▼大相撲初場所とテニスの全豪オープン。崖っぷちに立たされている選手たちの心理面が伝わり、見る者の心身を疲れさせる。
▼観客席の人間は、最終的には「勝ち負け」で評価してしまうのだが「あきらめる」ことが、生きの延びることと了解している私などは「あきらめない」ことの精神の強さに、感動を覚えてしまう。
▼大相撲は「貴ノ岩暴力事件」に発した「貴乃花引退騒動」で揺れに揺れたが、ネズミ一匹も残らなかったような結果になってしまった。国技という伝統が、ちょっぴり揺らぎはしたが、体面を保ったようだ。
▼そんな内紛劇などなかったかのように、下位の力士の奮闘が目立つ。白鵬を破った、22歳関脇貴景勝と34歳関脇玉鷲だ。
▼表情や体の動きから察し、緊張が前面に出ないなんて考えられないのが貴景勝だ。全ての力と精神力を発揮する土俵は、すでに横綱の「心技体」を兼ね備えているようだ。
▼モンゴル出身で、初場所以来無休を誇る玉鷲。この力士も表情には出さない。だが昨日の1150回目の、そして優勝が目前の取り組みでは、手を付く前「あれ、いつもはどうしたっけ?」と思ったという。
▼そのことを聞いて、私は親戚のある男性の言葉を思い出した。だれが見ても美人で最愛の奥さんがなくなられ、一人暮らしだった。
▼80歳近くなった時、坂道を運転していてブレーキをかけようと思った時「どうしたらいいのか全く分からなくなってしまった」という。そこで免許証を返納した。
▼田舎での一人暮らし、自動車がなければ不便極まる。間もなく認知症が進行し、あっという間に世を去ってしまった。
▼玉鷲との関連性は全くないが、経験豊富な玉鷲でも、ここ一番の大勝負は、すべてがぶっ飛んでしまうという。白鵬の3連敗後の休場は「自分の相撲を忘れてしまった」ということかもしれない。
▼それにしても全豪オープンの21歳の大坂なおみ選手には驚いた。若さゆえに感情が顔に表れたのはつい最近までだ。今回は苦境に陥っても、表情はすぐ平静を取り戻せた。
▼それにしてもウインブルドン2度制覇のクビトバ選手の、精神力にも驚いた。崖っぷちから何度も這い上がる精神力には、恐怖感さえ覚える。
▼プロボクサー具志堅用高は、ダウンした選手にさらにパンチを浴びせる。そのことについて聞かれた具志堅は「二度と立ち上がれないようにしたかった。立ち上がれば今度は自分が倒されると思った」とそう述べた。世界チャンピオンの精神力は、平常心など越えたところにあるのだろう。
▼何度も立ち上がる大阪選手。何度も立ち上がるクビトバ選手。その死闘を制し、世界1位の座を射止めた。世界1位や賞金3億2千万など、彼女らの意識にはなかっただろう。ただ誰頼るものもない狭いコート上で「孤独な戦い」を自分自身で制したのだ。
▼秋にはおじいちゃんがいる北海道の根室を訪れたいと話している。なおみさんにお願いしたい。「お魚が大漁するように」と北海道にエールを送っていただきたい。もう一つ「北海道が日本のNO1になってほしい」と、ただそれだけです。
▼今日は自分の思い付くまま書いてしまったが、我々団塊世代のおじさんたちは、昨夜ユーチューブでヘドバ&ダビデの「ナオミの夢」を聴いた人は少なくなかっただろう。
▼なおみ選手おめでとう。そしてなおみ選手をさらに強くしてくれた、クビトバ選手に感謝。
▼テーマの「潮目が変わる時」は、皆さんのご想像に任せます。