醍醐味でもある。



赤いラディッシュ

2023-07-11 04:07:38 | 研究室紹介
夕方、スーパーにて。ラディッシュが安売りしていたので、思い立って、気分転換に甘酢漬けを作ることに。



ラディッシュを水で洗い、スライス。そして、空いたジャム瓶に適当に詰めたのち、ヴィネガー、塩、砂糖を加え、蓋をして振り混ぜる。4℃でオーバーナイト。



夜が明ければ、良い具合にラディッシュの甘酢漬けの出来上がり。結果が楽しみ!



優しさに包まれて

2023-07-08 21:11:16 | 研究室紹介
遠く、たとえばヨーロッパの街にて。非日常と日常の間で「想い」を成し遂げようとする。エキサイティングな毎日、いつになくアクチベーションされている我が身。

金曜日の遅い午後、日の入りにはまだ6時間余。オフィスの窓から庭の池をぼんやりと眺める。水草がこれ以上繁茂したら、水面を浮葉が覆い、湖水中の光合成が阻害されてしまう。そうすれば、有機物の好気的分解の結果、酸素枯渇、嫌気的環境の発達、脱窒、硫酸還元、メタン生成と嫌気的微生物代謝が進行する。



そんなことを考えていると、オフィスにマヨルカ人が現れる。30歳以上も若い彼が、「明日から10日間マヨルカ島へ帰省するよ。Manabuは休暇を取らないの?」と囁く。残された日々は僅か。優しい物腰の彼が去った後、あれこれと実験計画の練り直し。上手くいってもいかなくても、その日はやって来る。上手くいかなかったら、またやれば良い。そして、リタイア後プライベートでマヨルカ島の彼を訪問するのも良いかなと、想いを巡らす。それまで、「休暇」はオアズケ。

いささか弱った我が身体。そんな時、札幌の若き同僚より、優しさ溢れる補給品が届く。あたかも、南極大陸で野外調査中に砕氷艦「しらせ」からヘリで届く「補給物資」のようだ。破竹の勢いで活躍している若き同僚。彼の姿を見習いたい。




夜10時を過ぎても、明るい空が思考実験を刺激する。「てっぺんごえ」実験をやった方がいいな。眼を閉じて、明日に備えよう!




たいしょく防止

2023-07-01 02:09:37 | 研究室紹介
蛍光色素で染色した微生物細胞を落斜蛍光顕微鏡で観察。その際、励起光を照てた色素からの微弱な蛍光の減衰を、いかに遅くさせるかが観察のコツ。20年前までは、CITI Fluorをスライドカラス上の試料に封入剤として添加し、カバーガラスをのせて観察していた。

その後、マックスプランク海洋微生物学研究所に留学していた石井浩介さんから、「VECTASHIELD(ベクタシールド)」をCITI Fluorに混ぜて使うと、蛍光色素の退色防止に良いですよと教えていただいた。

Kousuke Ishii, Marc Mussmann, Barbara MacGregor and Rudolf Amann. An improved fluorescence in situ hybridization protocol for the identification of bacteria and archaea in marine sediments. FEMS Microbiology Ecology 50: 203-213. 2004. https://doi.org/10.1016/j.femsec.2004.06.015

それ以来VECTASHIELD(ベクタシールド)を使っているのだが、10 mlで40,000円。高価な試薬である。



今日の実験は、あまり上手くいかなかった。諦めるか、それとも、粘り強く立ち向かうか? もちろん不断の努力を続ける。「たいしょく」防止効果バツグン?