鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその2051~変形菌

2022-03-02 12:40:12 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、変形菌です。

変形菌については「たくさんのふしぎ」シリーズで2冊読んだだけですが、変形菌の生物としての不思議さに興味が尽きません。
近所の防風林に棲んでいるのでその内に採ってきて自宅で観察してもいいかななんて考えていました。
そんな変形菌の面白そうな写真文集を見つけました。
増井真那著「変形菌ミクソヴァース」。
昨年12月に発行されたものです。

著者は5歳で変形菌の面白さに気付き、若干20歳ながら15年の研究実績があるそうです。
いろいろな変形菌のアップの写真が左ページを飾り、その様子を伝える簡潔なコメントが右ページにあります。
本書は変形菌の生活サイクルについて基本的な説明が無いまま、一気に本文に入っていきます。

ちなみに変形菌の生活サイクルはおよそ次の通りです。
胞子が発芽 ⇒ アメーバ状細胞 ⇒ 2体が接合して接合体 ⇒ 変形体になり成長 ⇒ 子実体になり数千の胞子を飛ばす

あるページに子実体になりたてでまだ柔らかいときに雨に当たっている写真があります。
子実体自体に透明感があってとても美しい姿です。
でもこのタイミングで雨に当たると身がもたないというようなコメントが添えられています。
どうやら脱皮したての昆虫が弱いように、変形菌もこのタイミングが弱点のようです。
写真がタイミング悪く雨に当たり苦しむ変形菌の姿と知り、悲壮な状況に見えるようになりました。

また「緊急避難態勢!」という見出しのページには乾燥してバリバリになった「菌核」という状態の写真が掲載されていました。
変形菌は乾燥して固まった休眠状態で何年も耐えることができるのだそうです。

一番興味深かったのは自己と非自己の区別についてです。
同種の変形菌同士が出会うと長い時間をかけて互いを調べ、融合して一体になったり、融合せずに離反したりするそうです。
著者は幼いころからこの区別をどうつけるのかに興味があり研究を進めているそうです。
大きな森からたくさんの変形菌を採取してきて実験をしたところ、いくつかのグループに分かれて融合することが分かったそうです。
面白そうな研究です。
著者はまだ20歳。
彼の研究がこれからどんな進展をみせるか、とても楽しみです。

最後に自分への記録として出版社の内容紹介を引用します。
=====
変形菌とはなにものか? 
変形菌はどんな生活をしているのか? 
幼いとき、この謎の生きものに魅せられてしまった著者が、変形菌目線ともいうべき視点からその生態をいきいきと語ります。
20歳の変形菌研究者が案内するのは森、道、雪の下などで人知れず営まれている、小さな生きもののダイナミックなライフ・イベント。
イオウモジホコリ(子実体)、イタモジホコリ(変形体)、ジクホコリ(子実体)などはもちろん、著者の研究テーマである「変形菌の自他認識」の決定的な瞬間まで、まさに知識の拡張体験を愉しめる一冊です。
読みやすい文章と、著者撮影による圧倒的に美しい画像で、私たちの身近な世界に「新しい視点」を見せてくれます。
霊長類・人類学者 山極壽一さん大推薦!

【著者略歴】増井真那(ますい・まな)
2001年東京生まれ。
5歳で変形菌に興味を持ち、6歳から野生の変形菌の飼育を、7歳から研究を始める。
日本学生科学賞 内閣総理大臣賞など多数の受賞歴をもつ。
17歳で国際学術誌に論文が初掲載された。
フィールドワークで得た経験と、「変形菌の自他認識」をテーマとした研究知識をもとに、変形菌の魅力を世に広めるべく日々精力的に活動中。
講演会やワークショップ、メディア出演など幅広く活躍する。
慶應義塾大学 先端生命科学研究所所属。
公益財団法人 孫正義育英財団 正財団生。
日本変形菌研究会、日本生態学会、日本進化学会、日本菌学会会員。
=====



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする