▼「安保」と言えば「日米軍事同盟」だ。戦後「戦争放棄」を謳った日本国憲法で、我が国は占領国米国の軍事力に国防を任せてきた。
▼それが戦後80年を目前とした、現在の我が国の『対米従属』の最大要因でもある。今のままでの「日米安保」では、完全に米国に主導権を握られている。
▼そこまでは国民は理解している。だが米国大統領にトランプが再選された。国防など普段考えない国民でも、トランプに防衛の主導権を握られるのは勘弁願いたい。
▼我が国には自衛隊があるが、実戦部隊ではない。【憲法第9条】で「戦争放棄」されているからだ。というが自衛隊は世界屈指の軍隊だ。
▼こんなあいまいな状態では、他の国が侵略した時、国民の生命・身体・財産を守ることができない。
▼しかし自衛隊の現在までの活動を十分理解している国民でも、自衛隊の機能をさらに高めるため「軍隊」に改名しようとまでは思わない。
▼先の戦争では国家消滅寸前まで、戦いをやめなかったからだ。物議をかもすかもしれないが、米国が主張する「原子爆弾投下」で戦争が終結したというのも、あながち否定はできないような気がする。
▼なので「戦争など未来永劫放棄する」ということが、日本人としての矜持であると思う。ここを忘れてしまっては、戦争で犠牲になった多くの人々に申し訳が立たないからだ。
▼トランプは現在の世界秩序を大きく変える人物に見える。常識という言葉は彼の頭にはないからだ。すでに『関税』という、新たな武器で世界を攻撃しようとしている。
▼関税と言えば、我が国では経産省の所管だ。なので最近は経済問題が外交の主要目的と化している。『経済安保』と呼ばれる所以である。
▼その経産省だ。歴史的にみると満州侵攻時の‟関東軍”に似ているような気がしてきたからだ。
▼今後の世界経済の主導権を握る『半導体』に全精力を結集し、世界制覇を試みようとしている意気込みが感じられる。
▼「満州開拓」に匹敵するのが『新・北海道開拓』だ。道民には何の前触れもなく「ラピダス=半導体工場」が進出してきた。その戦略本部は「経産省」だ。
▼関連企業に対し、巨額な資金提出を持ちかけている。もちろん国としても率先して補助金を追加し、誘い水を浴びせている。
▼半導体とAIを制する国が世界を制するというのが、今後の世界の大勢だろう。だがこの未知の領域は「成功するかどうか」の確信はないと、関係者は言う。
▼だが「経産省=関東軍」は、国運をかけて前進する。とにかくがむしゃらにだ。この工場は電力が相当必要となる。となれば北海道泊原発の再稼働が急務だ。
▼原発の持ち主は北海道電力だ。泊は活断層の疑いもある。それにもまして「点検報告」の改竄なども指摘されている。
▼国民が信頼しているのは「原子力規制委員会」だ。この委員会は環境省の外局だ。だが委員長の中山伸介は以前日立製造所から、1600万円の研究費を受け取っていた。
▼委員長含め5人で構成されているが、これを手助けするのが「原子力規制庁」だ。そして規制庁のトップ(長官・次長・原子力規制技官)が経産省出身だと、2日付の北海道新聞に記載されている。
▼つまり半導体も原発も、経産省の手の中で動いているということだ。さらに北海道は核のゴミ地下埋設処分場問題が進行している。
▼このゴミ処理を担当するのがNUMO(原子力発電環境整備機構)だ。以前函館市内でNUMOによる説明会があり出席したことがある。
▼機構関係者が入った私のテーブル、隣には経産省の役人だ。その役人に「どうせ経産省の言いなりになるんでしょう」と尋ねると、その役人はくすっと笑った。
▼「日米安保」さらに「経済安保」。我が国を取り巻く軍事や経済の環境は、トランプ次期大統領の再選で、大きな変革を見せるような気がする。
▼このラピダス進出に対し、国会での野党の質問が聞こえてこないような気がする。野党も諸手を挙げて賛成なのだろうか。
▼「年収の壁問題」も急務だが、ラピダスへの不安を道民が抱いていることにも注視してほしいものだ。
▼「日米安保」の防衛省ばかりではなく「経済安保」の経産省の台頭も気になる、最近の我が国だ。