goo blog サービス終了のお知らせ 

函館市とどほっけ村

法華宗の日持上人にまつわる伝説のムラ・椴法華。
目の前の太平洋からのメッセージです。

厳冬の海で

2008年12月27日 12時27分21秒 | えいこう語る
北風が吹いて、ルート278の海岸道路は、雪が吹き飛び干しからびている。
路肩には除雪された雪の塊。薄曇りの空から太陽が鈍く輝く。
岬の内側の海面は波が穏やかだ。風を避けるカモメの大群が羽を休めている。
双眼鏡をのぞくと、岬の先端あたりから、幾重にも濃い群青色の波が、細やかにうごめいているのが見える。
その場所には風が走っている。
その沖合いには「ウサギが跳ねる」といわれる、大きな白波が立っている。
その波間を小型の貨物船が、沈んだり浮かび上がったりし、目的地を目指す。
大型フェリーは赤字を満載しながらも、威風堂々と突き進む。
12月27日。今年の漁はすべて終わった。
新しい年。我がニッポン丸の大漁を祈願したい。




見逃せない

2008年12月25日 12時57分58秒 | えいこう語る
税収が減ると、タバコの値上げが話題になる。
肺ガンになるかも知らないと、わかっていても吸うのだから、値上げで多少の禁煙者が増えても、十分税収は見込めるという判断だ。
喫煙者は「どうせお前たちは止められないだろう」と、ナメられているのだ。
こんなに国民を愚弄するのであれば、生活防衛策で北海道出張の折には、野生の大麻を刈り取ってこよう、などと思う人も出てこよう。それにしても北海道の高校生の中に大麻汚染が蔓延しているのは、北海道の危機である。
原発の定期検査は13カ月ごとにおこなう。来年からの新制度では、電力会社が安全だと申し出、経産省原子力安全保安院が認めれば、定検を18カ月まで延長できるという。
それには当然地元自治体の、承認を得るということになる。認めると、1億円が自治体に交付されるという。さらに5年後には、最長24カ月まで延長できるという。
「金さえバラまけば、財政力の無い自治体など屁のようなもの」と、ナメきっているのだ。
国自体も金もないのに、定額給付金を2兆円もばら撒く。今国民の生活は切羽詰っている。のどから手を出してもお金はほしい。後に重い罪が背負わされるのを承知でも、いただくものはいただきたい。
そこを見越して、3年後には消費税増税を宣言する。
これって、ヤクザの「シャブづけ」と、同じ手口ではないだろうか。

「政治家は、すべての人々をしばらくの間愚弄するか、少数の人々をいつまでも愚弄することができるが、すべての人々をいつまでも愚弄することはできない」
新しい年は、リンカーンのこの言葉に、未曾ゆうの望みをかけてみたい?!


「漁師見習12」 タコの舞

2008年12月24日 15時30分00秒 | えいこう語る
12月24日。波、風共にベストコンディションだ。
先日購入した、ブルーのゴム作業着を着る。鏡に映る自分を見て、なかなか立派な漁師だと、自画自賛する。
まずは戦いを前にし、自分を奮い立たせることが肝要だ。
港に向かう漁師のトラックが次々走るが、我が船頭のトラックは遅い。
「なにやってんだ。遅れをとってどうする」と、見習いのくせに、鼻息が荒い。
今日の戦いは1時間30分だ。
漁場に着き、まもなく戦闘開始の合図が鳴り響く。一斉に海中に網を入れる。
出だし、私の舟さばきは好調だ。ウニが次々と網に入っていく。船頭さんも気持ちよさそうに採取しているのが、私にもよく分かる。
タコだ!・・・タコが舞っている。
漁師見習の私を歓迎するかのように、優雅な舞を披露してくれる。
後半少々ミスもしたが、前回より上達しているのが実感できた。
漁の中止の合図と共に、150隻の磯舟が一斉にスピードを上げ港に向け疾走する。ほほにぶつかる北風も爽快だ。人間が一回り大きくなったような気がする。帰りの船の中も自画自賛だ。
海中舞台のタコの舞。
海の中も、なかなか粋な世界があるものだと感動した。


「漁師見習11」 心はでっかく

2008年12月23日 12時45分45秒 | えいこう語る
12月22日、昨夜から降った雪が、25cmほど積った。
一面の銀世界といえば、誰もが素晴らしいと思うだろうが、北国に暮らす者にとっては、雪かきという朝の重労働が待っている。
漁組の鉄塔を見ると、ウニ漁中止の回転灯が元気よく回っている。こんな時の漁師見習は、なぜかほっとした気持ちになる。
隣の老夫婦は、年齢をたせば162歳だ。私の町内会では最高齢だ。この年齢になると、どちらかが欠けているからだ。来年は164歳になる。夫婦とも健在だと1年で2つ歳を重ねることになる。当たり前だけれど、どんどん歳を重ねていくことになる。
というような、つまらないことを考えながら、二人の起床前に隣の分も雪かきを済ませた。
外に出て雪がかいてあるのを見た、二人のほっとした顔がなかなかいい。
1時間半ほどの雪かきが終わり、近所の漁師の奥さんと立ち話をした。
今年は全般的に不漁だったと言う。
「なんたって、尾っぽがついているものだから、どごさ行くかわかんねえから」と言う。
「テレビでマグロ漁の一本釣りを見たけど、釣れなくてもいたわり合う漁師の夫婦愛には感動するね」と言うと
「私の知り合いの鮪漁師は、一匹も釣れなければ、朝から毎日ものすごい夫婦喧嘩だよ」と言う。
巨大鮪との壮絶な戦いの裏には、壮絶な陸での戦いもあるらしい。
旦那が出てきた。
「ウニ漁は27日までで、正月は10日まで休業だ」
「年内はこの空模様じゃ、出漁はネエベ」と言う、情報も得た。
「そんなら、うちの町内会の漁師集めて、鮪釣にでも出かけるかい」と、私が冗談を飛ばすと「ガックン」と、身体が崩れるアクションがあった。
漁師見習は、ベテラン漁師から、鮪のネタで一本とった気分になった。


「漁師見習10」 小雨降る浜に

2008年12月21日 07時30分12秒 | えいこう語る
目覚まし時計のセットを忘れたのか、目覚めると7時に近かった。
あわてて外に出ると、小雨が降っている。
ウニ漁中止の回転灯が回っていない。・・「遅刻だ!」
急いで作業着に着て、車で港に向かう。
誰もいない。
風もなく波がなくても、雨がわずかでも降っていれば、ウニ漁は中止なのかと思い、家に戻ってきた。
午前11時から、近くのお寺で告別式がある。
享年48歳、働き盛りの漁師である。早朝、寝床の中での急性心不全だと言う。
昨年この男性が私の家に訪れた。
購入した磯舟に、舟名を書いてほしいとの依頼である。舟名は長女の名だという。
最近漁業仲間でグループをつくり、釣り上げた鮮魚の管理方法を工夫し、他の魚より高値で出荷しているとの話をしていた。
「既存の考えにこだわらず、アイディアを出し合い、付加価値を高めることが必要だ」と、ありきたりなことを話したように記憶している。
知り合いの漁業関係者から、こんな話を聞いた。
「漁師仲間の葬儀の時は、漁を中止するのが昔からの決まりなので、中止の回転灯も回さなかった」と言うのである。
私はこの漁村に生まれ、しばらくこの土地を離れたことがあるが、それでも半世紀近くこの村で暮らした。漁民の掟を知らなかったことに、ある種の疎外感を覚える。
お寺は坂の上にある。傘を差し坂道を下ると海が見えてきた。
若く元気な仲間を失った小雨降る浜は、悲しみにくれているようで、とてもおだやかだった。