キュヴェ タカ/cuvee taka 「酔哲湘南日記」

新鮮な山海の恵みを肴に酒を吞み、読書、映画・音楽鑑賞、散歩と湘南スローライフを愉しんでいる。 

記憶の古層

2007年02月03日 | Weblog
節分の朝湘南の空は晴れ渡り今日も良い天気になりそうです。昨日は時差と疲れもありお休みさせていただきました。まあ今日これから名古屋へ行かなければならないし、明日はフランスとスペインからメーカーがやって来るので、日曜返上でアテンドしなきゃいけないので休んで体調を整えておくのも仕事の一つと考えてください。

ウイークデイののんびりした時間を小田原で過ごしました。私が通った高校が小田原にあり、3年間を過ごした懐かしい街なのです。ご存知のように城下町、ご多聞に漏れず郊外に出来たショッピングセンターに客を吸い取られ駅前商店街は閑散としてかつての賑わいは何処へやら。かつて遊んでいた頃の喫茶店やスナックなどはもう何処にもありません。10年前はほんとに寂しくて訪れるのが嫌でした。しかし、ここ数年新しい世代の人達が新しい店を出し始めてなんだか活気が出てきたのか、自分自身の中の何かが変わったのかちょくちょく出かけるようになりました。

昨日回ったところは結局昔からあるお店でした。伊勢冶書店、吉本隆明著”真贋”を購入しました。インタビューを活字にしたものです。最近隆明さんは高齢のためかこのパターンの書籍が多いですね。でも後から後から各販元が同様の企画をするのは、刷れば一定量売れる確実な作家だからなんでしょうね。私も出れば必ず買ってしまいますからね。魚国、魚屋です。地元で獲れたマンボウを購入。刺身で食べるとそのかすかな風味がえも言われず美味。イルカにしようかマンボウにしようか迷ったのですが、最近北杜夫を読んだのでなんとなくマンボウをとりました。もりや、パン屋です。昔からあんぱんが有名。人形町に有名な鯛焼き屋がありますが、そこと同様目一杯あんこが詰まっているのが人気の秘密のようです。朝から10名くらいが並んでおり、購入の気力が萎えかけたのですが、10年ぶり位になるし、休みで時間はあるしと我が身を奮い立たせ購入いたしました。ちなみに人形町の鯛焼きは並ぶ気力が無く現在まで見るだけで食したことは御座いません。

そんなわけで昨日は小田原の街歩きを堪能いたしました。昔からある店を覗くと、まず脳の中の古い記憶の部分に反応して大きな悦楽をもたらすことが分かっております。次に具体的な悦楽がやってきます。隆明さんの最近の著書の繰り返しにはなって新味に欠けるが、よく考え抜かれた味わい深い論考。繊細なマンボウの味わいと独特の歯切れ。90%以上を占める甘みを押さえた小豆の味わいのする餡。

私も年長の方がわざわざ老舗へ出向かれ買い物をしている姿を多く見受けましたが、価格や品質だけでなく記憶の古層に訴える悦楽が何物にも変えがたいという秘密が分かるまで随分と時間がかかりました。
コメント
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