▼昨夜(12日)私が会長を務める町会の新年会があった。歌あり踊りありの、これが「宴」というような楽しい一夜だった。まずは恒例のビンゴゲーム。
▼会長の私はなぜかビンゴが強い。連続2回トップになったこともある。涙を流しながら景品は次の人にゆずる。これは会長という役職の宿命ともいえるものだ。
▼今回も2位になり、景品はお米だ!。だが、同時に3名ほどいたので、ここで会長としては新年のお年玉として、お米を他の人に譲る。司会の方が「さすが会長です」と称えてくれるが「お米だけは持ってきて」と妻から言われている。ここも会長のつらいところだ。
▼カラオケに入った。歌った方全員に景品が当たる。踊ってくれた方ももちろんだ。私と同じ席にカラオケ好きの一人暮らしの女性がいた。年齢は80歳に手が届く感じだ。
▼漁村は圧倒的に演歌が多いのに、Kさんはテレサテンを歌うのだ。年齢による難聴気味のせいか?、歌は少し遅れてしまうが、でも歌詞の内容を十分把握し、感情をこめて熱唱する。私が町会で最も好きな歌い手の一人だ。
▼Kさん、開会の時間に遅れてきたのは、会場内の温泉にゆっくり入っていたからだという。午前中、天気が良く波が静かだったので、寒海苔の採取に出かけていて、身体が冷え切っていたからだという。
▼「この寒いのに大変だね」というと、テレサテンの歌を歌いながら、海苔摘みをするからたのしい」という。ところで、テレサテン以外に好きな曲はあるのと聞いたら、中島みゆきの「時代」、徳永英明の「壊れかけのRadio」だという。
▼「アッと驚く!ため五郎」などという古いギャグを思い出してしまった。「詩がいいから好きだ」ともいう。Kさんは、ご主人に死に別れてから、すでに10数年一人暮らしだ。家ではCDで音楽を聴くのが好きだという。
▼以前、熱唱曲「時の流れに身を任せ」が、どうして好きなのかと尋ねたことがある。「亡くなった旦那を思い出しながら歌うのさ」と話していた。
▼さらにもっと深い理由を聞かせてくれたのだが、胸が締め付けられるような話しだったので、私の胸にしまい込んでおくことにしている。
▼「歌に人生あり、人生に歌あり」と言われるが、Kさんが好きな歌手の曲に共通しているキーワードは【時代】だ。Kさんは自分と一緒に過ごしたご主人との「時代」、その後の長い一人暮らしの「時代」を、走馬灯のように蘇らせながら歌うのだろう。
▼Kさんがテレサテンを歌ってくれた。司会は「会長がこの歌を大好きなので、会長の独断でたくさんの景品をさんに差し上げます」とアナウンスしてくれた。
▼特別参加があった。同じホテルに隣町の女性団体の宴会が行われていた。そこにいた3人が、こちらの宴会場に入ってきて踊り出したのだ。普段から踊りを練習しているらしく上手だ。
▼その3人の中に、私の町会からお嫁に行った人もいた。ほかの2人も、みんなと顔見知りなのか和やかに話していた。私の町会にも隣町から嫁いできている人もいる。私の祖母も隣町の生まれだ。
▼ところが「よその町会が入って踊るのはおかしい」との声が私の耳に届いた。私は「市町村合併し同じ函館市民になったのだから、それにみんな知り合いのようだし、盛り上がっていいじゃないか」と、こんな時は耳をかさない。
▼そればかりか、踊り終えてからその3人にも、景品を与えた。3人は喜んで自分の宴会場に去っていった。
▼米国によるメキシコ国境の壁建設。韓国と我が国の徴用工問題。人間は生まれついた時に、差別意識が生じる。それは、第一義的に「男と女」という区別からはじまる。
▼「区別」と「差別」は、同義語かもしれない。だが、それが「郷土愛」とか「愛国意識」とかいう偏狭な意識も生む。つまり「差別」の根底に潜むものは「自分や自国ファースト」という意識だ。
▼その意識は、やがて戦争につながる要因をはらんでいる。米国は世界最強の軍隊を背景に、壁建設の力を保持できる。我が国は「9条を改正」すると米国と同じように「差別意識」を増長させるに違いない。
▼そんなことをふと考えた、新年会だった。以前私は「町会長はつらいよ」という、映画の題名に似たブログを書いたことがある。町会長というのは、意外と我慢が必要な役職だからだ。
▼だが「会長特権」というのも、時には発動できる。それは「独断と偏見」による、ほんの微力な権力だ。それが、会長としての唯一の楽しみでもある。
▼でも、こんな考えの最大級が、アベ総理が目指す「緊急事態条項」なのではないかと、ちらりと頭をかすめる。こんな条項は、無差別的に「特権」を行使してしまうからだ。
▼数年前、高齢化により町会の再編成を行い、5町会を1町会にしたのが、現在の私の町会だ。同じ狭い地域にありながら、町会が違えば独自の習慣や考えも微妙に違う。
▼今年の新年会は、やっと会員一丸となった、心からの交流も見えた。私たち地方に住む国民にとって、元号が変わるというのは、さほど意識にないように思える。
▼しかし平成が終わり天皇が変わるというのは、何か希望の「時代」がやってくるという期待が、高齢化が進む町会にも少し現れているような気がする。
▼私も、昭和・平成という時代を過ごしてきた。3度目の元号に期待し、新しい時代に新たな町会の行動を起こそうと考えている。それは「歌を通して時代を感じ、さらに健康を促進する事業」の展開だ。