鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1521~ホッパー

2018-05-16 12:41:01 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、ホッパーです。

エドワード・ホッパーの画集を鑑賞することにしました。
「美の巨人」で紹介された「ナイトホークス」。
MoMA展図録で観た「ニューヨークの映画館」「ガソリンスタンド」。
どれも登場する人物の心のつぶやきが聞こえてきそうな、雰囲気たっぷりの作品でした。
もっと多くの作品を鑑賞したいと思い、選んだのはTaschenの画集。
コストパフォーマンスの高い出版社でこれまでも重宝していました。
今回は日本語版/英語版、ハードカバー/ペーパーバックという選択肢の中から、一番安い英語版ペーパーバックを選びました。

海外からの発送のためしばらく待ち、ようやく届きました。
思っていたより薄い画集でしたが、中身は充実していました。
洋書ですから文章は読めないので、ひたすら作品だけを最後まで鑑賞しました。
そしてホッパーが「想像していた画家」ではないことを知りました。
これまで観た3つの作品に共通して描かれていた都会の孤独と哀愁。
ホッパーの全作品の中ではその系統の作品はごく一部なのですね。
わりと殺風景な景色の中にぽつんと建っている住宅を描いた作品の実に多いこと。
田舎町の孤独な家を描いたと解釈すると、孤独を描くというテーマは共通しているといえなくもないですが・・・。
建物の孤独には何の興味もありませんから、人物が登場する作品以外はすっ飛ばして鑑賞しました。
全体を通して気に入った作品は次の通り。

・Soir Bleu(1914)
 題名の意味は青い夜。
 夜のカフェを舞台に3卓のテーブルの男女が描かれている。
 右のテーブルの男女は明らかに中央のテーブルの男に注目している。
 その男はピエロの化粧と扮装のまま、くわえ煙草で他の2人と話をしている。
 その脇には男を見下すように立つ女。
 これからどんなドラマが展開するのだろう?
 代表作「ナイトホークス」とは違った意味で興味深い作品。
・Sunday(1926)
 空っぽのショーウインドウの前に腰かける男一人。
 日曜とはいえ、空テナントの前に座り込むとは、何かドラマがありそう。
・Automat(1927)
 題名の意味は自動販売機。
 自動販売機のコーヒーを近くの席で飲む女性。
 コートと帽子の姿は、用事を済ませた後にようやく一息ついた姿か?
 それとも出発前に思案しているのか?
 いろいろ想像できて楽しい。
・Gas(1940)
 黄昏時、ガソリンスタンドの給油機を覗き込む男。
 来店客が途絶え、そろそろ店じまいの仕度をしようと考えているのか?
 事務所から漏れる灯りが、風景のさびしさを増長している。
・NewYork Movie(1939)
 上映中の廊下でひとり物思いにふける女性スタッフ。
 女性の周り以外の光を極端に落とした大胆さが作品のドラマ性を高めている。
・Nighthawks(1942)
 意味は夜更かしする人々。
 背を向けて座る男は、全く表情が見えない。
 背中で語ることができる高倉健のような男になりたい、と思わせる作品。
・High Noon(1949)
 平原に建つ小作りな民家。
 その玄関にたたずむ女性。
 高い日差しにより影はわずかしかできない。
 過度なまでに明るく照らされた彼女の表情に明るさはない。
 その心中やいかに?
・Cape Cod Morning(1950)
 ケープコッド(コッド岬)の朝。
 森の脇にある民家。
 出窓の中には、前かがみの姿勢で真っ直ぐ外の景色をながめる女性。
 題名から、視線の先に海辺の景色があることがわかる。
・Intermission(1963)
 題名の意味は休憩。
 劇場の客席にひとり座る女性。
 舞台の上演が終わり、ようやく一息つく女興行主は何を思うのか。
 舞台の不成功に心を痛めているのか?
 良く見ると口角が上がっている。
 どうやら舞台は成功し、心地よい疲れをひとり癒しているのだろう。

無表情な登場人物にドラマを感じさせるホッパーの腕前に感服しました。
解説文が英語のため、作品に込められたドラマを自力で読み取ろうとしました。
自分の解釈が例え的外れであったとしても、絵を読み解く行為自体が楽しい体験だったことは確か。
もし日本語が添えられていたら、そぐにその解説に流されてしまったことでしょう。

今回は「絵からドラマを読み取る」良い訓練になりました。

 

コメント
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