▼大間原発建設凍結で、国と電力会社を訴えた工藤函館市長。議会や経済界や市民の支持も得て、無競争と思われたが対抗馬が現れた。我が国での原発訴訟は、地裁や高裁では原告勝訴の例はあるが、最高裁は全て原告敗訴だ。函館市の場合のように、自治体が国を提訴というのは我が国では初めてだ。自治体には人格権が認められないというのが司法の常識だそうだ。函館市の裁判も「原告不適格」という結果になるのではないかと、市民も心配している。
▼ 訴訟費用は、函館市の提訴を支援するという市民や全国の方から、5千万円にも及ぶカンパが送られてきたという。訴訟費用は市の財政からの支出はいらないようだ。そんな市長の勇気が市民の信頼を得て、無競争の勢いだった。だが国に反発すると、沖縄県のように振興補助を減額されるという懸念があるのではないかと、市民も心配している。市側はそんなことは無いというが、沖縄への政府の高圧的態度を見る限り、そんなあまいものではないだろうと、市民は思っている。
▼ 国策に一自治体が反旗を翻し、国から何の圧力も掛からなければ、市と国側はどこかで野合しているのではないかと、邪推されよう。また、裁判上では勝ち目の薄い訴訟を起こし、対抗馬を出させない権謀術数に長けた政治手腕ではないかとも、巷間ささやかれている。
▼ 元経済産業省官僚の古賀茂明さんが、アベ政権を批判しただけで、あの圧力だ。過去に岩国基地に沖縄の米軍戦闘機を移設する際も、反対した市長に対し、新庁舎の予算をストップさせ、移設賛成の市長が当選するや否や、予算をつけたなどということもある。函館市だけが許されるわけではないと思うのが、常識的な見方だろう。
▼ 対抗馬は、そんな心配を争点にするという。予算をスムーズに獲得できるようにするため、大間原発建設には反対するが、国とのコミュニケーションが取れない事態は避けるべきだと述べ、建設差し止めの手法が争点になりそうだと新聞は報道する。
▼ だが、訴訟を取り下げるというなら、市民は承服しないだろう。実際、国からのどんな圧力が掛かっているか、いないかは市民は知らない。それらの情報も公開し選挙に突入して欲しいものだ。対抗馬の候補は、当選すると訴訟はとりさげて、政府と良好な関係を築きたいという。それでは市民が、納得はしまい。
▼ここは、公開討論会を傍聴し、両者の腹の中を探ってみたいと思う。横綱白鵬ばかりが優勝すれば、相撲には興味がなくなる。相手を攻撃するような討論会ではなく、新幹線到着後の、質の高い誇りある歴史と文化のまちづくりを語って欲しいものだ。