書名 「民俗と仮面の深層-乾武俊撰集」 著者 乾武俊
出版社 国書刊行会 出版年 2015
早稲田図書館の地下書庫で本を探しているときに偶然目に入った本だったのだが、この出会いはこれからなにかに発展していくのではないかという気がした。山口昌男の道化についての論考を読んでいたときイランの黒い道化について知ってから、黒い道化の系譜というのをずっと考えている。なんのことはない、日本にもこの系譜があった。「黒い翁」である。この黒い翁について、もどきということを芸能の原点に見ながら、それもそれを演じているのがほかでもない被差別者たちであったというところに視座をおき、主に仮面を通じてそれを考察していったのがここに集められている論考であった。実に刺激的な視点である。なにより黒い翁は白い翁のもどきであったというだけでなく、実は黒い翁の方が芸能発生的には先行していたというこの視点は実に斬新である。散楽から田楽とつながるサーカスの流れに、この黒い翁の道化的な流れを交差させていくとまた違うかたちの芸能史が書けるのではないか。その意味で乾のこの黒い翁と仮面の論考は、日本の道化を語るときに欠かせないものになっているような気がする。黒い翁-とても気になる。
出版社 国書刊行会 出版年 2015
早稲田図書館の地下書庫で本を探しているときに偶然目に入った本だったのだが、この出会いはこれからなにかに発展していくのではないかという気がした。山口昌男の道化についての論考を読んでいたときイランの黒い道化について知ってから、黒い道化の系譜というのをずっと考えている。なんのことはない、日本にもこの系譜があった。「黒い翁」である。この黒い翁について、もどきということを芸能の原点に見ながら、それもそれを演じているのがほかでもない被差別者たちであったというところに視座をおき、主に仮面を通じてそれを考察していったのがここに集められている論考であった。実に刺激的な視点である。なにより黒い翁は白い翁のもどきであったというだけでなく、実は黒い翁の方が芸能発生的には先行していたというこの視点は実に斬新である。散楽から田楽とつながるサーカスの流れに、この黒い翁の道化的な流れを交差させていくとまた違うかたちの芸能史が書けるのではないか。その意味で乾のこの黒い翁と仮面の論考は、日本の道化を語るときに欠かせないものになっているような気がする。黒い翁-とても気になる。