▼20代の学生が国の将来をかけて学ぶ大学。それに対し一人の大統領トランプ(70代)が、自由な研究を阻止するという米国。
▼この対比こそが全世界の民主主義の危機だ。危機というより独裁政治への、新たな幕開けを予感させる。
▼今まで世界を席巻してきた米国が、独裁政治へと向かおうとしているというのは、民主主義全体に大きな亀裂が生じたということだ。
▼世界は習近平とプーチンの独裁政治が横行している。今までの民主主義では立ち行かなくなって来ているということか。
▼民主主義は結論まで、細やかな手続きが必要だ。この手続きが民主主義の民主主義たる所以でもある。だが独裁政治はそのプロセスを取らなくてもいい。即断即決で決められる。
▼それがスピードを有するAI社会を前にし、民主主義の機能がもはや遅れているということを示唆しているのだろうか。
▼戦後に民主主義を導入された日本社会。民主主義は決定を遅らせた。民主主義とは戦争が起こりにくいシステムだ。
▼世に独裁主義者たちが跋扈すれば、民主主義は決定の遅さゆえに戸惑いを見せる。民主主義をとれば、独裁者に判断の面で後れを取る。
▼民主主義は熟慮が大事だが、独裁主義は熟慮を省き、個人の決定が即断即決につながる。戦争を国際紛争の解決とすれば、民主主義側に有利に働かない仕組みだ。
▼ウクライナとロシアを見れば一目瞭然だ。独裁政治は有無を言わせぬ動きを取る。民主主義側は戦争への躊躇が見られる。その差が今回のウクライナ侵攻だ。
▼戦争はどうしても避けなければならない。大量虐殺につながるからだ。そこをハーバード大学は、トランプ流の独裁政治的思考に反発をする。
▼民主主義を守るということについてはハーバード大の方が正当だ。それに対し私学の補助金をストップするというのは、独裁政治の最たるものだ。
▼大学は民主主義の権威だ。大統領とは言え一個人の主張で、その権威を踏みにじってはならない。大学側も徹底抗戦をも辞さない。
▼日本社会は「戦争ができる国」へと変わりつつある。戦前科学者が戦争に加担したことに対し、深く反省して日本学術会議が設けられた。
▼政府の意向に反する言動が出るのは当たり前だ。だが政府批判を退けるため、6人の候補を任命拒否した。そして組織を法人化する意向を政府は示している。
▼それに学術会議は従う傾向にあるように見える。ハーバード大の矜持を見せてほしい。日本民主主義を守るのは頭脳明晰な科学者たちが、その任を意識してもらわなければならないからだ。
▼政府の戦争への道を歩むことに、容易に傾いてはならない。今こそハーバード大と一緒に、政府の勝手な意向を阻止してほしいものだ。
▼学術会議が政府の手に染まれば、またぞろ戦争への色が濃くなる。ここはハーバード大との連携で、戦争回避の方向に道筋をつけてほしいものだ。
▼我が国は地政学上最も危険な地域にある。極東の島国だ。島国は戦場になりやすいということを、再度確認してほしい。原爆投下も他国には影響ががないということが実証されているからだ。
▼米国一片通りの政策は、もはやトランプの出現で新たな方向を探る時代になっているというのを、理解しなければならない。
▼「関税」を安くしてくれというような、そんな安易なディールではないと思うのだが。もっと主権国家としての矜持を持ってほしいものだ。