▼大勢が立候補した都知事選で、日本型の選挙が変わる様相を示した。さらにパリ五輪が始まり、我が国は「自民党の脱税問題」を忘れてしまいそうな、世情になっている。
▼国民の「熱狂」の中で起きる、人間故の心理作用をコントロールするのは、なかなか難しい。過去に戦争に向かった「群集心理」は、国民の「熱狂」から始まったからだ。
▼だがこの「熱狂」をコントロールできるのも国民だ。この熱狂は全体主義につながる。それを阻止できるのが【民主主義】だ。主権は‟国民”にあるからだ。
▼その「熱狂」の流れをコントロールできなくなった状態を「民主主義」の‟危機”、又は‟劣化”というのではないか。
▼さて世界は戦争が続いている。その中で今の‟パリは燃えている”。日本女子の柔道でまさかの一本負けをした選手が、世界が注目する場所で、大泣きをした。
▼まるで彼女の涙で、セーヌ川を氾濫させるかのように。どの国の選手も、血の出るような努力を重ねている。自分だけがその舞台を独占することは許せない。
▼会場も彼女の涙にエールを送った。そこにある種の‟熱狂”を感じた。負けを認め、人のいないところで泣き叫ぶのが、勝負師の勝負師たる所以ではないかと、昭和の爺は古めかしい考えも去来する。
▼とは言いながら、柔道の切れ技がレスリング化!?していることにも、いささか眉をひそめる。我々昭和世代は、潔い切れのある【一本】が、日本人(昭和人?)の精神に共鳴するからだ。
▼五輪の活躍に胸を打つものがあるが、その陰で我が国の軍拡路線が拡大を示している。7月27日には外務・防衛担当閣僚による「安全保障協議委員会=2プラス2」が、東京で開催された。
▼さらに「核兵器」を含む米国の戦力で、日本への攻撃を思いとどまらせる『拡大抑止』に関する閣僚会議も、東京で開催された。
▼安全保障関係が悪化しているとして「紛争発生を防止するため、拡大抑止に関する議論を深める」ということで一致した。
▼米側は在日米軍を再編し『統合軍司令部』を設けることとし、自衛隊との指揮統制の連携強化を進めることででも、合意したという。
▼核の威嚇を強めるロシア、核戦力を増強する中国、核開発を進める北朝鮮を注視し、抑止力の強化を図ろうという計画だ。
▼つまり三国からの核の脅威に対し、米国の核の参加をさらに強化しようということだ。それではキシダ総理が提唱する『核兵器のない世界』と、逆行する合意だ。
▼米軍が陸海空3自衛隊を一元指揮できる体制を整え、一朝有事には日米が共同で戦闘態勢に入るということを、確約したということのようだ。
▼29日には、中国の南シナ海での進出に、日・米・豪・印各国の強化を図ることも確約された。まさしく「戦争放棄」の日本が、戦争放棄の放棄」を目論んでいる。
▼政治資金の脱税をもうやむやにする、キシダ政権。憲法など、うやむやにしたまま、憲法の実効性を無力化しようという魂胆だ。
▼自衛隊の不祥事が相次ぎ、隊員の大量の処分。さらに沖縄米軍の性的暴行事件の連絡不備などで、外相と防衛相の責任が問題視されている。
▼だがそのことを踏まえ「文民統制」の弱体化が問題視されている。この事象は文民統制上の問題を「自衛隊の体質強化」に、すり替えようとしているのではないかと疑う。
▼もはや米軍は自衛隊を「軍隊」としてみなしているということだ。軍隊には「文民統制」など全く必要ないからだ。戦争状態に入れば「文民統制」など邪魔でしかないからだ。
▼「自衛隊から軍隊へ」。憲法改正しなくても、一朝有事には「集団的自衛権行使」が適用され、自衛隊は一気に軍隊化する。
▼そんな精神の不安定状態に置かれている自衛隊員に、パワハラ、セクハラや、業者からの金品授与などの不祥事が相次いでいる。
▼規律の乱れは、そんな自衛隊内部の精神の不安定がもたらす現象ではないだろうか。それを逆手に国防の不安を仰ぎ自衛隊を強化し、憲法改正前に自衛隊を軍隊化させるのが、現在のキシダ政権ではないか。
▼敵が攻めてくると危機意識を煽り、先制攻撃を仕掛ける。それが戦争開始の常道だというのは歴史が示す事実だ。
▼『パリは燃えている』。我が国の選手たちの活躍には感動を覚える。だがいたずらに国威発揚を煽られるのではなく、冷静な心でパリ五輪を観賞し、キシダ政権の権謀術数にのせられないよう、目を見張らなければならないようだ。
暑さにも負けぬ丈夫な頭を持つ
三頭下