書名「ロシアとは何ものか」
著者 池田嘉郎 出版社 中央公論新社 出版年 2024
みすずの「読書アンケート」で多くの人がとりあげていて、気になり読む。
ロシアによるウクライナ侵攻が、明らかに他国を勝手に武力で侵犯した悪行であるにも関わらず、ロシアはそれを悪行とは認めず、正当性を主張する、それは単なる言い訳ではない、そう信じている、そこにある欺瞞性を暴くだけでは足りないもの、信じている裏付けとなっている歴史観のようなものがあるのではないか、そんな問いかけに答えているのが本書であるといっていいかもしれない。
著者はロシアとヨーロッパにおける根本的な違いを、ロシア史をひもときながら明らかにしている。ヨーロッパでの支配関係は、個々人から独立して、君主は法によって規制されるのに対して、ロシアは法ではなく物理的な力によって直接的な力関係によって規定される。これが現在まで貫かれているところに、今回のウクライナ侵攻を支える根拠があるということになる。
クルミヤ半島の歴史や革命のなかでのカデットの動向、特にナボコフの父や、ココシキナの手記、さらには満州侵出の日本との交差点など、さまざまな視点から切り込みも興味深いものがあった。
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