▼日本創生会議の「消滅都市」の予測によると、函館市の2040年の人口は、今の27万人から16万人に減少するという。消滅可能とされるトップ50には、函館を中心とする道南圏の自治体で「奥尻・木古内・松前・福島・上ノ国」の名が記載されている。
▼2004年に函館市に吸収合併された、戸井町・恵山町・南茅部町と我が椴法華村などは、合併していなかったら、当然消滅地域に指定されていたに違いない。だが、人口が急激に減少する函館市に、ついていって良かったのか良くなかったのか、解散選挙が終了して、自民にふっつき過ぎた公明党や、希望の党に身を売った民進党のような、複雑な気持ちだ。
▼開港都市函館は、古い街並みが保存され、街全体が訪れる人に日本の近代史を語りかけている。それが観光都市函館の魅力の一つだ。近年、大型クルーザーを誘致するための湾内の整備、空港の民営化による海外路線の新設、駅前や五稜郭の中心部の開発が進んでいる。
▼駅前の商業施設「キラリス」は、さほど特徴もなく、テナントも埋まらないようだ。五稜郭の「シエスタ」は、若者や中年層が集まり、今のところは成功に見える。だが、よその都市にある流行の店舗が集まったような感じもする。
▼できれば、私が20代の頃、よく出かけた銀座の「SONYビル」のような、ちょっぴり未来を予想させてくれる、情報発信基地のような役割を担ってほしいものだと思っている。半世紀も前の古い考えだが、若者の感性は、いつの時代にも現状に甘んじないという、進化を感じさせる要素が、必要ではないかと思う。
▼函館市の考えは、古い街並みに頼っていても、いずれは維持ができなくなるので、今から新たな街づくりを準備しなければならないという考えのようだ。古い街並みが観光客をひきつけている、函館山山麓の西部地区の、壊れかけている建物や空き家の土地を活用し、セレブ層をターゲットにした「ビバリーヒルズ構想」なるものも打ち出している。
▼近い将来、大型豪華客船寄港地として、世界に開かれる「新開港都市」を目指しているのだろうか。私は12万トン級の大型客船が入ってくる港は、米軍の空母も入って来れる深さになるので、横須賀や佐世保のような、軍港観光都市にならないかと、ちょっぴり心配する。
▼若い頃、私が住んでいた東京のアパートの周辺は、ほとんど新しい建物が立ち、かつて住んでいた面影などなく、記憶が完全に消去されてしまった感じだ。ノスタルジーに浸り、来し方を回想する雰囲気など全くない。
▼だが、函館は人影のない建物や、古い看板などに当時の街並みや、知人の顔までが蘇る、極めて「懐かしさのある街」なのだ。私など、高校時代に函館に住んでいたので、まさしくその時代に違和感なくタイムスリップでき、当時の知人の顔まですぐ浮かんでくる、心やすまる街なのだ。
▼殺伐した世の中にあって、北の港街函館が、自分が自分らしい時代に戻れる風景が至る所にあれば、人間性回帰の素晴らしい旅を楽しむことができるに違いない。そんな観光地が、函館観光に求められる、新たな観光のスタイルではないだろうか。
▼私は、函館市内を散策するたびに、未熟だけど、未来に希望を持っていた頃の自分に戻れる街並みが、あちこちに残っているというのが、とても気に入っている。それが、私の「誇りの持てる函館」という街なのだ。
▼海外の文化を受け入れた「和洋折衷の街」。そして、古きものと新しきものが共存できる「温故知新の街」。そんなヒューマニティー溢れる、新たな観光都市の実現が、人口減少にちょっぴり歯止めをかける、要因の一つではないかと考えるこの頃だ。