
昭和37年にはじまり、発行部数実に536号で平成24年に終了した、はこだてタウン誌「街」の総集編が出版された。
私は昭和39年に函館市内の高校に入学しているので、喫茶店や食堂などで「街」を手に取った記憶がある。
その頃は飲食店の広告に目がいき、文章をしっかり読んだという思いはない。
しかし、市内のいたるところに「街」は市民の身近にあった。
「銀座百点」に倣い、当初は「函館百点」にしたのも、この街を愛する市民の心意気をそこに感じる。
タウン誌の魅力は、その街をこよなく愛してきた人々の、息づかいと匂いを感じれるところだろう。
発刊当初は明治を語る人たち現存していて、開港都市函館の繁栄と衰退の歴史がリアルに詰まっているタウン誌である。
このタウン誌の名物編集長は、函館生まれで作家の木下順一氏だ。
歯に衣を着せぬ人柄は、私もある会議の席上その神髄に触れたことがある。
氏の個性には多くのフアンがいた。「街」の編集にも、氏の個性が色濃くにじみ出ていたようだ。
総集編に携わったTさんが「あとがき」にこう記している。
「まちづくり」という言葉があるが、主役はオカミではなく市民であると。
後輩が書いた「あとがき」は、木下編集長も、自分の言い残したことを見事に代弁してくれたことに、微笑んでいるような気がする。
「街」は函館市民の手により続けられたから、街の匂いが蘇ってくるタウン誌なのだ。
函館の歴史を探求する参考書として「総集編」は、ぜひ書棚に置いていただきたい一冊である。