機龍警察 未亡旅団

書名　「機龍警察　未亡旅団」
著者　月村了衛　　　出版社　早川書房　出版年　2014

いまはまりにはまっている「機龍警察」の第4弾。今回はなんとチェチェンのテロリストたちが来日して、日本でテロを企て、それを阻止するため特捜部との熾烈な戦いが描かれる。こうした筋書きなのだから、はまらないわけがない。しかも回を重ねるごとに特捜部の個性豊な個人個人の人間像の描き方が深まっていくので、どんどんはまっていくようになる。近未来を舞台にしたロボコップのような傭兵たちが活躍するこの小説と、大好きだった８７分署シリーズを比較するというのは暴挙でしかないのだが、あの８７分署で働く個性豊かな刑事たちの群像劇を思い起こしてしまう。不覚にも今回も2度ほど涙を流してしまった。そんな小説ではないはずなのに、登場する捜査官たちの思いに思わずひきこまれてしまったのだろう。国際テロリストとの戦いとなると、警察内部だけの話しではすまなくなってくる、外務省や政府などもおのずと出てこざる得なくなり、それだけスケールも大きくなっていく。そして1作目から影のように特捜部に迫ってくる警察内部の「敵」の存在がさらに大きくなっていく。だんだんその輪郭もはっきりしてきた。これが今後どうなるのか楽しみである。
これだけスケールの大きな小説なので、一年に一作というわけにはいかないのだろうが、次回作が待たれるところである。

フェイク

はぐれているキンクロさんが心配で、船溜まりまで走る。やはり一羽でいつもの場所で羽根を休めていた。どうしたもんだろうね。
10時出社。このところの日課はいまほとんど毎日と言っていいぐあいに問い合わせをしているメンバーからの返事をチェックすること。今日はわりと優先順位が高い質問についての答えが来ていた。ただし一部にしか答えてくれていない。またメール。そろそろリトル組も帰国モードになっている。両替レートのことが気になっているようだ。ロシア人はそのまま円でもっていった方がいいらしいが、ヨーロッパの連中はやはりユーロ。どこの銀行がレートがいいのかなど聞いてくるが、こうなるといまのいろんな国際情勢があるから今日のレートがそのまま帰国の時のレートと一緒かというと違うような気もするし、迂闊には答えられない。
17時早退させてもらいユーロスペースで土曜日から始まった森達也の「フェイク」を見る。ほぼ満席だった。やはり早く行ってよかった。
かなりの問題作だし、いろいろ考えさせられた。感想はまたゆっくり書きたい。
22時帰宅。今日は休肝日、23時すぎに就寝。

儀礼から芸能へ

書名「儀礼から芸能へ－狂騒・憑依・道化」
著者　松尾恒一　出版社　角川学芸出版　出版年　2011

散楽や田楽がどう江戸の軽業や曲芸に結びついていくのかという関心のもとで、こうした芸能史を読んでいるのだが、ずっと気になっているのは散楽というかたちで大陸から入ってきた中国の雑技は、最初は朝廷の管轄のもとで演じられていた。その管轄がなくなったとき、つまり民間のものになったときどのようにして演じられていったのかということがある。このときに寺社、そして僧徒たちが大きな働きをしていたのかもしれないというのが、この本を読んで一番参考になったところである。この書は延年という寺社を舞台に行われた芸能が、儀礼から生まれ、それがどのように発展して田楽や能、狂言へとつながっているかということがさまざまな角度から論じられる。
こういう視点から散楽を見ていくと、日本のサーカス史のいくつかの空白も少しずつ埋まっていくのかもしれない。そういう意味では刺激的な芸能史の本であった。
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