▼昭和23年生まれの私は、日本酒が大好きだ。大正11年生まれの父は、夕飯が終わる時には酔っ払って、母に叱られていた。
▼食卓に着く前に‟流し(台所)”で、コップ酒2~3杯を立ち飲みしていたからだ。父の遺伝子を受け継ぎ、私も日本酒が大好きだ。
むしろ父より酒は強いと思っている。
▼父は退職後すぐに亡くなった。気が付いたがたことがある。父が酔う理由は、戦前の教育を受け戦争に参加し生還した。戦後は民主主義教育で、教師として生きたからだと。
▼小学時代に私は「大人になっても絶対酒は飲まない」と母に言っていたそうだ。それは母から直接聞いたことはない。私の妻が母から何度も聞かされていたという。
▼私の20代の頃は、お銚子一本が50円だったのを記憶している。大衆居酒屋に行って500円で酒がたらふく飲めた。
▼肴は「冷や奴」一皿で、後は酒だけ飲んでいた。「大衆」という庶民の味方の言葉も、近頃あまり聞くことがなくなった。
▼さらに酒飲みにあれだけ愛されていた一升瓶も、消えようとしているという。瓶が大きく重いので、紙の箱になって久しいが、若者の日本酒離れが原因で、ワインのような4合瓶が主流となるという新聞記事だ。
▼北海道に住んでいるが、函館市周辺の我が地域は今年は雪が少ない。年齢も重ねると雪が少ない方が、身体に負担がかからないのでうれしい。
▼だが酒好きの私は、今年の大雪が数十年後に、おいしい酒になると思えば、雪を公害のように扱うメディアに、あまりいい感情は持てない。
▼今は故郷に戻り住んでいる。周囲が漁業なので、お刺身がうまい。日本酒もいいが白ワインも大好きになった。アルバイトでウニ漁を手伝っていた時は、生ウニが手に入った。
▼生ウニには何といっても日本酒だ。4合瓶なら絶対足りない。やはりウニは一升瓶に限る。半分飲んでもあと5合は残っているからだ。
▼4合瓶ならそこで「END」だ。まだウニが残っているのにだ。これって酒飲みには生殺しだ。やはりウニには一升瓶だ。
▼これからだってウニを食するチャンスがある。絶対ある。その時4合瓶2本だなんて、あまり粋な飲み方ではない。
▼日本酒は飲み方が粋でなければだめだと、思っている。つまり「ぐいのみ」も、手作りの気に入ったので飲むのが、絶対うまいからだ。
▼日本酒もこの頃は、料理の内容で「ワイングラス」で飲む方がうまいのもある。お寿司も時にはワインがいい。
▼ラベルも粋なデザインの日本酒が多くなれば、4合瓶の日本酒もやがて身体に馴染んでくるのではないかと思う。
▼でも酒飲みにとって、日本酒もワインも二合では足りない、絶対足りない。どうしてももう一杯となる。だが4合瓶だと、あとに一合が残れば気になって眠るにも眠れない。
▼毎夜4合瓶を空にすれば妻の目が光る。日本酒の4合瓶は、日本酒好きからしてみれば罪な量の瓶だ。
▼4合瓶を飲み干したいなら、ワイングラスで飲もう。もし生ウニが食卓に上ったら、日本酒の4合瓶を二本購入し、グラスで飲もう。
▼一本開けたら、もう一本を妻の目を盗んで、テーブルに上げよう。これなら8合まで飲めるからだ。
▼だが二本目は、半分ぐらい残しておく。そうすると妻から文句も出ないはずだ。とあれやこれやの作戦を想定しながら、一升瓶が消えてしまうという報道に、寂しさを覚えている。
▼今年は戦後80年だ。もし私が特攻隊員だったら、4合瓶で酒を注いでもらっては心残りだ。一升瓶でなみなみとコップについでほしい。
▼そして国家と家族と友に別れを告げたい。
『なみなみとついでほしい。サヨナラだけが人生だ』なんて、言葉を残し大空の彼方へ。
>「一升瓶ブルース」が冴えています。... への返信
「一升瓶ブルース」。粋な題名です。ギターでも弾けたら曲にしたいものです。「山谷ブルース」に次ぐ「男の酒シリーズ」です。