書名 「五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後」
著者 三浦英之 出版社 集英社 出版年 2015
満洲を舞台にしたノンフィクションを書いた一人として、建国大学の卒業生を追ったこの本はずっと気になっていた。しかも開高健ノンフィクション大賞を受賞した作品、気にならないわけがない。著者は朝日新聞の現役記者、企画連載の取材のため、海外で暮らす卒業生から直接話しを聞けた(聞けない時もあったが・・・・・)のは大きい。しかもその中には元首相などという大物もいる。新聞での連載記事がなければ出来なかった本だと言える。ここに登場してくる人たちの戦後は、ひとつひとつが重く、それだけでひとつのノンフィクションとして読めるものばかりだ。それをこのようにまとめるなかで、著者にはいろいろな葛藤があったのではないかと思っている。上手にまとめているし、取材もしっかりとしている、ある意味破綻のない本で読みごたえもあった。おそらくこのタイミングで取材しなければ、話しを聞くのは無理だろうというかなりギリギリのところで出た本である。ただなにかもの足りないような気がするのは何故なのだろう。満洲というキメラの象徴ともいえる建国大学が舞台なのに、妙に収まっている、キメラのもつ暗黒の部分をあっさりと通過しているからなのかもしれない。
自分がとりあげた長谷川濬は、満洲の地方で働く官吏を養成するための大同学院であった。建国大学の国際性と表現の自由とはまた対局の理念のもとで、若者たちは学んでいた。いったいどういう国をつくろうとしていたのか、それを支える理念はなんだったのか、そこが闇というか暗黒の部分と通底してくるところに、満洲という幻の国家の本質につながっていくところがあるような気がするのだが・・・・ただそこは、入ったらもう出てこれないような闇の世界でもある。
著者 三浦英之 出版社 集英社 出版年 2015
満洲を舞台にしたノンフィクションを書いた一人として、建国大学の卒業生を追ったこの本はずっと気になっていた。しかも開高健ノンフィクション大賞を受賞した作品、気にならないわけがない。著者は朝日新聞の現役記者、企画連載の取材のため、海外で暮らす卒業生から直接話しを聞けた(聞けない時もあったが・・・・・)のは大きい。しかもその中には元首相などという大物もいる。新聞での連載記事がなければ出来なかった本だと言える。ここに登場してくる人たちの戦後は、ひとつひとつが重く、それだけでひとつのノンフィクションとして読めるものばかりだ。それをこのようにまとめるなかで、著者にはいろいろな葛藤があったのではないかと思っている。上手にまとめているし、取材もしっかりとしている、ある意味破綻のない本で読みごたえもあった。おそらくこのタイミングで取材しなければ、話しを聞くのは無理だろうというかなりギリギリのところで出た本である。ただなにかもの足りないような気がするのは何故なのだろう。満洲というキメラの象徴ともいえる建国大学が舞台なのに、妙に収まっている、キメラのもつ暗黒の部分をあっさりと通過しているからなのかもしれない。
自分がとりあげた長谷川濬は、満洲の地方で働く官吏を養成するための大同学院であった。建国大学の国際性と表現の自由とはまた対局の理念のもとで、若者たちは学んでいた。いったいどういう国をつくろうとしていたのか、それを支える理念はなんだったのか、そこが闇というか暗黒の部分と通底してくるところに、満洲という幻の国家の本質につながっていくところがあるような気がするのだが・・・・ただそこは、入ったらもう出てこれないような闇の世界でもある。
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